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占いガール  作者:
血液型占い

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18/41

過去の亡霊

紀伊side


今日も千尋の周りに女の子達が集まってる。

恋する女の子は占いが、よほど好きなのね。

千尋の今日の占いは血液型占いだって。

この子、どんどん占いのレパートリー増えてくわね。


「私、A型なの」

と言うのは去年のミス青学。

こんな綺麗な子でも、占いに頼りたくなるなんて。

恋って不思議。


「分かりました」

千尋は手元の資料を見ながら、占いを進めていく。

机に座ってる千尋とそれを覗き込むミス青学を見ていて思う。

千尋が変な変装を解いて、普段の美少女に戻れば、今の絵図らはかなり福眼なんだけどなぁと。

美女対美少女に、周囲だって息を飲むに決まってる。

勿体ないな。

千尋があの瓶底眼鏡を止めて、ひっつめ髪を解く日が早く来てほしい。

カテキョの時は本来の千尋に戻ることが出来るんだから、きっと普段も大丈夫なはずなのにな。


千尋をこんな風にした大翔に怒りが沸いてくる。

浮気して裏切って、その後だってあの睦美とか言う女と付き合っちゃってさ。

地元の友達からの情報だと、中学の卒業後に別れたらしいけど。

ふらふらと誘われるままに女を遊んでるらしいし。

千尋が未だに苦しんでるのに、あいつだけが青春を謳歌してるとか更に腹が立つのよね。 

あ~思い出したらイライラしてきた。


それに最近気になる話もあるし。

なんでも、大翔が千尋の居場所を知りたがってるとかで、中学の同級生を当たってるらしい。

何を今さら・・・。

絶対に会わせてなんてやらないんだから。

もう、これ以上、千尋を傷つけさせやしない。

私達の友達には居場所を教えないように箝口令は引いてるけど。

油断は禁物ね。


「今日のラッキーカラーのピンクを身につけて、意中の相手に積極的に告白したらいいかもしれません」

「ありがとう、そうしてみるわ」

ミス青学が綺麗に微笑んで去っていく。

私が考え事をしてる間に、占いは終わってたみたいね。


「千尋、帰ろう」

「うん」

頷いた千尋は広げた資料を鞄の中に詰めると立ち上がる。


「帰りに、クレープ屋さんに寄ろうよ」

一緒に帰れる日は珍しいから、たまに寄り道してみたい。


「うん、そうしよ」

フフフと笑った千尋と校内を進む。

今日はあの二人に会いませんようにと願いながら。

最近、やたらと絡んでくるのよね。

渋沢先輩と北本先輩。

私も千尋もうまく交わしてるから、今のところ問題は起きてないけど。

触らぬ神に祟りなしだと思うのよね。



無事に大学を出て、目的のクレープ屋を目指す。


「紀伊ちゃんとクレープ屋さんに行くの久しぶりだね」

嬉しそうに口元を緩める千尋。


「本当、入学当初はよく行ってたわよね」

「うん」

お互いにアルバイト生活に入ってからは、なかなか都合が合わない。

大学が休みの日に遊びに行くことはあるけどさ。

そう言えば、聞いとかなきゃいけないことあったな。

千尋は今年も帰らないのかなぁ。

大翔に会うのが嫌で、千尋は実家にあんまり帰らないんだよね。


「今年のお盆休みはどうする?」

「・・・あ~そうだね・・・どうしようかな」

困った顔で目を伏せる千尋。

やっぱり、帰りたくないか。


「地元の友達と綿密に計画を練って、あいつと接触しないようにするから、一緒に帰らない?」

千尋のおじさんやおばさんもきっと会いたがってるし。

一年に一回でもいいから、千尋を連れて帰ってあげたい。

千尋は地元に帰っても、大翔と合わないように家から出ない。

この子は何にも悪くないのに、そんな風にこそこそしないといけないなんて・・・。

やっぱり納得いかない。

大翔の方がこそこそするべきよ。


「・・・う、うん、そうした方がいいのかな」

おばさん達から顔が見たいって、きっと連絡が来てるよね。

千尋も、本当は帰りたいはずだよ。

この子に、こんなにも影を落としてる過去をどうしたら、振り払えるんだろう。


「まだ、時間があるから、ゆっくり考えたらいいよ」

千尋に負担をかけるつもりはない。


「うん。いつもありがとうね、紀伊ちゃん」

力なく笑った千尋を、救ってくれる存在が現れて欲しいと願わずにいられなかった。



「久しぶりに美味しいね」

クレープを頬張る千尋に、笑顔が戻る。

私達は、クレープと飲み物を購入して、店先のガーデンテラスに陣取った。

同じ様にクレープを食べるカップルやグループが幾つかある。


「本当、美味しい」

「あんまり食べ過ぎたら、晩御飯食べられなくなるかもね」

笑う千尋に、

「別腹だもの」

と大きめのクレープを頬張る。

美味しい物は楽しく食べなきゃね。


「ところで、ご褒美にどこに行くのか決まったの?」

北本先輩の妹にせがまれたらしい。


「う~ん、小学生の行きたい所とか良くわかんないんだよね。だから、街をぶらぶらしてみようかと」

「まぁ、気になったものがあったら、途中でお店に立ち寄ったりしたら楽しいかもね」

「だよね? 涼香ちゃんを楽しませてあげたいし」

普段からなついてくる涼香ちゃんが、妹みたいで可愛いって言ってるもんね。

あの北本先輩からは想像も出来ないぐらい素直でいい子みたいだし。

それに、千尋と北本先輩を会わせないように気を付けてくれてる所も好感が持てるのよね。


「千尋と一緒ってだけで、きっと喜ぶわよ」

「フフフ、だったら良いけど」

絶対に喜ぶに決まってるわよ。

美少女で、優しい千尋とデート出来るんだもの。

私もこうやって、千尋と二人でお茶出来るのは楽しい。

自然と顔だって、緩んじゃうわ。



「二人して美味しそうなもの食べてるね」

耳障りの悪い声に、

「・・・チッと」

舌打ちをして視線を移動させる。

そこにいたのは案の定、渋沢先輩と北本先輩。

彼らの登場に周囲の席の女の子達が騒がしくなる。

キャーッと上がる黄色い悲鳴に、さっきまでの機嫌の良さが急降下していく。

前の席に座る千尋を見たら、凄く嫌そうな顔になってた。


うん、そうよね。

せっかくの楽しい時間が台無しだ。

さっさと追い返さなきゃ、と思ったのに、北本先輩は何を思ったのか千尋の隣の席に座り出した。


「ちょ、ちょっとなに座ってるんですか!」

声が低くなったのは仕方ない。

千尋だって、許可もなく隣に座った北本先輩に目を見開いてる。


「良いじゃん、一緒にお茶しようぜ」

「勝手に座らないでください、渋沢先輩」

まぁまぁと言いながら、隣に座った渋沢先輩を睨んだ。


「お茶しようって、何も持ってないじゃないですか」

この店はレジでお金を払って商品を受けとるスタイル。

テーブルについたからと言って、何か運ばれてくるわけでもない。


「お、忘れてた」

白々しくそう言った渋沢先輩に合わせるように、

「そうだな」

と頷いた北本先輩。



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