魑魅魍魎4
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あの後、私達は宿を出て町を歩いていた。
活気溢れるいい町。
自然が溢れて考えをまとめることが出来そうだ。
「ところで辭。」
「はい。」
「今回の仕事はこの町なのか?」
「はい。そうですよ。
正確には、この町の外れにある祠ですね。
何でもそこに祀られている神様が悪さをしているとのことなのです。」
「祠ねぇ…」
頭の上に乗っているお稲荷さんが不思議そうに首を擡げた。
先程から町の人から妙な視線を感じる。
振り向けばいつもそこには男性がいる。
そして、私と目が合うと顔を赤くして去っていくのだ。
どうして顔を赤くしているのか?
自分自身のことには疎い辭。
こんな可愛い美人さんがいたら、男性なら放ってはおかない。
だけど、町の男性が辭を見るだけに納めているのは彼女の頭の上に乗っている白にあった。
彼女に近づこうとすると、噛みつきそうな勢いで威嚇するからだ。
お稲荷さんがいるお陰で変な人達に声を掛けられなくて済む。
今回の任は気をつけないといけない。
どんな妖なのだろうか。それとも、霊だろうか。
実はその例の祠に祀られているのは町の神様。
どんな悪さをしているのかは分からないが、山の実が実らないとかが起こっているとのこと。
モグモグとお茶屋でお団子を食べながら、そんなことを考える。
神様は穏和な方々が多く、滅多に怒らないと聞いたことがあるが…
神様自身がそんなことをするとは考え難い。その祠に何かあったとしか考えられないとしたら…
夜にでも行って祠を調べる必要がある。
「お稲荷さん。」
「んー?」
「私、今晩その祠に行ってみようと思うのですが。」
「そうか。なら俺もついて行く。」
「ありがとうございます。」
再び前を向いてお茶を飲み、お団子を食べ始める辭。
そんな彼女の横顔を白は眺めた。
辭はもっと自分の魅力に気づくべきだ。
彼女と同じようにお団子を頬張り、穏やかな時間に身を任せた。
「お帰りなさいませ。」
宿へと戻った辭とお稲荷さんは、先にお風呂に入ることにした。
もちろんお稲荷さんは男湯だ。
だが、女将さんの前でお稲荷さんを堂々と男湯へと向かわせる訳にはいかない。
普通にペットだと思われているからだ。
それなのに一緒にお風呂に入らず、男湯に入らせたらどうなることやら。
幸いにも貸し切り状態だったので、女湯の仕切りの隙間から男湯へと入ってもらうことしたのだ。
「そちらは大丈夫ですか?お稲荷さん。」
「あぁ、大丈夫だ。」
その声を聞き、ホッと安心した私は温泉に入ることにした。




