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妖御伽譚 上  作者: 鮎弓千景
古き屋敷にてー蠱術家の輪廻ー
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蠱術の憑き物20

一気に私へと目掛けて飛び掛かってきた。

清め札が引き裂かれたことに驚いた私は、後一歩の所でワンテンポ遅く反応する。


反応した時には、狗神がすぐ眼前まで迫っていた。

体が思うように動かず、脳裏を死という言葉が埋め尽くす。


「辭に手を出すな!」


そんな叫びにも似た言葉と共に辭の眼前に白のシッポが現れる。

それはいつも辭が見ているもので…

全てがスローモーションに見えた。


私の眼前へと飛び出した白が宙に舞った。

目を見開き、驚きで言葉すら出てこない。


今、何が起こったの?

ドサリ…

眼前の白が地面へと崩れ落ちるようにして、倒れ込んだ。


ピクリとも動かない白は子狐へと戻っていた。

傷からは血が一滴も出ていないようだ。破れた服からは切られた跡が見える。


辭はゆっくりとその白にそろりと震える手を伸ばした。

温かい…

抱き上げた両手から白の鼓動を感じる。

…お稲荷さんは大丈夫だ…


ホッと溜め息をついたのも束の間だった。

次の瞬間には、私の体は宙を舞うことになった。


お稲荷さんに気を取られてしまい、狗神への注意が削がれてしまった。

見えない外力による衝撃を腹部に受けた後、後ろへと引っ張られるようにして体が浮いたのだ。


そのまま後方の木へと体を打ち付けられる。

手からお稲荷さんが離れたのが分かった。


「ぅぐっ…!」


体を打ち付けられたことにより、背中にも強い衝撃を受け、呼吸が一瞬止まり口から唾液が出る。


意識が飛びそうになるのを堪えた。

衝撃を受けた腹部を片手で庇いながら、私はなんとか体を起こし立ち上がる。


ここで倒れる訳にはいかない…!

立ち上がったのは良かったのだが、先程の衝撃でのダメージはかなり大きく、支えとしている木がなければ、立ち上がるだけでも精一杯だ。


狗神はそんな辭に更に攻撃を仕掛けてきた。

避けることが出来ず、咄嗟に受け身の体制をとるもダメージにより両足の踏ん張りが足りない。


また、体は木へと打ち付けられることとなった。

それでも諦めずに立ち上がる。狗神の攻撃は一方的に続いた。


「ぅぐっ…はぁっ…!」


もう息をするのも絶え絶えだ。

隙を見て何度か術を唱えたが、全て弾き返されてしまい相手を掠ることさえ出来なかった。


“今回は相手が悪い…”


お稲荷さんの言葉が蘇って、私は隣で倒れている白を見た。

確かに、その通りだ…

私と狗神では、力量があまりにも違いすぎた…

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