かけがえのない明日
機械に埋め尽くされた部屋で、教授は唄う。それはもう狂ったかのように。いいや、この男が、まともであるなど誰が言っただろうか
「そう、運命は予告無く君の扉を叩く、承前、翻弄され、あがき続けたまえ、それが、それこそが人間なのだ!!」
「そう、その程度では、この世界は絶望しなかった。この戦いで得られるものはたかだ明日という一日、だが、しかし、かけがえのない明日なのだ。」
翡翠の乙女が跳ぶ、限られた空間の中で、君主を得た妖精に迷いはない。鋼鉄のスカートを履き。自らの身体を鋼鉄の衣装と化して、ただ自らの君主の願いの為に闘う。
刃と化した脚が、強大なる蜘蛛の顎を叩き落とす。粘着性の糸を吐く腹部に、風を纏った腕が突きつけられる。
全ての人間が、この妖精界に存在できた訳では無かった。ある者は狂い、ある者は、存在していたという事実ごと消滅した。
それでも生き延びた人間は、妖精と契約しようやくこの世界に存続できる。そうこの世界に存在するために必要な楔なのだ妖精は。
その中で、さらに戦える力を持ったものを君主と言う。高貴なる義務を持つものたち。
「我が君!!」
声に応えて、エリアーノがそれに、剣を突き立てる。流れ込むのは悪意、ただただこの世界を滅ぼさんとする意志。
それに耐えて、青年は言う。ただ一言、「塵に帰れと」
精神のせめぎ合い、これに耐えきれず幾人が逆に塵に帰り、もしくはただなる悪意となったか、得られるものはたかだか明日一日、それでも、なんとかけがえのない明日だろうか。
諦めれば全てがそれで終わる。