第十二話(終):四色の光が照らす未来
季節は巡り、春の光が王宮の庭園を照らしていた。 この日、王太子ダリウスの音頭で、四兄弟とその妻たちが揃って茶会を催していた。
1. 氷の王子の「非効率な溺愛」
庭園の特等席。サイラスは、椅子に座るマーガレットの背後に立ち、彼女のカップを持つ手に、カップの側面に指先で微かに触れて温度を確認していた。
「熱すぎますわよ、殿下。私、猫舌ではありませんの」
「論理的に考えて、適正な温度で提供することが、客人の満足度を最大化する。君は、私にとって最も重要な顧客だ」
マーガレットは呆れつつも、幸せそうに微笑む。彼の過度な気遣いは、全て「論理的」な言葉で飾られるが、その行動原理が「愛」であることは、誰の目にも明らかだった。
サイラスの過度な気遣いを見て、ルーファスは、ただ静かに、満足そうに頷いた。言葉は交わさないが、その瞳のルビーの輝きは、弟の幸せを心から喜んでいた。
アレクセイは、隣で楽しそうに笑う妻にウィンクをしながら、小声で呟いた。
「サイラス兄さんは、マーガレットさんの存在に『無限の幸福値』を設定したんだ。無限を確保するためなら、多少の非効率は許容される。実に合理的だ」
2. 四つの宝石と、愛の多様性
笑い声が弾ける中、ダリウスが穏やかな表情で、全員を見渡した。隣には、王太子妃となったエララが、揺るぎない愛情を込めて微笑んでいる。エララの薬指のダイヤモンドは、最も安定した光を放っていた。
「騒がしいものだ」
ダリウスは笑った。その声には、以前のような「完璧な王太子」としての張り詰めた緊張感はなかった。
「だが、これでいい。私も、ルーファスも、サイラスも、アレクセイも、皆、それぞれの方法で愛を見つけた」
彼は、妻エララの手にそっと触れた。
「私たちがそれぞれ象徴する宝石のように、愛の形も一つではない。真実こそが最高の武器だと信じた者。情熱が全てを動かすと知った者。論理を超越した者。そして、嘘を真実に変えた者。……皆、苦労した分だけ、その輝きは増した」
サイラスは、マーガレットの手を取り、彼女の薬指のサファイアの指輪にそっと口づけした。
「計算外だったが、悪くない人生だ」
マーガレットは優しく彼の頬に触れた。
「ええ、殿下。貴方の未来の計算に、私の存在を無限に組み込んでくださって、光栄ですわ」
四組の夫婦は、春の穏やかな陽射しの中で、それぞれの愛の物語が、王国の未来を盤石なものにしたことを知っていた。
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