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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第四章 竜の番 護衛騎士ユーキ編
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03.出会い




 その日は珍しくユーキは、一人でミミルファ国の転移魔方陣の間にいた。

護衛騎士であるユーキは一人で転移魔法陣を利用することはないのだが、この日は先に竜王陛下を送り出した後、文官に声を掛けられミミルファへの移動が遅れた。

護衛と言ったって竜王が最強なわけでお飾りでしかないのだが、威厳をさらに演出する為と、こういった雑用にも対応できるようにと常時二名の護衛騎士がついている。

ユーキは武力以外使い物にならないのは城に勤める者は誰もが百も承知で、だが竜王に伝言を頼むことくらいはできるだろうと先に転移魔法陣にきえた竜王への書簡をユーリに託した。




 ミミルファの転移の間に移動するとすでに竜王の姿はなかったが、竜王の居場所はわかっている。魔導師様の執務室だ。ユーキは勝手知ったる他国の城、竜王の元に向かおうとしたところである気配に気づいて足を止めた。



 目の前に一人の女性がいた。



 ユーキは途端激しく動揺した。

なぜならその女性が太陽ほどに眩しく見えた。鼓動が早くなり尋常じゃない血の巡りに、かーっと熱くなって体中がのぼせる。汗も吹き出して苦しい。変な緊張感も走る。なのに温かい幸福感に包まれて穏やかな気持ちが浮かび上がる。激しい劣情と穏やかな愛情のせめぎ合いにユーキは身も心も震えた。



 この女性が自分の番だと直感的にわかった。



 凛とした佇まい。すっと伸びた姿勢にしなやかに伸びる手足。キリッとした目元に涼やかな眼差し。

その瞳がこちらを見た。



 彼女と目があった、



と思った瞬間彼女がいきなり走り出し、魔方陣に消えていった。



 え?なんで?



 ポカーンとするユーキ。

突然のことすぎて何が起きたのか理解するまでに時間がかかった。



 えええええ?



 え、俺、今、運命の出会いをしたよね?番だったよね?

 でも逃げられちゃったよね?

 どゆこと?


 ん?思考が追いつかない待って待って俺焦るな俺しっかりしろ俺



 すーはーすーはー

 ……とりあえず一旦戻って冷静に冷静に冷静にれい、せい、に




 冷静になることは無理だったようで、いま出たばかりの魔法陣からとっさに竜の国に戻った。竜の国の転移の間で手に書簡を持ったまま立ち尽くすユーキに周りが驚き、上司のエーチが駆け付け怒鳴り散らすもユーキの耳には全く聞こえることもなく、ただただぼう然と立ち尽くすのだった。



「おーいユーキ、何やってんだ」



 イフーもやってきてユーキに話しかける。

だがユーキは立ちすくんんだまま動かない。

朝ミミルファ国に出かけたはずが魔方陣の間で立ち尽くすこと一日。もう日は沈みかけていた。その間誰に声を掛けられても聞こえる様子はなく、石化したようにひたすら固まっていた。

ユーキに預けた書簡は違う人物の手によって、竜王のもとへ無事届けられている。

今日の出来事で、ユーキは伝言すら運べない人物として城中で認定されたのは間違いない。かろうじて竜の国に戻ってはいたので、ミミルファで一日立ち尽くすという失態は避けられたのは良かったというべきだろう。





 陽が山の稜線にかかる頃ようやくユーキは意識を取り戻し、隣にいたイフーとエーチに話しかけた。二人は、夕方になり勤務時間の終了とともにユーキのところにやってきていた。



「俺、番に出会っちゃったかも」


「ならなんでここに突っ立ってるんだ」


「そうだ。番に出会ったならこんなことしてる場合じゃないだろう」


「そうなんだけどどこにいるのかわからない。ミミルファ国の転移魔方陣で移動してしまったんだ」


「だったら行く先は、へファイス国かエノシガル国だろ。第一、転移魔方陣を利用できるものは限られている。そんなのすぐ見つけられるだろう」



 二人にあっさり言われたが実際のところは顔を見て逃げられている。だけどそんなことをエーチとイフには言えなかった。



「そうだな。探しに行けばすぐ見つかるよな」


「ああ、番が見つかったんだったら探すのにも休みをくれるだろうよ、なあエーチ」


「でも俺、この間休みもらったばっかりなんだけど」


「こういう時は許してくれるさ、なあエーチ」


「俺、今朝預かった書簡も届けずじまいで役立たずだから、ユーリ様にめっちゃ怒られる、ような気がする……」


「大丈夫だって。番が見つかったって言えばわかってくれるよ、なあエーチ」



「はあー、休暇は俺の判断でいいが、転移魔法陣は竜王陛下の許可がいる。ミミルファの転移魔法陣の利用者を調べるには魔導師様の許可がいる。お二人がそろっていらっしゃるときに謝って、事情を話せ。それが陛下に怒られず尚且つ、円滑に話が運ぶやり方だ」


「!!わかった!!いえ、わかりました!早速取り掛かります!!」



 「うんうん、それがいい」とにこやかに大きく頷くイフーと対照的に、エーチは疲れたような顔をしてうなだれる。



「あいつはいつまでたっても手がかかるな」



 そう言いながらも、どこか嬉しさを隠せないエーチだった。









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