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竜の愛し子と魔法使い  作者: 中村悠
第三章 高慢に偏見
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17.イチャイチャ?




 ユーキ様と話すシアは、年相応に見えるし、とても楽しそうだ。

学院で見てた王太子の姿とも違って、対等な立場で付き合っている友人と言うのが、見ていてわかる。実際の立場から言えば、王太子と近衛騎士なのでかなり違うのだが、他国の高魔力持ちということで釣り合いがとれているのかもしれない。

からかわれているシアを見るのもなんだか楽しい。


 そしてわかったことがある。


 竜の国の竜王ユーリ様と、ユーキ様から発せられる魔力は大きいことがわかる。それらは決して不快なものではない。だけどシアから感じられる魔力の波とは、全然違うものだった。

ヘファイス国では、大きな魔力を持ったものがあまりいなかったため、気にしたことがなかった。エノシガルも然り。

だが、ミミルファに滞在してみてわかったことだが、王城に勤めるもの皆から魔力のうねりが感じられる。心地良いものと不快なもの、なんとも思わないものと様々だ。魔力を解放すると殊更感じるので、普段は魔力は閉じ込めておいてある。もや様が使い分けした方がいいと教えてくださったのだ。


 圧巻なのは、もや様とユーリ様のお二人揃ったときの魔力の大きさと、融合され相乗効果を生んでいる魔力の美しいこと。ユーリ様に初めてお会いした時は、ユーリ様のその大きな覇王の魔力に全て抜かれるような、力の入らない、立っていられないような感覚を覚えた。


 そしてーーー。

驚くべきはまだ双子の赤ちゃんたち。こんなに小さい時からこれだけの魔力を放出しているとは末恐ろしい。もや様の腕に抱かれてスヤスヤと眠る男の子。竜王様は女の子を片手で抱き、もう片方の手はもや様を包み、体を寄せている。

四人揃った時の魔力のオーラがハンパない。そこらから新しい生命が生まれるのではないかと言う位の、オーラを感じる。生命の源と言うべき魔力ーーー。


 その横でわちゃわちゃと。シアとユーキがじゃれ合っていて可愛い。二人揃ってると、シアもなんだか子供っぽい。



「それにしてもよかったな。安心したよ」


「あー、悪い。心配かけた」


「いや、お前の幸せそうな顔が見られて、何よりだ」


「ふふっ、ありがとう」


「お前のそんな穏やかな魔力も初めて感じたし、いつもに加えて安心感がました感じ?」


「そう?俺たちやっぱり波長が合うんだな」





……うん?

でもちょっと仲よすぎかな。



「それにしても、竜の国の方は、ユーキ様のように魔力が大きいんですか?」


「いいえ。皆ではありません。ただ近衛騎士と呼ばれるものは得てして、このぐらいの魔力があるかと思います」


「それは男性だけなのですか」


「いいえ。女性もおりますよ。ただ少ないですし、番を見つけるまでの間、と言うことにはなります。本当なら、もや様の護衛として結婚後もそのまま勤めてほしいと考えてはいるのですが、何分、その、竜人は番を外に出すのは好まないもので、そして力が大きいものほどその傾向が強く表れるのですよ」



 国によって、事情は様々なのだと改めて思った。私がもし、竜人の番であったなら、国どころか、家から出して貰えないらしい。比較するのは良くないことだが、シアへの好感度が勝手に跳ね上がる。


 それにしても、と。

見た感じ、もや様の方が近衛騎士より魔力が大きいし、賢者としての知恵もあるから、護衛される必要はないんじゃないかと内心思うが、口には出さない。


 魔導師様の魔力は群を抜いて大きい、竜王に匹敵するほど。

イーリヤの魔力では、お二人の大きさは測れないけれど、二人が別格に大きいことはわかる。

まあ、愛するものを心配する気持ちは、誰であろうと理解はできるので、竜王様がもや様に護衛をつけたくなるのは仕方ないよね。





「そのうち、へファイス国の研究によってエノシガル国にも転移魔方陣が開発・設置されるであろう。そうしたら、竜の国に遊びに来ると良い。見聞を広めることは良い治世へと繋がる」


「ありがとうございます。王城に芽吹かれし精霊の大樹と霊泉を拝見したく、訪れを楽しみにしておりますわ」



 竜王の言葉にイーリヤが返す。



「もうあそこは、城内ではない。多くの国民の憩いの場として、開放してある」


「まあ!余計に楽しみです」






 結局、オシアノスとイーリヤはしばらくミミルファ国に滞在した後、二人揃ってエノシガル国に戻ることにした。

イーリヤの外遊を国から派遣する正式なものとする為だ。へファイス国との魔力測定器の改良と転移魔方陣の設置も、イーリヤの魔力量でヘファイスにまかせっきりにするより、はるかに捗るだろう。

 そしてこれが一番の重要案件だが、婚約を結ぶこと。国へはすでに連絡はしてあるが、本人たちが居なければ進むものも進まない。





「帰りはイーリヤとのんびり船旅だ。楽しみだな」



 晩餐の席で、そう微笑むオシアノスの声を聞きとって、ユーリは笑顔を向けた。

ユーリは、オシアノスとイーリヤがミミルファ国に滞在している間、時折ユーキを護衛に伴って晩餐を共にする。



「空の旅も、楽しいぞ」ユーリの言葉に


「えっ、それって」


「ユーキ、どうだ?」


「マジで!やったぁ!一度エノシガル国に行ってみたかったんだよな。前はユーリ様に置いてかれたからさぁ」



 オシアノスの絶望とは真逆に、イーリヤは目を輝かせている。



「良いのですか?竜の背に乗せていただくのは、とても光栄なこと。それを」

「勿論大丈夫です!お二人の警護は私にお任せください。エノシガル国までひとっ飛びです。やったぁぁぁぁ!」



 被せるように話すユーキは、キリッと騎士の顔で決めた後、子どもの様にくしゃっと相好を崩した。



「オシアノス殿下、我が国の騎士は、世界トップクラスの強さを自負しております。護衛をお任せいただけますか?」


「はぁぁ、竜の国の強さは身を以て知っていますよ。私一人ならともかくイーリヤも一緒ですから、こちらからも是非、お願いしたい。……ユーキにイーリヤが密着するのは嫌だけどな」



 最後のセリフは小声で、みんなには聞こえないだろう大きさだ。

と思ったら、ユーキがオシアノスに寄って来て



「大丈夫。鞍を載せるし、それにどっちかっていうと、お前がイーリヤ様と密着することになるよ」



 オシアノスをからかうようにユーキは言った。オシアノスが顔を真っ赤にし、そのまま固まってしまったことはいうまでもない。

そんな会話がなされているとは知らずイーリヤは、ユーリに



「竜の国はお仕事のお休みって、どのような仕組みなのでしょう。出来れば、ユーキ様にうちのホテルでゆっくりして頂きたいわ。もちろん、ご招待させてくださいね」


「あら、それならミミルファのお休みの仕組みもどうなってたかしら。私も」



 もや様のお茶目な発言に、後ろに控えていた側仕が慌てる。



「ただでさえ子育てで時間を割かれておりますので、出来れば……」


「んもう、冗談よ」



 頬をぷっくりと膨らませるもや様は可愛らしくて、とても二児の母とは思えないあどけなさだ。



「是非、ご家族様でいらっしゃること、心よりお待ち申しておりますわ」



 そうして二人は、ユーキの背に乗ってエノシガル国に戻ることとなった。










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