表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第1章 勇者誕生の時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/14

第4話 林でバトリ、トラブって

 東のアリエヘン村から、北のオオゲサ王国に向かって、悠々と延びる林、チンチクりん


 僕たち三人はモンスターのいる場所を何とか避けつつ、この林の中をあちこちと移動していた。


 だけど、生まれてこの方、こんな森林地帯に足を踏み入れたことがない僕は、多少ながらも、この静かな林の中でざわめく戸惑いを抑えきれなかった。


 湿った空気、淀んだ空気、甘酸っぱい空気。

 様々な空気たちが、僕の不安げな脳裏を支配する。


「なあ、本当に、この先が出口であってるのか?」


「ああ、オラ、いつもこの林にある塾に通っていたから詳しいんだ」


「えっ、ケイタ君もなの? 自分もそこの学習塾に通ってたんですよ」


 そのケイタの発言に両手を胸に当てて、僕に見せたこともない可愛さオーラ全開で問いかけるミヨ。

 

「そりゃ、奇遇だね。ミヨちゃんとオラは運命の赤い糸で結ばれてるかもね」


「えへへ、そうかも知れませんね♪」


 ああ、早くも彼女の毒牙にかかったか。

 数学のテストで、赤点必死の娘がよく言うもんだ。


 この娘は僕の対応とは違い、イケメンなケイタに対してか、少なからず好意を示しているようで、彼には優等生のぶりっ子を貫き通すみたいだな。


 ダシだけ絞り尽くされてしょくされるツケメンとは違い、イケメンはいいよな。


 まあ、そんなことより一大事だ。


「だああー! お前らがベタベタラブコメゴッコやっていたから、あっという間に囲まれたじゃんか!」


 僕たちは大量のモンスターに、行く手も逃げ道も塞がれていた。


『ピイイ!』 


 相手は大人の頭ほどの黄色いゼリーの固まり。

 二つのパチクリとした瞳に、口から覗かせるギラリとした鋭い牙。


 コイツらは紛れもなく、幼い頃に図鑑で見たことがあり、可愛いふりして危ないモンスター、通称『スライス』たちである。


 数にして、30匹といったところだろうか。


 いかに最弱と言われようと、数が多いだけに驚異の攻撃を発揮する。


 弱ければ大勢で攻めればいい。

 一匹では弱いスライスなりに、色々と思索した戦法がうかがえる。


 彼らは僕らの戦闘の経験不足を、本能的に感じたのだろう。

 ジリジリと僕らに迫り、食らいつくかの如く、獰猛どうもうそうな牙をちらつかせていた。


「ちっ、やるしかないか」


 迷いの末、考えられる戦法は1つしかなかった。


「こうなれば正面突破で逃げ切るまでだ!」


「妥当ですね。根性なしのジンなら、そう言うと思いましたよ」


「兄ちゃん、こんな雑魚ざこ相手に背を向けるなんて、それでも勇者かよ……」


 僕以外の二人は戦う気満々のようだが、回復の宿もろくにとれないこんな場所で、無駄な体力は削りたくない。


「下らない言い訳はいいから、突撃するよ!」


「ええ!」


「分かったぜ!」


 僕たちは縦に1列に並び、全力で前のスライスへと突撃する。


「名付けて、

『突撃、隣のモンスター、

からい唐辛子ホイップのソフトクリームはお好きですか?』

作戦だあー!」


「さあさ、キンキンにからいアイスはいかがですか!」


「激辛ハードコースだーい♪」


『ピイイ!?』


 その予期せぬ気迫に身を縮めて、動きを止めるスライスたち。

 どうやら、弱々しい僕らによる()()攻撃を予想していたらしい。

 中には恐れをなして、尻尾をひるがえすスライスもいた。

 スライスには尻尾はないけどな。


『ゴツーン!』


『ピイイ!?』


「隙ありだ!」


 僕は逃げ惑うスライスの一匹に狙いを絞り、スライスの後頭部に空手チョップの連打を食らわす。


『ピイイ……』という、鳴き声とともに潰されるゼリー状の体。


 その体が水蒸気のように気化し、僕の前に1枚の金貨、別名『1 Kiranキラン』が飛来する。


「うわっ、背後から攻撃するなんて、悪魔のような作戦で卑劣だな」


「ええ、一番怖いのは魔王じゃなく、この男かも知れませんね」


「本当だぜ。たった1Kiranのために、あっこまでボコボコにするのかよ」


 僕の背後でボソボソと綿毛アッコと言うか、悪口あっこうを吐いている二人。


「何だよ、ようは勝てばいいんだろ」


 1枚の金貨を拾い上げて、我が物顔でメンバーを見下ろす。


 剣もろくに振るえない最弱の勇者として、まずはあざとい手で経験値を稼ぐ。

 僕はレベル上げのためなら、これからは鬼にならなければいけない……。


****


「ここが噂の学習塾か」


熟成書塾じゅくせいかじゅく』と、達筆な筆先で書かれたような縦看板を前にして、手に汗を握る。

 僕はリアルでも塾通いではなく、帰宅部で、ここでもそういうフリーな設定だった。


 そもそも学校で勉強に耳を傾けるのにも関わらず、別の場所で同じく勉強をする行程。

 その繰り返しの作業が、僕にとっては屈辱で堪らなかった。


 まあ、その分、必死になって学校オンリーで勉強に身をていして頑張ってきたけど、こうやって死んだら、元も子もないけどな……。


「懐かしいな。ここで色々勉強したなあ」


()()()()ってことは?」


「ええ、数ヵ月前にモンスターの集団が、この塾を襲いまして……みんな……」


()()()とは……?」


 僕は予想外の会話の流れに固まり、怖気おぞけが全身を襲う。

 その先の言葉は、いくら僕でも多いに想像できたからだ。


「ああ、モンスターの親玉が来て、全然、人間には関係ないモンスターたちのマニアックな授業を受けるはめになったんだぜ。だからオラは行くのを辞めたんだ」


「何でやねん!!」


「いや、冗談じゃないっすから」


 僕はすかさず、ケイタに会心の一技ツッコミを浴びせたが、当の本人は真顔だったので、こっちの方がイタいダメージを受けた。


「そうでゴザンスヨ」


 そこへ急に突風が吹き荒れて、1つの人影が出現してこようとするが……、


「きゃあああー!?」


 ……僕は一人の男として、ミヨの浮き上がるスカートに目を奪われていた。


「どこを見てるのデスカ……」


 漆黒のスーツとマントを身に纏い、細い目尻の黒い仮面を強調させ、こちらを軽蔑するかのように見下している青年のような喋り口……。


 体中から感じ取れる気配が、この世の者とも受けとれず、何より生きている者の気配がしない。


「はっ、曲者くせものめ。お前は誰だ!!」


「鼻血をダラダラ流しながら言われても、説得力がないデスネ……」


 仮面の三日月の動かない口から発せられた、開いた口が塞がらない声のトーン。

 ケイタは何を案じたのか、1枚の布切れを僕に差し出す。


「……兄ちゃん、とりあえず鼻血を拭こうよ」


「ああ、すまない」


 ──さあ、指で鼻腔を摘まみ、貰った布の切れ端で鼻血を止めながら、テイクツウ(痛)ー。


「──僕は勇者ジン、そして、僕の華麗な仲間たちだ。お前は誰だ!!」


「ちょっと、何よ、その言いぐさは! 自分たちはサーカスの曲芸士じゃないのよ!!」


「まあまあ、ミヨちゃん落ち着いて」


「はーい、ケイタ君~♪」


 だから、この期に及んでもぶりっ子は止めろ。

 ツンデレラビリンスめ。


「何かこれまでに類を見ない、興が冷める勇者メンバーデスネ。まあ、いいデスケド……」


「──ワタシの名前はキル・ユー。魔王側近の部下の一人になるデスヨ。以後、お見知りおきヲ」


 キル・ユーと名乗った男が敬意を払うかのように、こちらに向かって、お辞儀をする。


「何だ、魔王の平社員か」


「ヒラヒラ~♪」


 まあ、ご丁寧な挨拶も相手にもよるが……。


ひらとはなんデスカ、平とは……。

──まあ、いいでしょう。大事な人質を抱えて、オオゲサ王国でお待ちしておりマスヨ。クックック……」


 ギュイーンと軋んだ機械のチェーンの音と共にマントをひるがえし、姿を消すキル・ユー。

 その姿はSF映画のように、さまになっていた。


「おーい。カッコつけて去るのはいいから、どうせ行くなら、僕らもこの林から出してくれよ!?」


「大丈夫ですよ。この林を抜けるルートは、大体分かりますから」


『ピイイ!!』


『ピイイ!!』


『ピイイ!!』


「そんなことよりやべえな、兄ちゃん。何かヤツの仕業か知らないけど、色んなスライスたちがぞろぞろやって来たぜ……」


「ええ、中にはこの地方にはいない、高レベルのスライスとかもいますね……」


 こちらは色んな意味でピンチだったけどな……。


 あと、ところで王国にいる人質って、誰なんだろう?


 おい、キル・ユー。

 説明が足りてないぞ!

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ