表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第5章 勇者今こそ剣を振るい、運命を斬れ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

第24話 エンドとの激しいぶつかり合い

「さあ、かかってきなよ。ジン君の勇者としての力量を試させてもらうよ」


「どういう意味だよ?」


「そうだねえ、ハンデとして我輩は君に対して呪文は使わず、素手で君の相手をするよ。もちろん君は、どんな攻撃をしても構わないよ」


 魔王ジイ・エンド(こんな生意気なヤツ、以下略、エンドでいいよな)が、右の人指し指でクイクイと誘いながら、こちらに挑発をしてくる。


「そうか、僕もなめられたものだな!」


 エンドの前に飛び出し、勇者の剣でエンドの細い腕に素早く斬りかかる。


『ザシュー!』


 コンマ数秒の先手必勝。

 いくら魔王でも、見た目は子供の体。

 片腕を切断したら、どう足掻いても致命傷だろう。


 悪いけど、早くも決着がついたな。


 光輝く太刀筋がエンドの腕をはね飛ばす……つもりだったが……。


「なっ、斬れてない?」


 確かにエンドの腕を斬った感覚は、僕の腕を通じて、全身に伝わっていた。

 しかし、魔王側の腕は何ともない。


「それが君の限界かい?」


「おわっ!?」


 ニヤリと不敵な笑顔をしたエンドが、僕の剣を持った方の腕を掴み、そのまま地面へと叩きつけられる。


 辺り一面に舞うホコリ。

 そのホコリが地面に舞い落ちた時、僕の体は宙に浮いていた。


「へえ、すごいすごい。移動呪文パープリンも自然とできるようになったんだね」


「まあ、土壇場で唱えた呪文なんだけどな。これくらいの呪文なら僕にでもできる」


「またまた謙遜しちゃって。我輩の見ない間にずいぶんと成長しちゃってさ」


 小さくつぶらなエンドの瞳には、喜びの表情が見てとれた。


「まるで我が子が親元を離れて歩み出す、親心のようなイメージだな」


「そうそう、その例えは実に良いよ」


 エンドが両手を叩き、僕を褒め称える。

 これはまた、余裕の面持ちだ。


「そうやって、吠え面をかくのはいつまでかな」


 僕はエンドと距離を保ちながら、剣を鞘にしまい、呪文の構成を練り出す。


「いくぞ、レーザー100!」


『ヒュンヒュンヒューン!!』


『ザクザクザクー!!』


 光の刃が僕の頭上に立ち並び、その刃が次々と流れるように、エンドの体に突き刺さる。


「ふふふ。我輩にこんな呪文が効くとでも?」


「ああ、最初からそんなつもりじゃないさ!」


「何だって?」


 その左手で光の刃を撃ちながら、右の拳をボクシングのジャブのように流しながら、急接近して、エンドに素早い突きを繰り返す。


『ザクザクザクー!!』


『ドカカカカー!!』


 魔法とパンチの同時攻撃。

 今の僕の技量なら、できると信じての少々、危ない賭けだったが、うまく成功できて良かった。


『ザクザクザクー!!』


『ドカカカカー!!』


「なぬ、ぐはあああー!?」


 僕はエンドの体にレーザー呪文と、拳で乱れ撃ちを放ちながら、エンドの体を宙に叩き上げる。

 

 魔王と言っても、しょせん見た目はただの子供。


 さらに何度か戦った結果で、分かった点がある。


 ヤツには空を舞う翼がない。

 ならば空中戦でなら、手出しはできないはずだ。


「必殺拳空中乱舞桜、下手の横好き突きー!」


『ドカカカカー!!』


「ぐああああー!?」


 即興で編み出した、よく分からない洒落の技名を叫びながら、呪文を止め、両拳を使い、エンドの体を天井の黄金のシャンデリアに向かって、さらに上へ上へと攻め立てる。


「そして、とどめのフィニッシュー!」


 エンドの体が5メートル先の天井に届いた時点で、動きを確実に封じるため、剣を抜き、相手の体を一直線に横から貫いて、胴切りにする。


『ザシュー!』


 コトコト煮込む予定のビーフカレーの具材のように、()()を裂いた感触が腕にしっかりと伝わった。

 いけねえ、今斬ったのは男爵いもじゃなく、魔王の()だった。


「ぐああああー!?」


 ぼろ雑巾のようなエンドの体が、ちから無く空を泳ぐ。

 その際に、僕は地に足を下ろした。


「やったか?」


「……何てね」


 その果てたはずの体が、僕の見上げる上空でピクリと動く。


『フワリミスト!!』


 体を反転させ、フワリの呪文を地に向かって放ち、落下の衝撃を最小限にするエンド。


『それからの……纏まってのフワリソード!』


『ゴオオオオー!』


 その風が灰色に色づき、巨大な二メートルほどの洋風の剣の形となり、斜め上から僕に向かってきた。


 大きさのわりには、落下のスピードが速い。

 強い風が吹き荒れ、偏西風のような威力で、周りの窓や照明が激しく揺れる。

 

『ゴオオオオー!』


「──のわぁぁぁー!?」


 僕は裏返った声を出しながら、マタタビ酔いの猫のように、その場で床に寝転がり、ギリギリで、風の剣をかわす。


 人間、死ぬ気になれば、どうとでもなるものだ。

 もうリアルで死んでるけどな……。


 風でできた剣は、床に当たった時点で霧散され、何事もなかったかのように消滅する。


「あのなあ。そちらは呪文は使わないって言っただろ!?」


「あはは、笑えるね。約束は破るためにあるんだよ」


「無茶苦茶なヤツだな!?」


 僕は砂ぼこりを手ではたきながら、あはははと笑う魔王の様子を見て、ある異変を察する。


「それにしてもおかしいな。あれだけの攻撃を食らっても、なぜお前は服はボロボロなのに、体には傷ひとつないんだ?」


「さあ、何でだろうね。それより我輩の足元をよく見てごらんよ」


「はあ? 足元だって?」


 はて、床に小銭でも落ちてるのか? と気になった僕は、エンドの足元を眉間にシワを寄せながら観察する。


 足の影が動いて、エンドの姿が溶け込み、僕の影へと引っ付いていく。


「まさか、これはキル・ユーの技の一部の?」


「そう、影を伝い、移動する()()()だよ。元は我輩の技で、これをキルに教えたんだよ」


 僕の真後ろの影から出現したエンドが、僕の首元に手の平を当てようとする。

 それにいち早く反応した僕は、即座に体を左側にひねった。


「おおっと、その手に乗るかよ!!」


 相手が誰であれ、反射神経なら、誰にも負けない。


「へえ、また首をはね飛ばそうとしたんだけど。中々やるじゃん」


「だてにゲームで、動体視力を磨いていないからさ」


「……まあ、ジン君は何回殺っても甦るみたいだから、あの噂のネットゲームで、いくさ慣れした戦いの女神のサクラを捜して、とっ捕まえたんだけどね」


「えっ、何だよ?」


 エンドが再び影に沈み、僕からある程度の距離を取る。


 その距離、およそ10メートル。

 無敵と見せかけて、何かしらの警戒はしているらしい。


「おまけに捕らえたサクラの話では、君にテレパシーで戦い方のアドバイスをしていたそうじゃん。一人でバトルしていたと見せかけて卑怯だよね」


「黙れ、お前だって、散々酷いことをしてきたじゃないか!」


「我輩はいいんだよ。魔王なんだから」


「どんな理屈だよ!」


 人を強引に拉致して、檻に閉じ込めるだけでも犯罪なのに、この魔王はどうかしているのか。


 今さらそんなことは知りませんと、開き直っていると思いきや、あの素の反応ときたものだ。


 嘘はつく、相手を騙す、犯罪は平気で犯す……。

 このオレオレ詐偽的な坊やの、親の教育はどうなっているのか。

 いや、過去のエンドの喋り口を思い出すと、見た目は子供でも、実年齢は1000歳はとうに越えていると言っていたな。


 まさに歩く妨害者=老害だな。


(でもな、攻撃が通用しないとはどうしたものか……)


 その場で頭をボリボリとかき、考え込む僕。

 あんな風に距離を取るなら、ヤツにも弱点があるはずだ。


(……元からほぼ無い脳みそを絞り出して、考えろ、僕!!)


 己に()()を入れながら、思考を絞り出すが、何も解決策が浮かばない。

 久々に()()()でも食べたい気分だ。

 ピリ辛の大根おろしを手元に添えて……。


「どうした、今度は我輩からいってもいいってことかな?」


「いいも何も、さっきから好き放題にやっているじゃないか」


「あはは。まあ、そうとも言うね」


「あと、それから影に潜まずに、正々堂々と攻撃しろよな」


「ふふふ。冗談じゃない。これが我輩の攻撃の仕方さ」


「本当、嫌みなヤツだな。影なんて使って……あれ?」


「どうかしたかい?」


 エンドが不思議そうに僕を見ている。


「──いや、何でもないさ。いくぞ!」


 僕は剣を振り下ろし、魔王へ突撃する。


「あはは。おまぬけな判断だよね。まあ、どう考えても、それしか方法がないよね」


『フワリミスト!』


 エンドが両手を交差させて、風の呪文をこちらに放つが、僕は呪文を呟きながら、それを難なく避ける。


「へえ、なるほど。移動呪文パープリンで避ける応用術か。本当に強くなったね。勇者ジン」


「……じゃあ、これはどうかな。二度目のフワリソード!」


 エンドが体をくの字に曲げ、両手から風の剣を発動させようとする。


「そこからだと、今度こそ直撃だね。そのやわな防寒着で耐えられるかな?」


「そうさ、この隙を待っていた」


「なっ、どういう意味かな?」


「こういう意味だよ!!」


 僕はエンドのいる場所に剣を突き立てた。

 その刺した先には、長く伸びるエンドの影。

 

 剣が影を裂き、エンドの胴体に剣が貫通する。


「なっ、ぐはっ!?」


道理どうりで、そちらから接近して来ないと思ったら、こういうことだったんだな」


 別に難しいことはない。

 巨大な呪文を使う隙を利用したというだけだ。


「ぐはっ!?」


 魔王が両手を垂らして詠唱を止め、口から血を吐き、ヨタヨタとする。

 僕の推理通りでは、この攻撃は致命傷のはず。


「……ふふふ。早くも本体を見抜くなんて、中々やるじゃん」


「ああ。影で移動するということは、そこに本体があって移動できる代物だし、直接、体に攻撃しても、ダメージが無いと言うことは、もしやと睨んでさ」


「……ご名答。でもジン君、それがワナだと知ったらどうするかい?」


「なに?」


 エンドの傷口から、黒い煙のようなものが漏れ出す。


 違う、これはただの煙じゃない。

 魔王を這っていた影が少しずつ消え出して、体からにじみ出ているのだ。


「秘技、こくの大呪文、影食い!」


「……しまった!?」


「ふふふ。見事にワナにかかったよね」


 僕は影から剣を引き抜こうとしたが、大地に深々と根を張った雑草のように、テコでも動かない。

 でも普通、雑草なら、途中で根が切れて取れるはずなのだが……。


 それにどこかしら体も重いし、違和感もある。


「う、動けない……」


 体も指先も縄で縛ったように、ピクリとも動かないのだ。


「無駄だよ、どうあがいても無駄だよ。君の影は完全に我輩が乗っ取ったから」


「初めから、これが狙いか!!」


「いや、最初は君の実力を試していたんだけど、想像以上にちからをつけていてビックリしてね。ならば、我輩の最高の呪文で、確実に封じるしかないと思ってね」


 抵抗しても動かない体にムチを打つ。

 まあ、そのムチはなく、言葉だけで実際は例えに過ぎないけど……。


「ここで消しておかないと、いずれ我輩の世界征服の計画を邪魔するかもしれない、驚異な存在になりかねないからね。だから、この世界から消えてよ。勇者ジン」


 魔王の影が僕の体に絡みつき、次々と触れた部分を消失させる。


「くそ、僕としたことが……」


 自分のちからの無さに、絶望しそうになる。

 そんな思惑の中、敵の影に飲まれながら悟った。


「じゃあ、勇者よ。さようなら」


 エンドからの別れの声を聞き、再度、認識する。


 僕は魔王に負けたのだ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ