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最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第1章 勇者誕生の時

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第2話 大いなる旅立ち

 

****


 ここは異世界の東暦とうれき1999年の春。

 周りを山と田んぼで囲まれたへんぴな農村、アリエヘン村。


 舞台は両親と仲良く暮らしていた、丸太で組まれたログハウスの僕の自室から幕を開ける。


「──もう、ジン。いつまで寝ているのですか!」


「うわっ!?」


 僕の安定していた寝床の布団が、グルリと反転した。

 その大規模な回転に勢いあまって、畳の床に滑り落ちそうになる。


「なっ、危ないな、お袋。寝ているところ、何するんだよ!?」


「いいからさっさと起きなさいよ。今日はあの日でしょ!」


「えっ、僕は男なんだけど?」


「違うわよ。今日はあなたの勇者の継承式でしょ!」


 上下とも灰色で長袖のフリースにスウェットパンツ、茶髪のセミロングのゆるふわパーマがかかった髪。

 それなりの胸で150くらいの小柄だが、昔から色気に満ち溢れ、この世界においてもお袋の美しさは変わらない。


「何、人の顔を見ながらニヤニヤしてるのかしら? わたくしの顔に何か付いています?」


「いや、化粧がじゃなく……何でもない」


 僕は断じてゼネコンでもマザコンでも、このアラフォーなお袋にゾッ()()LOVEでもない。


「さあさ、早く着替えて。ああ、わたくしと同い年のお父さんにも、この息子の晴れ舞台を見せてあげたかったわ……」


 お袋がガッカリしたような視線で、い草の香りがする畳に顔を背ける。


「──おい、母さん。勝手に死亡フラグを立てるの止めてくれないか?」


 その致しかねる暴言と行為を静かに取り消すかのように、焦げ茶色の作業服姿の親父が()()()()と、玄関口から姿を現した。

 長々とした手入れされた灰色の髭に、白髪を伸ばして後ろに束ねた髪型は、どこぞの仙人を妄想させるかのようだ。


「あっ、親父、ようやく黄泉よみの国から帰ってきたか」


「ジンまで、何をほざいてるんだ?」


「酒のグラスを片手に、綺麗なお姉さんに囲まれて幸せだっただろ」


「愚か者、ただのタケノコ堀りでキャバクラゴッコではないわっ!」


 泥と汗で薄汚れた親父から首根っこを掴まえられ、家の外の草むらへとポイッと追い出された僕。

 その閉ざされた木製の扉の奥から、両親の声が僅かに漏れる。


『──お父さん、ちょっと息子に対して、厳しすぎですわ』


『母さん、ジンを甘やかすな。それにもうアイツは勇者になるんだから……』


『そうですが……』


『心配するな。アイツなら逞しい勇者になって、この世界を牛耳ぎゅうじる魔王なんて一網打尽さ』


『ええ、そうですよね。あの子も()()好きですし、私たちの自慢の息子ですもの!』


 どうやら二人とも話は少しずれてはいるが、僕を温かく旅立たせるつもりだったらしい。

 僕の暴言により、理論の壁も何もかもぶち壊してしまったな。


 ──そう、このアリエヘン村の勇者として、もう後には引けない。


 僕は気を取り直して、ゆっくりと深呼吸した矢先、その出てきた玄関のドアの隙間に、先ほどまで無かった大学ノートのメモ用紙が挟まっているのを見かける。


『──父さんから、ジンへ』


 扉からそそくさと抜き出し、折り畳まれたメモにはそう記されていた。


 どんなことが書いているのだろう。

 親父から、僕宛ての禁断のファンレターか?

 気になって、すぐさま開いてみる。


『ジンよ。まずはこのアリエヘン村のよろず屋、ナンデモアル屋に寄れ。そこで装備品と旅の軍資金を準備してある。勇者になるお祝いとして、わたしたちからのささやかなプレゼントだ……それから……』


「おっしゃー。金と勇者の初装備だ!」


 僕はその紙を最後まで読まずにくしゃりと丸めて、背中に向かって地面へとポーンと放り投げる。


 どうせ、この文章の行く先は親父の武勇伝か、何かだろう。

 どうでもいい情報は読まないで正解だ。


「あいたた!?」


「すると後ろから女の子らしい声が聞こえた気がした。振り向いた相手はそれなりの美少女だった」


「……気がしたとは何ですか。不法投棄は立派な犯罪ですよ」


 いるんだよね。

 こうやって自分が正義で正しく、道から外れたおかしなやつにはひたすら説教する()()()()なやつが。


 もうちょっと、威張いばり散らす自分の態度をよく改めろよな。


 まあ、関わるのも面倒なので、何事もなかったかのようにその場を去ることにしよう。


 性格は針金のようにひん曲がっていても、花柄のブラウスと赤いロングスカートがよく似合っていて、見た目は可愛い子には違いないが……。


 いや、ガーリーな見た目に騙されるな、僕。


「待って下さい。貴方、今年こんねん度に継がれる勇者ですよね? 自分も連れていってくれる約束でしたよね?」


「はい?」


 そのあやふやな彼女からの台詞を頭で受け止め、僕の思考は瞬間接着剤のように一瞬で固まってしまう。


「そんな約束をした覚えはないけど?」


「いえ、貴方のお父さんが書いた手紙に書いてありましたよね。自分の勇者の修行がてら、自分を勇者見習いとして、一緒にお供させてくれることに……。そう、この紙の最後に書いているはず……」


 黒髪のサラサラロングで黒い瞳の彼女が、丸まったメモ用紙を手で広げて、僕の顔へと突きつける。


「ミヨ、数学のテスト16点?」


「えっ、どうして今日の自分のテストの結果内容を知って? あああー、これ違うかみー!?」


 明らかに動揺し、青ざめた顔のミヨが僕の持つ答案用紙を引ったくる。

 その際、ほのかにいい果物の匂いがして、僕は彼女に淡い感情を抱いていた。


 この女の子は名前もだが、喋り方といい、仕草といい、あの岬代みよに何もかもよく似ていたからだ。


 そうか、僕は岬代に少なからず、好意を感じていたのか……。


 ──ふと、昨日の出来事のように、あの列車事故の現場が心に沸き起こってくる。


 僕は彼女を結局、守りきれなかった。 

 今も思い出すたび、後悔の念が募る。


「──何をボーとしているのですか?」


 やがて我に返ると、ミヨが僕の頬に向かって、棒切れをツンツンと当てていた。


「いや、ナンデモナイサ~♪」


「それで何でカタコトの日本語なのでしょうね?」


「いや、僕、帰国子男きこくしだんだから」


帰国子女きこくしじょじゃなく、子男しだんですか。それは聞いたことない言葉ですね……」


()()屋の()()族の名前のようで痺れるだろ♪」


「はあ、流行りの暴走半島?」


 そうか、ミヨの反応を見る限り、この世界には暴走族という単語は存在しないのか。

 少しばかり残念だな……。


「さあ、念願のよろず屋に着きましたよ」


 そんな考え事をしている間に、ミヨは仏像のような僕に縄をくくって引きずりながら、いつの間にか店の前へと辿り着いていた。


 その柔軟な考えと手早い行動力に類いなれないパワー。

 確かに、勇者志望なだけのことはある。


「まあ、まずは服からだな」


 強引な彼女によって、土と砂利で汚れたシャツとズボンを見据えながら、僕は店の外壁に貼ってある店の広告に目を落とすのだった……。


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