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最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第3章 勇者運命の歯車を変える時

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第16話 仮面を外した素顔には

「サテ、何がおかしいか不明デスガ、これからボコボコにされる気分はどうデスカ」


「えっ、僕笑ってたか?」


「エエ、ニタニタ笑って、気持ち悪いデスネエ」


 キル・ユーが眉をしかめて、同情心を滲ませた、ため息を発する。


 どうやら僕はクールに見えて、顔に分かりやすく出るタイプらしい。

 ならば、貧乏神ではなく、福笑いの神にでもなれるのか。


 ……いや、そうじゃない。

 相手は、こちらの冷静さを欠こうとしているんだ。


 恐らく、僕が隠していることを知ってて、その裏をあからさまに暴こうとしているのだ。

 この大人ぶったふりをした、腹黒仮面め。


「キル・ユー。向こうにUFOが着陸して、中からメスネズミが逃げ出そうとしてるぞ」


「何を寝ぼけたことを言ってイルノデス?」

 

 誘導尋問失敗。

 中々の頑固者で、目先でじかに確認しなければ信じないたちらしい。


 どうにかしてヤツの注意を引き、この草を食べないと、僕に勝ち目は揺るがない。

 ポケットにしまい込んでいた、マジッ草の感触に触れながら、これでもかと頭を捻る。


『……どうやら私の出番みたいだね』


「よっ、サクラ御殿ごでん待ってました!」


『何かな、その物知り博士的な()()は?』


「そう、彼女は味付()()を開発した、ごく普通の少女であり……」


『……周りから誤解されるような、下りは止めてもらえるかな』


「すまん、ほんの些細な僕の性分を許せ」


『許すどころか、神に対しての侮辱だよね。まあ、いつものことだからいいか……そうだねえ……』


 サクラが喋るのを止めて、迷いのふっ切れた口調で、僕の頭に語りかけた。


 その間、キル・ユーは律儀に、携帯ヤスリで長い爪を研ぎながら、僕を待ってくれている。


 怖そうな外見に見えて、内面は紳士なのかも知れない。

 仮面の中の反応は、予測が不明だけど……。


『私が天界から攻撃呪文を唱えて注意をひくから、その間に食べる行動を起こして』


「あのなあ、ここにはミヨたちもいるんだよ。巻き添えをくらうだろ」


『大丈夫。キル・ユーだけを追尾する呪文を発動するから』


「何だ、そのロックオンレーザーみたいな表現は?」


『いいから、ツッコミする暇があったらキル・ユーの注意を逸らして。この魔法は発動時間がかかるし、派手な呪文だし、勘のいい彼には一回しか通用しないはずだから』


「分かった、蛇腹じゃば台国の卑弥呼さま」


『……何か、しゃくに触る言い方だね』


 サクラの返答に応対する前に、すでに僕の体は鞭を鳴らすように動いていた。


 テーブルに載っていた平たい食器を一皿手に取り、指先でクルクルと回す。

 気分はマンネリとしたパーティーで披露するテーブルマジック、まさに大穴の一発芸だ。


「さあ、今から三分クッキングのお時間です。今日の食材は……」

 

 僕はテーブルに丸皿を置きなおし、灰色の丸い食材を載せる。


『何デスカ、ソレハ……』


「じゃじゃーん、ロールパンと見せかけたネズミです」


「ククク、その手には乗りまセンヨ」


「いいや、そうは八百屋(問屋?)が下ろしません」


『チュウチュウ!』


「ナッ、今度は玩具じゃなく、ホンモノ!?」


 いや、コイツは玩具のネズミだ。

 腹話術を駆使した、僕の今一番の最強の攻撃で、ネズミが弱点のキル・ユーをビビらせる。


 コブトリンを倒した時に密かにレベルアップし、ここの城下町の宿屋に泊まった時、偶然、隣部屋に宿泊していた旅芸人から、何かしらのスキルが修得できることを知り、教えてもらった腹話術のスキルだけどね。


 早くも、こんな場所で役に立つとは。


「では、こやつを焼きます。ケイタシェフ」


「ああ、了解だぜ。あちちのちー!」


 ようやく、コブトンの群れを滅ぼしたケイタが、規則的に足をバタつかすネズミの玩具に目がけて、あち系の呪文を放つ。

 一方でミヨは緑の光に染まり、回復呪文で自身の体を癒していた。


『チュウチュウー!!』


 もがき苦しむ姿を、上手く鳴き声で表現してみる僕。

 現世では、演技派声優が向いているかも知れない。


「ナヌー!?」


 それを見たキル・ユーは気が動転したのか、言葉数も少ない。

 ネズミが苦手で腰がぬけたのか、ペタンと石畳の白い床に座りこんでいた。


「さて、丸焦げとなったコイツを新しい皿に載せれば!!」


「ノセレバ!?」


「チュウチュウネズミの丸焼きの出来上がり~♪」


「ナフ!?」


 その出来映えに興醒めしたのか、奇声を発して『ササッ!』と、後ずさるキル・ユー。


『ジン、ありがとう』


 そこへ、僕だけにサクラの言葉が割り込む。


「もういいのか?」


『うん、じゃあいくよ! レーザー100!』


『ヒューン、ヒューン、ヒューン!』


 割れていた窓から、素早い光の光線が室内に飛び込み、空中で停止し、キル・ユーにターゲットを絞る。


「いきなり、何だよ!?」


「えっ? これは伝説のレーザー呪文?」


 これには魔法使いのケイタもミヨも、驚きで目が点だった。


 しかし、レーザー呪文とは何だろう。

 その表現からして、闇魔法の正反対の呪文だろうか?


『ザクザクザクー!!』


「ナニ、ギャアアアー!?」


 すると、キル・ユーの体へと動き出し、次々と突き刺さる光の矢。

 その光輝く矢は、苦しみもがく彼の体を包んで離さない。


「ジン、自分が仕留めます。離れていてください!!」


「そうか、例の剣なら」


 ミヨが勇者の剣を振り上げて、キル・ユーの体に横から斬りつける。

 それに反応し、光の矢が刺さったままのキル・ユーは、すばしっこく後ろにかわす。


 その瞬間、僕はマジッ草をペロリと平らげていた。


 身体中に廻っていく、魔力との混濁。

 熱を帯びてくる体は、無頓着だった、ちからの放出を願っているみたいだ。

 これで一時的だが、一端いっぱしの勇者もどきでも呪文が使える。


「フワリミスト!」


 キル・ユーが色々とパニックになっている隙をつき、僕はフワリの呪文をヤツの正面へと突き立てた。


 それを顔面にマトモに受け、キル・ユーの付けていた仮面が半分に砕け散る。


 しまった、まさか顔に当たるとは。

 調子に乗ってやり過ぎたか。


 そのまま風の勢いで、奥の壁に叩きつけられたキル・ユーは、こうべを垂れたまま動かない。


「おい、もしかしてくたばったか?」


 流石さすがに、不意をついての呪文は強烈過ぎたか。

 僕は彼に背を向けて、ミヨたちの元へ戻る。


「待つんデスヨ……」


「キル・ユー、お前……」


『しぶといヤツだな……』と言いかけて、振り向いた僕の言葉が詰まる。

 そこには、あのクールなキル・ユーはいなかった。


 仮面の裏側は、想像とは別の素顔だったからだ。


 つぶらな瞳に受け口の小さなくちびるに、鼻水をダラダラと垂らして泣いている少年……いや、少女か?


「ううっ、悔しいですよ……折角せっかく、大好きな魔王様から貰った、お気に入りの闇の仮面だったのに、ボロボロにしてえ……」


「まあ、そう泣くなよ。お嬢ちゃん」


「何よ、子供扱いしないで。わたくしはもう三十路みそじなんですから」


「そうか、ロリロリなオバサンか」


「何ですか、さっきからその言い分は。あの仮面さえあれば、あなたたちなんかー、キイィィー!!」


 化けの皮が剥がれたキル・ユーが、僕の背中をポコポコと殴るが、蚊の鳴くような攻撃で痛くも痒くもない。

 そうか、あの仮面は、色々と能力がアップするアイテムだったか。

 愛らしいネズミが嫌いだったのも女らしくて、地味に滑稽こっけいだ。


『ジン、今ならアイツを倒せるよ』


「冗談を言うなよ、サクラ。いくら敵でも女には手は出さないよ」


『何、言ってるのよ。その情けがいずれ身を滅ぼすのよ!!』


「ええい、どうしようと僕の勝手だろ」


 半端、投げやり気味にサクラの会話をスルーする。


『ジン、ジンってば!!』


「だあっー、だから、ロリには手を出さないってば!!」


『ジン、だから避けて!!』


 ふと気付いた時にはキル・ユーだった女性は、僕の胸元まで迫っていた。

 その幼い顔とは裏腹に、両手には鋭いナイフが握られていた。


 僕はられると察したが、瞬時の出来事だったので体が動かない。

 ナイフの向かい先は心臓付近……もう、これは手遅れか……。


『オムレツ愛情、あちちのちー!!』


 そう感じて目を瞑ろうとした時、キル・ユーの背中目がけて、炎の渦が襲いかかる。

 我が物顔のケイタが、後ろから攻撃したのだ。


「ギャアアアー、アツツですー!?」


 炎に包まれたまま、ナイフを投げ捨て、その場にうずくまって、あまりの熱さで床をゴロゴロと転がるキル・ユー。


「キル・ユー。いくら女でも、今度、兄ちゃんに手を出したら、これじゃあすまないぜ」


「そうですよ。次はあなたの命がないですよ」


 ミヨたちがキル・ユーを取り囲むと、炎を床で消しきった彼女は、うるりと涙目を浮かべていた。


「な、何ですか。今度会うまで覚えておきなさいですよ!」


 キル・ユーは捨て台詞を吐きながら、その場から逃げるように去っていった。


 あの仮面がない限り、もう少女らしき女性は僕らをつけ狙わないだろう。


 それにプライドの高いあの性格なら、あんな状況でノコノコと魔王城にも帰れないはず。


 僕らは、また魔王軍の猛威を振り払ったのだ。


****


「──このサクラの裏切り者です!!」


「ごめん。ああでもしないと、どうしようもなかったから」


 私は周りの様子を伺いながら、天界から地上に降り立ち、不機嫌そうな佇まいのお姉ちゃんに謝る。

 さっき呪文で怪我をした体と、化粧崩れの顔は、私の呪文で綺麗に治療してあげた。


 私も鈍い女ね。

 初めから、お姉ちゃんも昔からネズミが苦手だった時点で、キル・ユーの正体に気づくべきだった。

 いつもと違った振る舞いに、見事に騙されたよ。


「だからって、光魔法を放つことないでしょう?」


「だから、それなりに手加減したじゃん。()()()()()()()()


 王様として接していた、あの表情と違い、顔が幼く見えるのは、お姉ちゃんお得意によるメイク術(スキル?)だろうか。

 しかし、あれだけ涙を流しても、そのメイク自体があまり崩れないとは。

 王女の時のメイクとは違い、よく見ないと別人みたいだし、この世界は恐るべし……。


「それにしてもさ、何で魔王とつるんでいるの?」


「そうですね。まあ、直結にはお金でしょうか。度重なるモンスターの進軍で、この大陸も観光客が減り、オオゲサ城の経営も赤字ですから。

魔王様直伝の王様に化かす、影武者ダマシの呪文も、結構お役に立っていますよ」


 だから、あの城にコブトリンが居たわけだ。

 あの場所に君臨していたのは、偶然ではなかったんだ。


 城の兵士の服装もメイド服に一新させたのも、これまた衣装作りも得意なお姉ちゃんの仕業だろう。

 コブトリンの趣味にしては、マニアック過ぎる。


 魔王の侵略で城から動けなかったのではなく、勇者が来るのを影武者と代わりながら、そこで待っていたんだ。


「でも正直驚いたよ。まさか闇の呪文が使えるなんてね。それでまんまと騙されたわけだけど……」


「まあ、あの人の頼みだから、しょうがなく教わった呪文ですけどね」


「……ところで話は変わるけど、お姉ちゃん。勇者のネックレスとか持っていたけど、あれは?」


「ええ、歴代の勇者が使用していた物を、魔王様が()()()取ったアイテムというわけです。この世界の勇者を根絶やしにするためです」


「それは勇者を育成してまで、必要なことなの?」


「言いましたよね。例え、今はちっぽけな勇者でも、世界征服の害になるのでしたら、摘み取らないといけませんと……」


 しばらくして、私の表情を探るような目つきになったお姉ちゃんが、ポケットにしまっていた、半分に割れた仮面の先っぽを私に見せつける。


「それよりもサクラの呪文で、この壊れた仮面を直せないでしょうか?」


「お姉ちゃん、今は私たちは敵同士なんだよ。無茶言わないでよ」


 妹なんだから、姉の言うことくらい聞けるよね? みたいな表情で……。


「お姉ちゃん、今からでも遅くないよ。魔王の使いなんて辞めて……」


「サクラ、勘違いしないで下さい。わたくしはあの人が好きでついているのですから。あの人だけに、あの現実世界リアルの罪を被せるわけにはいきません」


「お姉ちゃん……」


「ごめんなさい。もう、わたくしたちはどちらの世界でも戻れない運命なのですよ。妹よ、ここでサヨウナラですね」


 お姉ちゃんは魔王に代わり、自らあの罪を被ろうとしている。

 私は神なのに、どうすることもできないのか。


 そのお姉ちゃんが視界から見えなくなっても、私は悔しさと寂しさを交差させながら、ひたすら声を殺して泣いていた……。


 


 

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