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最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!  作者: ぴこたんすたー
第3章 勇者運命の歯車を変える時

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第14話 真の勇者は誰か

 ──翌朝のよく晴れた昼前。


 屋台で遅めの朝ご飯を平らげた僕たちは、メッキシスコーンの城前にて、入り口を警備し、鋭い槍を構えた門番の一人にアポイントをとっていた。


「あの、すみません、昨日、宿屋から通話で王と相談がしたいとお尋ねした、勇者のジンと言う者ですが……」


「ああ、お話しは伺っています。ですが、王の元へ通すとなると、いかに勇者なるとも、それを証明できる品がありませんと」


「何だよ、オラたちが信用できないのかよ」


「申し訳ございません。最近はモンスターもウヨウヨしていて物騒なゆえに」


「その話は前の城でも聞いたっつーの!!」


 ケイタが床に転がり、初めて僕らと出会った日と同じく、イヤイヤと地団駄を踏んでいる。


「まあまあ、ケイタ君、落ち着いて下さい」


「ミヨちゃんからも何か言ってくれよ」


「ええ、門番さん、これならどうです?」


 ミヨが背中に背負っていた場違いな鞘から、例の大きな剣をするりと引き抜いた。


「これは我が鍛冶屋の王が作っていた勇者の剣!?」


「……どこを見て言ってるんだよ」


「剣の部分に光を照らすと、我々の関係者しか解読できぬ文字を彫っているのが分かるのです。一種の暗号みたいな物ですね」


 神様とは、もしやサクラのことだろうか。

 あのお嬢なら、何でもやりかねない。


「ふーん、暗号か」


「勇者が使命を終え、次の勇者へ引き継ぐために、前勇者がその剣を掲げ、天の神様に願いを込めて、その想いの文字を転写するのです」


 確かに熱血な太陽にかざすと、剣の側面に、それらしき文字がクールに彫ってはいるが……。


「ふーん……。それで何て書いているんだ」


「パイナプルプルです」


 一瞬、頭の中がリセットされ、真っ白な大草原となる。


「それはどういう意味だ?」


「巨乳のお姉さん、おっ◯いユラユラ万歳と」


「なはっ!?」


 予想外の返答に、正当な声が裏返ってしまう。


「前回の勇者は、さぞかしエロかったのでしょうな」


 親父、ふざけていないで、どうせならもっとマシでまともなワードを思いつけ。


「もしかして僕が、この剣が装備できない本当の理由は……」


「そうですね。前回の勇者の凝り固まった性癖な仕業しわざで、女好きの剣に成り果ててしまったようです」


 今、僕に関してのミステリアスな謎はあっさりと解けた。


「……そうか。皆の衆、問題は解決した。今から撤収する」


「兄ちゃん、何、賢者モードに入ってるのさ」


 すべてを投げ出し、逃げるように横切ろうとした僕の服の裾を、ケイタがグイッと握ってくる。


「ちょい、どこへ行くのさ?」


「ケイタ、離せよ、もう万事解決じゃないかあぁー!!」


 僕もケイタと同じように床に転がり、赤ん坊のように駄々をこねてみた。


 そして、判明したことがある。

 地べたは冷たくて固いし、何より気持ちが虚しい。


「ジン、まだ分からないじゃないですか。話だけでも聞いてもらいましょうよ」


「その勇者の剣を装備してるお前に言われたくないな。これ以上、強い武器がどこにあるんだよぉぉー!!」


「分からないぜ、兄ちゃん。世界は広いようで狭いからな」


 ケイタ、子供のようで、意外と大人な理論だな。

 その分だと、いくぶんかの歳をとり、人間ではなく、さらに上のあやかしの存在かも知れない。


「取りあえず、ケイタ、人間かどうかの確認のために身分証明書を見せろ」


「兄ちゃん、何、意味不明なことを言ってるんだか?」


「失礼な、僕はいたって真面目だぞ」


****


「……はあ、頭が痛いですね」


 二人のいがみ合う幼稚な会話に、今日も頭を悩ませる自分。


「大変ですね。あの、いつもあんな感じなのですか?」


 それを知ってか、優しく気遣いをしてくれる、中年のような顔つきの男性の門番さん。


「ええ、分かりますか?」


「門番歴20年の身として、何となくの想定ですが……。お嬢さん、これは難儀な冒険になりそうですね……」


『そうなのよ、だからあなたが代わりに彼らと冒険しない?』と、言いかけた喋り口を止める自分。


 門番さんには何の罪もないのだから──。


****


「──王女、例の勇者御一行を連れて参りました」


 二人の若い男性の門番さんが、未だに喧嘩を続けるジンたちを引きずりながら、王の間へと連れてきた。

 こっちを見つめながら、茶色い肌を露出させた自慢の肉体を見せつけながら……。


 女子が、みんなムキムキのマッチョ好きとは違うんだよ。

 うぷっ、もう気持ち悪くて吐きそう。


 それにしてもオオゲサ王国に続き、この城でも王女とは。

 どうやらこの世界では、モジャモジャな髭を生やした、ご老体の王様には、中々お目にかかれないらしい。


「よろしい、下がりなさい」


「はっ!」


 凛と響く少女のような声量で、筋肉自慢をしていた門番さんを引き下げる。

 どこかで聞いたような女性の声だけど……。


「ミヨ、久しぶり。本当に、この世界の勇者になったのね」


 壁に沿って仕切られた、白いカーテンに隠れたままの大きな影が揺れる。

 影は玉座に佇んだまま、小さき自分に向けて、静かに語りかける。


「その声は、やっぱり鋼音はがねお姉ちゃん?」


「そう、ハガネよ。元気にしてた?」


 カーテンの先の女性の頭が少し揺らぎ、自分に微笑みかけているのが、こちらからでも分かる。


 どうして、お姉ちゃんはこんな場所にいるのだろう。

 どうして、あの日から自分たちの住む、リアルの家を抜けたのだろう。


 聞きたいことは山ほどあった。


「大体の話は、入り口にいる門番から聞いたわ。どう、例の剣は使いこなせてる?」


 しかし、そんな僅かな会話もさせないように、向こうから話を切り出してくる。

 お姉ちゃんは昔から要領が良くて、口が上手かった。


「ええ、おかげさまで念願の勇者になれましたから」


 これでもかと、精一杯に胸を張って答える自分。

 さあ、お姉ちゃん、存分に自分を誉めてよ。


「いいえ、それは違うわ。今回の世界では勇者は二人いるのよ」


「……えっ、それって、

どういうこと!?」


「こらっ、そんなふぬけた顔をしない。折角せっかくの美少女が台無しよ」


 なぜか、お姉ちゃんサイドでは自分の表情まで丸分かりのようだ。

 どういうカーテンの作りかな。

 ぜひ、我が家にも欲しい。


「そいつはごめんごー!」


 そこへ、自分の隣から飛び出してきて、滑稽染こっけいじみた発言をするジン。


 いけない。

 すっかり彼の存在を忘れていた。


「オラもいることをお忘れなく……」


 後ろでは忘れさられていた2号機のケイタ君が、顔に無数の引っ掻き傷を負って、床に突っ伏していた。


 何なの、猿と猫の大いなる喧嘩だったの?


「そうよ、そんなことよりお姉ちゃん、もう一人の勇者って誰なのですか?」


 あれ、横に存在していたジンの姿が、忽然こつぜんと消えた?


「きゃあああー、お願いだから、それだけはめて!!」


「よいではないか、殿方の前では()()()()を見せても!」


 いつの間にか、ジンがカーテンの向こうにいるお姉ちゃんの前に迫り、何かしらの物を強引に食べさせようとしていた。


「ジン、なにお姉ちゃんに、キムチを食べさせているのですか!!」


「いやぁ、王女の仕事も大変だろうから、精をつけさせてあげようかと」


「いやあああ、だからニンニク臭いのは止めて!!」


 これでは話にならないのでカーテンを潜り、お姉ちゃんに付いている悪い虫? を引き剥がす。


 この世界でもお姉ちゃんは可愛く、スタイルが良くて美しかった。


「お姉ちゃん、それで勇者って?」


「だからソイツがもう一人の勇者なのよ!」


 その怯えたお姉ちゃんがジンを警戒し、自分の背中に隠れながら、堂々とした彼を震えた手つきで指さす。


 またまた、ご冗談を……。


「だから、ミヨはソイツに色々と教える勇者の教育係であって、真の勇者はあの変態なのよ」


「いやあ、照れるなあ。勇者に続き、変態の称号まで手に入れたよ」


 タジタジのお姉ちゃんを言いくるめて、いかにも満足げに笑顔を見せるジン。


「……ジンはちょっと黙ってもらえますか」


「おおっ、ミヨ、顔がこわっ!?」


「何ですか、今ここで、この勇者の剣で地獄に堕ちたいですか?」


「あわわ、痛いのはごめんだね」


 勇者ジンがそそくさと、お姉ちゃんから離れる。


「その変態が首に下げた、王族と勇者の関係者だけが分かる『勇者のネックレス』を付けているのが、何よりの証拠よ。あれは選ばれた者しか装備できないの」


「お姉ちゃん、自分に隠れながらの会話はよして下さい。仮にも国をおさめる王女ですよね?」


「だって、アイツ変態なんだもん」


「それでもきちんと向き合って下さい」


 自分のその言葉に後ろめたさを感じて、前線におもむくお姉ちゃん。

 心で強い決意を持ち、ジンに対しても冷静に応対するようにしたみたいだった。


 そうそう、見てくれはあれでも、仮にも世界を救う勇者が相手だもんね……。


****


「それで、この勇者が装備できる武器の話だけど、正直……」


 何もかもミヨにクリソツな姉の次の答えに、ゴクリと生唾を飲み込む僕。


 どれほどまでの、強力な武器が手に入るのだろうか。

 今、運命のジャッジは開かれた。


「……ないわー!」


「ほがっー!?」


 その残酷な結果に奇声を上げて、ずるずると床に滑り落ちる僕。


「非力な僧侶でも装備可能なイブニングスターも無理だったんでしょ。この辺じゃ、あの武器を上回る攻撃力のある武器なんて作れないわよ」


「だから何で、あれが装備できないんだよ?」


「ちょっと待ってね」


 ハガネが黄色の法衣から出した、使い古しの双眼鏡で僕を覗く。


「ああ、やっぱりアナタ、呪われているわ」


「呪われてる?」


「ええ、すべての武具を受け付けない呪いね。術者をどうにかしない限り、装備は無理よ。誰にやられたか、記憶にないかしら?」


「うーん、誰って言われてもなあ?」


 攻撃なんてありすぎて、誰からの攻撃か、全く身に覚えがない。


「いくら鍛冶屋でも、その相手が分かるまでは、こちらからもどうしようもならないわ。

さあ、お仕事の邪魔よ。用件は済んだのなら、さっさと出ていって」


 ハガネが僕たちを、餌に群がったハエのように追い払う。

 これ以上粘っても、何も進展はないだろう。


 僕らは武具の鉱石を布で磨くハガネに背を向けて、メッキシスコーン城の王の間を後にする。

 

『──プツン!!』


 その束の間、王宮の全照明が消えた。

 だが、窓から見える景色は暗闇ではなく、賑やかな電飾に染まっている。


「まさかの王宮だけが停電か!? みんな無事か?」


「無事も何も、今は昼前で照明が無くても、部屋は明るいですから」


「それもそうだな。お偉いさんたちの無駄遣いにも困ったもんだ」


「いいえ、昼前はできるだけ電力は抑えているはずですから、人為的にブレーカーをおとしたとしか考えられないです」


 鍛冶の最中だったハガネがこちらに寄ってきて、赤い竹状の懐中電灯で、窓から離れた薄暗い奥の部屋を照らす。


「となると、何者かが意図的にか?」


「フフフ……そうデス。ご無沙汰デスネ」


 そこへ流れ込む、前方からの男と見られる片言の声。

 僕は即座に反応し、距離を保つために、その声の主から、後ろへと飛び退いた。


 廊下へ通じるドアの前に、()()()かかる長身の影。

 そこには、あのキル・ユーが待ち構えていたのだった。



 

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