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蒼ノ旅人 ー蒼風のヘルモーズー  作者:
『オルカストラ』編〈1〉
85/139

第77話 VSアロンズ《終》

地の文を修正して再投稿

「ズウゥゥゥッッ——ど素人のくせして、まあまあ重てえじゃねえかぁァァア」


 最大限まで高められた気合い。

 それで放たれた渾身の前蹴りは、アロンズの防御と回避を超えて、奴の腹部に炸裂した。

 枯れ草に火がついてしまいそうなくらい、熱すぎる空気を肺から吐き出す。

 噛み締められた奥歯から大量出血してしまっている僕は、口端から血を垂らしながら、リミッターが外された影響で『ミシミ』シという奇怪な音を奏でる肉体を落ち着けた。


「坊主! よくやったァアッ!!」


 強烈すぎる僕の一撃。それを認めたロウさんは、声を張るほど絶賛する。

 自身の身体能力と戦闘技術。

 それらがアロンズに劣っていると即断したロウさんは、完全に防御を捨てて攻めに傾倒。

 その『致命傷以外は笑って飲んでやる』という、この上なく太々しい。

 否、頼もしすぎる『胆力』をもって、力任せに剣を振るっていた彼に対し。

 膂力では一歩劣りつつも、こと敏捷においては若干『上』を取ることができている僕が、ロウさんの致命打になりうる攻撃の間になんとか割り込んで捌き、それで一瞬の余裕ができたロウさんが果敢に攻めるという、ギリギリすぎる戦闘ローテーションで戦いの様にはなっていた。

 しかし、僕達が『二対一』という絶対的な数の有利を取っているにも関わらず、アロンズは至って冷静に、余裕振る表情を崩すことはなかった。

 今の前蹴りもその重さで呻くような表情を浮かべていたが、すぐさま余裕の笑みを顔に貼り付け、若干の苛立ちに染まった目を、緊張で滂沱の汗を流してしまっている僕達に向けてくる。

 牽制するようなその視線を『殺意の眼光』で相殺させた僕は、蹴りを食らって崩れていた体勢を立て直したアロンズに肉薄し、左脇腹に大きく溜め込んだ強力無比な『袈裟斬り』を放つ。


「フウゥッッッ!」


 その袈裟斬りを冷静に見切ったアロンズは、槍の石突き部分を僕に向けて、迫り来る剣身の下側に柄を乗せる。瞬く間もない一瞬で行われたアロンズの一連の動きに対し、


(まさか……っ!) 


 と眉尻を上げた僕が見たものは。


「っっっ!?」

 

 肩に回された槍柄の上で斬撃を『走らせる』という、奴が放った槍撃を防ぐために僕が見せた、アエルさんから盗んだ剣の道を紛うことなき『槍の道』へと昇華して、アロンズは自身の命が関わっている緊迫した状況で、華麗なまでに、息を呑んでしまうほに、完璧に防ぎ切った。

 

「グヒハッヒャハフッフア——ッッッ!!」 


 僕が放った袈裟斬りは槍の道を進んで空に昇っていき、完全に攻撃という意味を消失させる。

 そして、空へと昇っていった剣を。身を守るための武器を。まだ『引き戻せていない』僕のガラ空きの胴体を見たアロンズは、グッと邪悪な笑みを噛み締めて、その殺意を最高まで増幅。

 しかし至って冷静に、僕の高い格闘センスを警戒しながら地を蹴って背後へと飛び去り、防御が取れていない僕に向けて『ロンに投げようとしていた短刀』を豪速で投擲した。

 僕の無防備な喉元を狙って飛翔してきたのは、刃渡り七センチ、横幅二センチほどの禍々しい濃紫と濃紅色の超小型の短刀。

 正確にそれを視認した僕は、奴が浮かべている勝利を確信した笑み、そして猛速で突き進んでくる短刀の配色を見て、毒器の可能性が高いと即座に判断。

 喉に食らうのは不味いと、咄嗟に自由が効いていた左の掌を短刀の進行軌道上に構える。

 万が一、僕が行き着いた想像通りに、飛翔してくる短刀に毒が込められていた場合。

 僕は今日この日を以て、左腕が使い物にならなくなってしまうだろう。 

 という冷静な思考と『コイツに勝てれば、両腕が使い物にならなくなっても無問題』との行き当たりばったりな激情が込められている心の声を聞き入れて。目頭にグッと力が入った、決死の覚悟が決まった眼光をアロンズに向けて、僕の一生を脅かしている短刀を掌で受け止めた。


「ヅウウゥゥッッッ——!!」


 アロンズが投擲した猛速で飛翔していた短刀は、命を守る選択をし、防御のために構えられた僕の左掌を貫通して、刃と柄の境界線まで深く突き刺さり、その動きを停止する。

 負傷した左手の血肉が、まるで熱湯につけられたみたいな痛みを発している。

 僕は顔一面を痛苦で歪めつつ、掌に突き刺さっている短刀を勢いよく引き抜いて、アロンズの手が届かない遠距離まで放り投げた。

 これは単に刺されただけの痛みじゃない。

 アイツが攻撃に使った短刀には、間違いなく毒が仕込まれていたはずだ。確か毒には即効性とか遅効性——神経毒とかなんだとかの色々な種類があったはず。これは、この毒はなんだ?

 

「グヒハハッヒャヤッ! バジリスク・ウッドの猛毒が塗り込まれた武器だぜ!? 食らっちまったなぁッ!!」


『バジリスク・ウッド』

 過去『クラウディオ帝国』の貴族を暗殺する際に使われた、腐食性の猛毒。

 解毒を行う意味が実質皆無になってしまうほどの、寸秒発動の即効性。

 毒の効果は、ほんの一滴でも触れてしまった部位を即座に『腐食』させ、肉体から地面に落とすというものである。

 この毒が生み出されたのは『モクハミアゴムシ』という樹木を根まで食い荒らしていく害虫の大量発生に起因している。

 根絶されかけていた名も無い樹木が、種の絶滅を防ぐための自己防衛として虫が吸う樹液に分泌しはじめたのがこの毒であり、その毒を手に入れることで害虫に襲われなくなった一本の樹木が、鼠算式に増加していった結果、同種を食い荒らされて禿げ地になりかけていた森林は、幾星霜という長い歳月を掛けて、生物が寄り付かない『絶死の森』へと変貌を遂げたのである。

 その名も無い樹木に『バジリスク・ウッド』なる名が付けられた経緯。

 本名不詳、通称『バジリスク』という暗殺者が貴族暗殺を成功させ、当のバジリスクは暗殺に使った猛毒で、殺害した貴族と同室で自死した

 という、ある種の『伝説』から付けられた名なのであった。


「…………ふッ!」


 そんな昔々の伝説のことなど知る由もないソラは、アロンズに勝利を確信させてしまうだけの超が付く危機的状況にあった。

 しかし、勝利の笑みを満面に浮かべていたアロンズは次の瞬間、自身の視界に広がっている目を疑うような光景に対し、驚愕で目を見開いた。

 超即効性の猛毒が塗り込まれた短刀を左の掌に直撃させたにも関わらず、全くと言っていいほど症状が進行しない、刺し傷から血を流しているだけの掌を晒し出しながら、殺意を全開にして向かってきているソラに、アロンズは驚愕を露わにしていた。


「全然に効いてねえんだよ馬鹿ガアアッッッ!!」


「ギャヒヒャハハハ!! そうだよなぁ! そうこなくっちゃなあァァァァアアアアア!!」


 僕は自身の膂力に自慢の脚力を組み合わせた高速の助走を上乗せした超高威力の剣突を、こちらに凄まじい殺気と目力で迫り来ているアロンズに向けて問答無用で撃ち放つ。

 騎乗した馬を駆りながら矢を射るかのような、騎手然とした僕の剣突は、先制した時以上の威力を秘められていた。

 僕は自分が考えていた、そうだろうと思っていた『最大威力』が、自分が勝手に決めつけていた張りぼての天井だったことを悟った。

 まだ上に行けるのだという実感と、コイツには負けられないという意地が、僕が背に引いていた弓を——剣突を爆進させる。

 

「死ねッ、アロンズゥゥゥゥゥゥウウウウウッッッ!!」


「テメエが死にやがれエエエエエエエエエエッッッ!!」


 心臓に向かって突き進む剣突に対し、アロンズは右手で持っていた槍を背に溜めて、僕の攻撃を倣う動きを取った。

 その動きに目を見開いた僕は、負けるものかと大声を張り上げ、僕の叫びに同調するように、アロンズは身に纏う殺意を限界以上まで発散する。

 そして『僕以上』の膂力と同等と言っていい脚力の助走から放たれる『槍突』と、僕の最高威力の『剣突』が——真正面から衝突を果たす!!


「「————ッッッ!!」」


 僕とアロンズが同時に撃ち放った全力全開の刺突攻撃の衝突は、両者一歩も引かない完全なる互角で継続し続ける。

 このまま順当に行けば、二人の拮抗した攻撃の結果は『相殺』という形で無意味な終決をすることが想像に難くはなく。

 それをまったく『良し』としていない僕とアロンズは、奥歯を噛み砕くギリギリの力で噛み締めながら、武器を持っている右腕の皮膚が急激に増幅された筋量で引き裂けるという自傷をしてしまうほど膂力を限界以上の引き出して、お互いに相手を押し潰すための死力を尽くした。

 そして、接戦した勝敗の結果を先に知ってしまったのは。

 知らされてしまったのは目を見開いた僕の方であった。

 それは、アロンズが押している邪槍の矛先と打つかり合っていた、僕の鏡面剣の鋒がパキッという音を立てて、小さくも確かな罅を生じさせてしまったからである。その極小だった罅割れは、時が経つごとに、死力が増し合うごとに大きく、音を立てて剣身の中程まで進んできた。


「グフッ——グフヒャハアァァァッ……ッ!」

 

 まるで、僕の足元に広がった地割れが、無謀な戦いに臨んでいた矮小な僕の全身を飲み込もうとしているかのような。

 小さくとも巨大な『罅割れ』を目と耳で認めたアロンズは、学習することのない、何度目ともしれない勝利を確信した凄惨な笑みを浮かべた。

 絶望と敗北を知らせる乾いた音色が僕の耳に届く。

 しかし、すでに最悪の絶望の味を知っている僕が この程度の些事で怖気付く訳がなかった。

 僕は今まで一緒に戦ってきた鏡面剣を失うことを恐れず、ただ内心でごめんと謝りながら、柄をグッと握り締め、前へ前へ。

 アロンズの槍突に負けないように力を『前』へと向かわせる。

 そして視線を合わせた僕は、ニッと不敵な笑みを浮かべた。

 武器の性能差で完全有利を取っていたアロンズを瞳に映す。僕と視線を交差させたアロンズは、怪訝な風に片方の眉尻を上げて、口を開いた僕の余裕を感じさせる言葉を聞く。


「————【雷砲】ッ!!」


「!? テメ——ッッ!?」


 アロンズの目前に向けられた『左人差し指と中指』から、バチバチッという音と共に、静電気のような光が明滅する。 

 死闘の緊張で爆発しかけていた心臓から送られた魔力が、僕の左手の二本の指に集中。

 それが記憶から引き摺り出された空を駆け巡る稲妻の形——になること一度もはなく、僕の指先で明滅していた雷光は一際強い発光をした後、その光輝を何事もなく消し去ってしまった。


「ハハハハハハハハッッ!! 魔法は一度も使えたことねえんだよ、毒のお返しだバーカ!」


 剣突との競り合いを終始押していた邪槍を引いて、緊急回避を取ってしまったアロンズに、僕が撃ち放つことができなかった稲妻が直撃することは万が一にも有らず。

 十五メートルほど先まで、余裕の笑みを崩した表情で汗を散らしながら飛び退いたアロンズを見て、苦肉の策で槍を引かせることに成功した僕は馬鹿にしたような笑い声を上げた。

  

「………………殺す。殺す。コロスゥゥゥウッッッ!」


 僕のブラフに引っ掛かって顔を真っ赤にしたアロンズは、大型の肉食獣が出す唸り声のような、怨嗟に満ちた声を喉奥から鳴らし始めた。

 それに対し、僕は焦る心情を奴に読み取られないよう、余裕の表情を崩さない。

 もし、あのまま勝負を続けていたら、間違いなく、僕は槍に貫かれて絶命していただろう。

 風の加護の力を使える余裕が存在していなかったあの状況で、僕が死なないようにするにはこうするしかなかった。

 すごく悔しいし、こんな卑怯なやり方は『恥』でしかないと正直に思うけど。

 けど、どれだけ汚泥を被ろうが、この勝負で負けることだけは許されない。

 僕がコイツに殺された場合、次に殺されるのは共闘しているロウさんで間違いだろう。

 それに彼を殺したら、次はロンに違いない。

 

 僕は彼等を生かさなければならない。

 

 この勝負で僕に許されているのは相打ちか勝利の二つのみ。

 絶対魔殺の下らないプライドなんて今は全く必要ない。

 今この場で必要なのは、清濁併せ呑む柔軟な行動と思考。

 そして、コイツに何がなんでも勝つという戦闘の結果だけだ。


「茶髪——テメエだけはズタズタにしてぶっ殺す。いいな、逃げんじゃねえぞッッ!!」


 溢れ出す止め処ない殺意に、一気に燃え上がった凄まじい怒気を、アロンズは全身から立ち昇らせて。一歩前へ、僕の方へと地を蹴って——その地面を爆砕させた!!


「語尾が間延びしなくなってんぞ、クソ野郎ォォオオオオオオオオオオオオッッ!」


 僕もアロンズの行動に呼応するように声を張り上げ、勢いよく蹴った地面を爆砕。

 超速で肉薄する。

 あっという間に十数メートルという距離が埋められて、恐らくこれで最後になってしまうだろう『超近接戦闘』が開始した。


「グィィィイイイイイイィィィィアアアアッッッ!!」


 先手を取ったのはアロンズ。奴は右手に持った槍を乱暴に回転させ、豪速で旋回する矛先と石突で僕の全身を狩る。

 それを受けても問題ないものと、受けると致命傷になるものを即座に取捨選択した僕は、頬や首筋に裂傷を負いながらも果敢に攻めを続ける。

 防御を捨てて、攻め以外を最低限にした両者の鬩ぎ合いは白熱の一途を辿り、完全について行けなくなってしまったロウさんは呆然と戦闘の行く末をも守ることしかできなくなっていた。

 ピキピキと激しすぎる剣戟に打たれ続け、僕が持っていた鏡面剣が痛みを訴えるような悲鳴を上げる。

 それを『ごめん』と耳を塞ぎながら、自分の叫びで押し潰しながら、一閃、十閃、百閃。

 凄まじい怪力同士の両者は武器を振り続け、灰色に染まった空に爆音を響かせ続ける。 


「ガアアアアアアッッッ!!」


 激戦としか形容できない凄まじい剣戟。それを繰り広げていた僕が放った強烈な左ボディブローが、隙を晒していたアロンズの右肋に直撃。奴に苦悶の声を漏らさせる。ドグウッ! という重低音と共に、僕は確かなダメージを与えることに成功し、余裕の無い笑みを噛み殺した。


「ヅウウウウッ!? っっっ〜〜〜〜〜死ねええクソガキがあああああッ!! 【飛剣】!!」


『飛剣』

 カラスがトウキ君と戦っていた時に使用していた、斬撃を飛ばす『魔法』の名称。

 標的である僕との距離が約十メートル以上離れている。

 あの時の『飛剣・大翼・黒』は、たったの五メートルという近距離から放たれていたせいで、瞬く間もない一瞬でトウキ君に到達していた印象だった。

 奴が使う飛剣はどんな速さで飛翔してくる? 剣速に比例する可能性が高い。

 どれだけの威力が込められている? 槍での斬撃と同等と見ていい。

 硬度はどれくらいだ? あの槍ほどではないはず。

 受け止められるか? 受け切れるのか? できるのか? このまま死ぬのか? 

 いいや、死ぬわけにはいかねえ。

 背後にはロウさんが居るから下がるわけにもいかない。下がったところでアロンズが見逃すわけがない。つまり、僕の斬撃で『相殺』するしかねえってことだ!!


「坊主っ!! 受け取れえええええええっっ!!」


 この戦いでは戦力にならない英断し、雑木林の方へと逃げるように下がっていくロウさんが投げた、彼が使用していた『剣』を受け取った。そして——


「【金剛——烈進】!!」


 アロンズの掛け声とともに振り抜かれた、魔力を纏った槍の矛先から、魔力で生成された白金の輝きを発する斬撃が放たれる。

 凄まじい速さで僕の方へと飛翔してくるそれに対し、僕は一歩も引き下がることはなく、ただ両手に持った剣を、全神経を目と両手に集中させた極限の状態で構えた。


「死にやがれれエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!」


 アロンズが発した、僕の死を宣告する叫びと同時に、飛翔してきた『魔法斬』は僕を斬り裂かんという意志を確固としたようにその光輝を増す。

 閉じることができない目を焼かんばかりの輝きを放っている魔法斬に、僕は完璧なタイミングを持って、右手に持った鏡面剣を振り翳した!


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」


 渾身の魔法斬と、僕の渾身の斬撃は互角と言っていいほどに拮抗する。

 しかし、僕の戦意を断つほどの切れ味ではないと、僕は食い縛っていた唇を吊り上げて、鏡面剣を振り切った!!


「なっ……ググッッギガガガャギガッ!? マダダアアアア!! 【飛剣・金剛】ッッッ!!」


 アロンズは言葉になっていない狂声を上げながら、再び、僕に向けて魔法斬を撃ち放った。

 それを魔法斬に真正面から打ち勝った余韻に浸っていた僕は、不愉快そうに眉間に皺を寄せつつ、ゆっくりと口を開く。


「二度はねえよ——馬鹿が」


 凄まじい速さの飛翔で迫り来る魔法斬を『見慣れた』と言わんばかりの表情で、僕はロウさんから受け取った剣を持つ左腕を霞むほどの速さで斬り上げる。

 すると、僕が放った『風』が纏われている斬撃は魔法斬の腹に直撃し、魔力で作られている刃を『真っ二つ』に切り裂いてしまった。


「〜〜〜〜〜〜っ!? このっ、クソゴミ野郎おおおおおおおおおおガアアアアアアッ!!」


「テメエがだろっ、アロンズゥッッ!!」


 まさかの攻撃結果。

 自身の『最大威力の攻撃』を超えてのけた僕を。

 すまじい成長速度を堂々と見せつけてくる僕を。

 愕然とした表情で見ながら固まっていたアロンズは、僕が行った『肉薄』への反応を寸秒だけ遅らせてしまった。それが決定的に、この勝負の『勝敗』を決する。


「死ねエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!」


 アロンズの全力の薙ぎ払いを、地面スレスレの前傾姿勢で回避に成功した僕は、纏っていた風の膜の腹部分のみを爆発させて、うつ伏せになりかけていた体勢を強引に起き上がらせる。

 そして薙いだ腕を今だに『引き戻せていない』アロンズのガラ空きの腹部に向けて、僕は暴風を握り締めた拳を突き出し、思いっきりめり込ませた——!!


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッゴオオオオエエエッッッ!? テッメ——」


「五月蝿えよ——ゴミ野郎。テメエは、この村から消えやがれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ!!」


 僕は、めり込ませた腹部に押し当てる形で、掌に溜め込まれていた暴風を爆発させた。

 村一帯を吹き飛ばすほどの威力が込められてい風に、

『方向性』

 を持たせた一撃を真面に食らってしまったアロンズは、風の加護の『超暴力』に血反吐を吐きながら、決河の勢いで遥か南方にある『樹海』へと吹き飛ばされていく。


「…………」


 もう奴は僕達を追っては来られない。そう確信する。掴み取った勝利への余韻に浸ることなく、僕は皆が向かった北方へと足先を向けて、駆け出した。

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