成長してゆく機械
過去は、もう少し続きます。
もしかしたら、この章は分けるかもしれません。
一つの章で終わらせたいので、頑張るつもりですが…長引きそうなら分けようと思っています。
私は欲に惹かれるままに、一歩踏み出しました。
ゆっくり、ゆっくりと情報を処理しながら。
「隆様、黙示様、あの方は人間と違うようですが」
「ん?あぁ、彼等はドワーフだ。
なんでも魔族から逃げていたらココにたどり着いたらしい」
「魔族から逃げてですか…魔族は好戦的なのですね」
「そういう魔族の種も居るらしいですよ。
でも心配はいりません。ドワーフの方々の言う魔族は、もう来ないので」
「そうなのですか?黙示様」
「はい」
私の質問に、隆様はドワーフの方々に手を振りながら答えてくれました。
振り返してきているドワーフを見ながら、隆様の言った言葉から不安を感じていると、それを察したのでしょうか…黙示様が滅多に見ない柔らかい笑みを浮かべながら答えてくれました。
それからも私は初めて見る種族や建築物などの説明を二人に求め、欲が満たされていく感覚に酔いそうになっていく。
いや、私はもう欲に溺れている。
見渡せば、私の好奇心が掻き立てられ続ける。
そう、好奇心が。
機械の私が自分に'好奇心'なんて言葉を使っていいものなんでしょうか…。
「好奇心が擽られるだろ?」
「興味は惹かれます」
「それが好奇心だ」
私の模擬思考を察したかの様に隆様は、嬉しそうに笑いながら教えてくれます。
「さて、好奇心旺盛な茜さんは隆先輩に任せて、僕は今日はこの辺で帰りますね」
「お?もう帰るのか?」
「はい。
まだまだ用事が終わらないので」
「忙しい奴め!
そんなにお前がせかせかと動くなんて…やっぱり女か。
くぅ~、俺の事なんてもういいんだな!いいんだいいんだ、女がいるなら優先してやれっ」
「そうですね。そうさせてもらいます。
次、来た時には上の方を作っていきます。隆先輩は見取り図と、そうですね…そろそろ名前でも決めてください」
「お、ついに横じゃなくて縦を伸ばしていくんだな。
ん?おい!今、女を否定しなかったな!」
「否定しても肯定させようとしてくるでしょ。
ちょっと、急ぎなので今はそうしておきますよ」
楽しそうに話す隆様を放置して黙示様は足早に去ってしまいました。
教えて欲しい事がまだあったのですが…また、次の機会ですね。
「隆様」
「一体何をしているのやら。
まぁいいさ、その内に教えてくれるだろう。
さぁ、行こうか茜。その好奇心が止まないうちに」
それから少し哀愁漂う隆様の背中を追い、ぽつぽつと建築物が並び始めている所を周りました。
気になることを聞けば、隆様は嬉しそうに答えてくれます。
多種多様な種族や人間とも会話をしました。
個々の価値観の違いや求めるモノが違い、私の情報に次々と新しい事が記録されていきます。
欲に惹かれ気付くのが遅れましたが、帰る時に隆様の家を見た時、その大きさにも驚いた反応をした私を見て隆様は言いました。
「俺達の家は、もっと大きくなる。
いまでもそうだが…一時は、ここが一番でかくなる予定だ。
そうすれば、この周りにも色々と集まってくるだろう。
茜、きっともっと知りたい事が増えるぞ」
私よりも黙示様よりも少し身長の高い隆様は、私の頭を軽く撫でると家の中へ戻り、子供達に出迎えられ、そのまま遊び始めます。
またエラー。
減ったはずのエラーは、今日で増えました。
ですが、始めの頃よりは悪くないエラーな気がします。確率などではなく、そんな気がします。
その日以降、黙示様は長い期間来ることはありませんでした。
次に来た時は、私が初めて外に出た日から八年程経った頃。隆様の家が周囲より少しだけ小さくなった頃。
その間、私は何度も外へと足を運び、変わり続ける周囲を歩き学び…更に知識欲は大きくなっていました。
そんな日、今日も一通りの家事を増え成長した子供達と終えると家に取り付けられた呼び鈴が鳴った。
来客を告げる音を耳にすると、まだ来たばかりの子供達を連れ成長した子供達と一緒に出迎えに行きます。
面倒くさがって来ない子達も居ますが、大人数な為に仕方ないとも思います。
今回は、最近来た子達五人と五年前程から居る子達六人で出迎える事になりそうです。
子供達と玄関に向かうと、昨日遅くまで起きていた様で朝食は食べていなかった隆様が居ました。
隆様は、先に扉を開けお客様と話しています。
子供達が隆様に気付いて我先にと走って駆け寄ると、お客様は目線を合わせる為に屈み挨拶をしています。
「随分と増えましたね」
「あれから結構な。
この近場だけでもどんどんと増えているみたいだ」
「他の所もそんな感じですね。
拡張は続いているみたいで、以前行った所に向かおうとすると倍の時間が掛かったりしました。
まだ、落ち着くには時間が掛かりそうです。
それと、この子もお願いしていいですか?」
「この子は?」
「少し離れた所で一人倒れていました。
僕は面倒を見ることができないので、お願いしたいんです」
「衰弱してるな。
怪我も結構目立つ…とりあえず治療からだな。
茜!この子の治療を頼んでいいか?」
会話していた声から、すぐに黙示様だと分かりました。
古くなった記録から黙示様を思い出していると隆様に呼ばれ、少し急ぎ近寄れば隆様は女の子を抱えていました。
「わかりました。
消毒液が少なくなっていますが、使っても?」
「あぁ、もちろん。
できるだけ傷は残らない様に治療してあげてくれ」
「食材や医療用具の心配はしなくていいですよ。
僕が持ってきました。
会って早々すいませんが、お願いしますね」
黙示様の後ろには一人では抱えきれないであろう量の荷物が積まれています。その中から、一本消毒液を渡してくれました。
一瞬、久々に見た黙示様に違和感を感じましたが、優先すべき事はそれではない。と思い直し消毒液と女の子を受け取り治療用の部屋へと移動する事にしました。
後ろでは、初めで会う黙示様に興味津々の子供達が黙示様を質問攻めにされている様子を隆様が楽しそうに笑っていました。




