表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混世界  作者: 慧瑠
彼女が見た夢
106/140

長いようで短い月日。

もう少し過去編が続きます。

黙示の話しと言いながら、茜が記憶している事なので隆との経過が多くなりがちですが…。

まぁ、黙示の事は次の機会もあるので…ね?

その日から、私と隆様の生活は始まりました。

時々、黙示様が来る事はありましたが、すぐに帰り長居する事は滅多にありませんでした。


私は、隆様から物事を教えてもらい合間で家事をする日々。

変わらぬ日々が続いている中で、変わっていく事もあります。


「ママー、お腹減ったー」


「御飯を食べる前に、汚れを落としてきなさい」


「はーい」


隆様達より若々しい声の人間が元気に厨房を出て行く。

隆様が住んでいるこの場所…不思議な事に徐々に拡張されお風呂などが増えていきました。

そして、変わっていく事はそれだけではなく…


「ママー!ちあきがおもちゃをかしてくれない!」


「ちがうよ!!まーちゃんさっきまで遊んでたんだもん!」


「千秋もマーリンも仲良く遊ばなきゃオモチャは没収します」


「「だめー!仲良くするからダメー!」」


今度は、私に設定されている声よりも若々しい声の二人の人間がコロコロと表情を変えながら話し厨房から出ていく。


そう、隆様の家は拡張してくと共に人間が増えていく。

どこから現れたのか…小さい人間、子供と呼ばれる若い者達が増えています。

そして、彼等は私の事をママと呼び、隆様の事はパパと呼びます。


記録されている情報から、ママとは母と同意義であり親を指すようです。

そして、パパとは父と同意義であり、ママと対になる親の事と認識し確認できています。


(こういうのを、外堀を埋められている。と言うのですね)


私は、黙示様から教えられた言葉と意味を思い出し、現状と照らし合わせ活用してみる。

それが正解かは分からないが、九十パーセント以上の確率で適当であると結果が出ている。


現在、隆様の住居には子供が十人と隆様の十一人。そして私が一機。

大家族となってきている環境で、家事の方が多くなり隆様から教えを請う時間も少なくなっています。


「茜、今日は何を作ってるんだ?」


「今日は、肉じゃがを作っています」


「おぉ…おふくろの味代表!みたいな所ある料理だな!

茜も母として意識し始めたか…ふむ。

どうだ、茜。そろそろ俺の嫁にならんかね」


「申し訳ありません。

私では、隆様の嫁となる事はできません」


私の言葉を聞くと、隆様は くぅーフラれたっ!まだダメかぁ と悔しそうに厨房を出ていき、外で子供達に慰められています。


過去に何度か隆様から嫁になるよう言われていますが、私では無理と断っています。

隆様は、私を人だと言いますが…私は機械なのです。


一人、隆様の言葉を考え続けながら黙示様が置いていった食材を使って食事を作っていきます。


「完成ですね」


最後に味見をして、最適な味を再現できている事を確認。


機械である私ですが、人間と同じ様に食事をする為の器官が模してあります。

体内に取り入れた食事は起動用のエネルギーに変換する仕組みですが、しっかりと味を認識する事と満腹感を感じる事はできる様になっています。


味見をしたことで、空腹感を感じながら私は別の事を考えました。


それは外の世界。


初期起動から、早二年が経っています。ですが、私は隆様の住居から一歩も外へと出たことがありません。

たまに、隆様が外へと出られますが…私はお供する事を禁止されています。


黙示様から外の話しを聞くことはあります。

内容は、いつも曖昧ですが人間が生活するには大変な環境という事だけは理解できています。


「ママー!お風呂はいったー」


「御飯もできました。

皆を呼んで運んでください」


「はーい」


などと考えていると、先程駆けていった子供が髪から水滴を落としながら戻ってきたので、髪をしっかりと拭き直しであげながら次の要件を伝えました。

子供は元気に返事をすると、顔を綻ばせ私が拭き終わるのを待っています。


「ちゃんと拭きなさいね。

風邪を引いたら大変です」


「こんどはしっかり拭く!」


「はい。そうしてください」


このやり取りも何度目か…と思いながらも繰り返し教える。

隆様曰く、こういう事が大事なのだと言います。


一度教えたら、次は実行できるものだろうと思うのですが…理解できません。


人間は忘れるモノなのでしょう。酷く不便だと私は認識する。


隆様は、私に不便になれと言っているのかもしれない。そう考えた期間もありましたが、実行に移すと隆様は苦笑いを浮かべていた事を思い出します。

そこから、きっとこうではないのだろうと結論付け、またエラーばかりが出る思考に戻った事は私の苦い記録です。


「さぁ、拭き終わりました。

頼んだこと、お願いします」


「らじゃっ!」


子供は、手を頭に当てポーズを取ると厨房から出ていきました。


じきに他の子達が食事を取りに来ると予測した私は、厨房に置いてある椅子に座り一息つきます。

機械なので疲労は感じないはずなのですが、不思議と疲れたと言葉がでます。


記録したい事も多くある中で、家事というものは疲れるモノのようです。


ですが…なんでしょうか…。

別に、拒否をするほど嫌な事でもないようです。


何故かを考えていると、初期の頃よりは減ったエラーの中に浮かぶ言葉が一つ。

満たされている。

私は、その言葉の意味をイマイチ理解できず、そっとエラーの端に置いておく事にしました。



そんな事をしながら、変わらず変わっていく日常を記録し続け三年。初期起動から数えて五年の月日が経ったある日、最後来た時から四ヶ月ほど経った日に黙示様が現れ隆様と話していました。


「この周辺ぐらいなら、もう大丈夫だと思いますよ」


「おぉ、やっとか。

にしても、お前は外で何をしていたんだ?」


「まぁ…僕は僕でやりたい事があるんです」


「ほほぅ…俺に隠れてコソコソと…

ははぁ~ん、わかったぞ女だろ」


「……。

先輩の'ははぁ~ん'はいつも外れますね」


「なっ!失敬な!

女だろ!素直に言え!俺の正解を不正解にするな!」


と、話していました。


隆様も黙示様が何をしているか知らないんだ。と思い、なら何故機材を貸し出したりするのでしょう?と新たな疑問を浮かべていると隆様が話しを まぁ… と区切り私の方を向いて言いました。


「黙示が大丈夫って言うなら多分大丈夫だ。

茜、外に出てみるか?」


「…よろしいのでしたら、是非」


突然の提案に、処理が遅れながらも私は頭を下げた。


初期起動から五年と百二十三日。

現在の家族の数は、私と隆様。そして増え続けた子供達が百と四人。


この日、初めて私は外の世界を見ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ