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私は本当に望まれているのですか  作者: まるねこ


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8彼と私の間には

 父達は彼の状態を心配して魔獣の襲撃には一度も参加させなかった。


 つまり、婚約者の候補として失格なのだと思う。

 彼も薄々は感じていたかもしれない。

 でも、それでも私を好きでいてくれた。


 いつも「訓練は厳しいが、魔獣と戦うことをかんがえれば楽なものだよ。それよりジネット嬢、美しい君ともっと一緒にいたい」と言ってくれていたの。


「街に出て一緒に美味しいものを食べて、おしゃれをした方がいい。王都で着飾れば君ほどの美姫はいない」とも。


 私にとって、彼は私が女性であることを意識させてくれる。


 嬉しい言葉をくれていた。

 今までにないほど幸福な時間を過ごせたと思う。


 彼に魔獣の討伐が難しい場合は私が代わりに出ればいい。


 私が彼の分も強くなるそう改めて思ったわ。


 両親にもそのことを話すと『愛があれば問題ない』と私の考えを理解してくれている。


 あとはレオ様が嫡男だという問題だけなのよね。


 仮に私が伯爵家に嫁ぐ、と考えたところで弟が跡取りになるにはやはり力不足だ。


 それに両親だっていつまでも第一線で働けるわけではない。


 一人でも領地を守り抜くことができる人が欲しい。でもレオ様の気持ちを優先したいと思う。


 ……レオ様はこの地に残ると言ってくれるかしら。


 王都に戻った後、『またこの地に戻ってくる』と。


 私のレオ様を想う気持ちはこのひと月の間大きくなった。


 いつも優しく紳士的で、綺麗だ、美しいと言ってくれるレオ様に私の心は心地よく踊る毎日。だからこそ、次期辺境伯として無理強いして聞いてはいけないと思ったの。


 ううん、本当は怖かったの。


 聞けばこの関係が終わってしまうんじゃないかって。


「レオ様、このひと月、お疲れ様でした」


「ジネット嬢、ありがとう。君のおかげで沢山の経験ができた。本当にありがとう。私は仕事も残っているから王都に戻るけど、また手紙を書くよ」

「はい。次回会うのは、王宮の舞踏会ですね」

「ああ、君に会える日を楽しみにしている」


 レオ様は笑顔でそう言ってここへ来た時と同じようにドラゴンに乗り王都へと戻っていった。


 その日から私はまた寂しい日常が戻ってきた。


 毎日襲撃に備え、訓練する。


 次、レオ様に会える日を楽しみにして手紙を送っていたの。


 レオ様は忙しいみたいで何回かに一度手紙が返ってくる。それでも返してくれることが私にはとても嬉しかった。


「ジネット、喜べ! バルベ伯爵から良い返事が来たぞ」

「お父様、本当!?」

「今度の王宮で開かれる舞踏会にはレオ君のエスコートで参加だな」

「嬉しい」

「ジネット、良かったじゃない。これでうちも安泰ね」


 母も笑顔で次の舞踏会のドレスはどんなものにするか既に考えはじめている。


 そうだ、マリーズ様にもしっかりと手紙を書いておかないとね。


 ずっと私のことを心配してくれていたもの。


 レオ様は一応婚約者となったのだけど、まだ伯爵家の跡取りの問題は解決していないらしい。


 私は少し不安になった。まさか、ね。





 ―そうして迎えた王宮の舞踏会の前日。


 私たちは領地でギリギリまで魔獣の襲撃に対応していて、王都へ向かうのが前日になってしまった。


「ケイティ、準備は大丈夫?」

「お嬢様、家令とはやり取りをしていますし、問題ありません」

「ジネット、さあ行こうか」

「はい」


 家族で舞踏会に出るのは何年振りだろう。


 今回は私の婚約者のお披露目も兼ねているため家族で参加することになっている。


 マリリンに王都まで送ってもらいたいけれど、大きなマリリンは王都の空を飛ぶだけで魔獣たちが騒ぎ、大変なことになるので今回もお留守番になっている。


 私達がいない間、マリリンは領地の見張り番として活躍してくれるだろう。


「ジョセフ様、マルフィア様、ジネット様、おかえりなさいませ」


 邸に到着すると使用人たちは玄関で一斉に頭を下げている。


「ああ。変わりないか?」

「もちろんありません。ですが、少々お耳にいれたい話しもございますので……」


 家令のエルマンは少し言葉を濁している。


 その口ぶりや表情からして何か良くない情報を掴んだのだろう。


 我が家は辺境の魔獣に関してのみの家だと思われがちだが、情報戦にも長けていて国の安定にも寄与している。そのため、多少の我儘は許されているところがあるらしい。


 私は家令と共に執務室へ入り詳しい話を聞くことにした。


「どうしたのだ?」

「ジネット様の婚約者であるレオ・バルベ様のことなのですが、彼の王都での行動は……残念ながらあまりよろしくありません」


 家令は言いにくそうにしながらもそう話をする。


 そして動かぬ証拠といわんばかりに彼の行動を纏めた厚い書類を父に渡している。


 我が家の情報を得ようとするスパイの可能性もあるため、我が領に受け入れる人は身辺調査が行う。時にはこうして領を離れた後も行動を監視することがある。


「そうか……」


 父が読み終わり、眉間に指を当て何かを考えながら母へと渡す。


「……マリリンの餌にした方がいいかしら」


 母は笑顔で私に書類を渡してきた。


 渡された書類に目を通していくと……。


 書かれていたのはレオ様の王都に帰ってきてからの行動だった。


 伯爵家に戻ってからはとにかくお茶会や舞踏会に参加しては私の悪口を言っていたようだ。


『ドラゴン女だった』と。


 まぁ、あながち間違ってはいないのが悲しい。


 彼はもっとお淑やかで可愛い夫を立ててくれる女性がいいようだ。


 彼はたがが外れたように令嬢たちとデートを繰り返し、遊び惚けているとも書かれてあった。

 

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