16 王女の登場
「オルガ! ここにいたのねっ! 探したわっ!!」
オルガ様の言葉を遮るようにセレスティナ王女が笑顔で駆け寄ってきた。
私たちはセレスティナ様を見てから立ち上がり、礼を執った。
「オルガ、楽にしていいわ。私、貴方のことを探していたの。さっきお父様がね、そろそろ結婚式の日程を決めるって。だから私、結婚するならフィリクスよりオルガが良いって言ったわ。オルガもそう思うでしょう?」
セレスティナ王女は私を無視してオルガ様だけに甘えるような声で話しかけている。
「国王陛下がお決めになったことですから私からは申しあげることはできません」
オルガ様はセレスティナ王女に優しくそう答えた。
「私はオルガと結婚したいの。オルガじゃなきゃ嫌! だって私たちは相思相愛でしょう? お父様は私のことなんてちっとも考えてくれていないもの。オルガが傍にいないと私は死んじゃうわ。私が死んでもいいというのね」
彼女はそう言ってシクシクと泣き始めた。
今までも自分の思い通りにいかないとこうして泣いてわがままを通していたのだろう。
私は彼女の行動に呆れ、内心で大きなため息を吐く。
きっと婚約者のフィリクス・タウゼント侯爵子息も同じような思いをしていたのではないだろうか。
「セレスティナ王女殿下、ここは寒いですから、王宮へ戻りましょう」
「そうね。オルガ、お父様のところへ一緒にいきましょう。きっとオルガが言ってくれればお父様も聞いて下さるわ。私たちが愛し合っているときちんと伝えるべきなの」
彼の手は一瞬、隣にいた私の手をキュッと包んだ。
セレスティナ王女は彼の一瞬の行動には気づいていない様子。
「セレスティナ王女殿下、王宮へ戻りましょう」
オルガ様が私を王女から隠すようにすっと私の前に動いた。彼女は私のことなど気に留めず、オルガ様に話しかけている。
結局、彼女は私を無視したまま、オルガ様を連れて王宮へと歩き始めた。
「……はあ」
セレスティナ王女の声が聞こえなくなり、ようやく私は礼を執るのを止め、立ち上がった。私は彼が触れた手を握り、彼の気持ちを受け取った。
「……ケイティ、顔合わせという目的は達成したわ。帰りましょう」
「畏まりました」
その場に居た王宮の従者たちも私たち同様に礼を執るのを止めて動き始めた。
私はちらりと従者たちを見る。
従者たちにとってはいつものことなのね。
あの騎士は……。
そう、セレスティナ王女の行動は陛下に報告を上げているのに放置ということね。
そうして私はタウンハウスへと戻り、着替えをしてから領地へと戻った。




