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時間を止めて居心地の良い場所を作っていたら、二人の世界が出来上がっていました  作者: 皮剥の剥き身


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6/6

人のすれ違いって時に芸術的だよねー

「おはよー⋯⋯完全に抱き枕だねー」

「あ、ちょっと、クレア、助けて⋯⋯」


翌朝、私が起きようとしたら、アイリスにがっちりと捕まえられて抜け出せなかった。


顔を反対にしているので窒息することは無いんだけど、腕すら動かせない。


あの、アイリスさん⋯⋯?あなた、魔力で身体強化してません?私は出来ないので、それされると本当に逃げられないんですけど⋯⋯というかなんで身体強化⋯⋯?


「⋯⋯面白いから放置していい?」

「えっ!?」

「いいじゃん、愛されているということでー」

「まあそれは、嬉しいんだけど、このままだと遅刻しそう⋯⋯」

「んー?」


するとクレアは私に近づいてきて、私の頬をふにふにする。私は当然なすがままになる。完全におもちゃだ。


「ちなみに今日休日だよー」

「⋯⋯え、そうなの?」

「⋯⋯曜日感覚大丈夫?」

「やばいかも⋯⋯」


するとクレアは、今度は頬を引っ張ったり潰したりして遊び始めた。むー。


でも、今日休日なんだ。学校が無いなら、多分時間を止めるような事態にはならないと思うから、安心したような、でも少し寂しいような⋯⋯


って、何考えてんだ私!なんで寂しくなるんだよっ!!


あーもう、シンのせいで完全におかしくなっちゃってるじゃん!!


「ん、んぅ⋯⋯」

「あ、アイリス起きた?そろそろ離してもらえると⋯⋯」

「んーシルティアは私の⋯⋯」

「私は私のですが」


アイリスは強く私を抱きしめると、安心したようにまた眠ってしまった。


はぁ⋯⋯色々とどうしよう⋯⋯


「ほら、アイリス起きるよー」

「⋯⋯ん⋯⋯」

「今日は()()するんじゃないのー?」

「⋯⋯はっ!あ、シルティアおはよう!」

「う、うん、おはよう」


何故かクレアの一言でアイリスは起きて、私はついに開放された。これもこれで、なんか背中側が寂しくなる⋯⋯って、本当に何考えてんだ私は。


いやまあ、アイリスは親友だし、私の女神だしいいのか?いいか。人は神に縋るものだし。


「ねえ、あれってなに?」

「あ、それはね⋯⋯」

「デートだよー」


あ、デートか。なるほど、休みの日にはよくするもんね、デート。うん、デート⋯⋯


「⋯⋯え、誰の?」

「私達のだよっ!」


アイリスが間髪入れずに答えた。デート⋯⋯まあ、つまりお出かけだね。2人と出かけるのが凄く久しぶりに何故か感じてしまうので、結構嬉しい。


「はい、ということだから早く準備してー」

「じゃあシルティアは私が着替えさせてあげるね!」

「いやアイリスも自分の⋯⋯って、はや!え、いつ着替えたの!?」






ということで、やって来たのは学校から少し下ったところにある平民街の大通り。


王都は全体がなだらかな山のようになっている。いちばん高いところに王城があり、それを囲むように貴族街、平民街と続いているのだ。


ちなみにその外は私がシンとあってしまった草原が広がっている。今更だけど、シンはどうやって現れたんだろ⋯⋯って、そんなことはどうでもいい!


大通りは簡単に言うとお店が沢山集まった場所だ。その変遷には色々あったらしいんだけど、今は平民と貴族両方が利用する場所となっている商業の中心。国内から、そして国外からも色々なものが集まってくる。


1歩中に入ると大勢の人と色鮮やかな垂れ幕、そして客引きの声がそこら中で響いて来た。それだけでなんか楽しい気分になってくる。学校よりもよっぽどこっちの方が好きだなぁ。


あ、しかも今日はわざわざよく知らない人と会話することが無いんだ⋯⋯!清々しい!


「ねえシルティア、どこ行く?」

「え、えーっと⋯⋯クレア、どう思う?」

「アイリスさんや、デートプランとか無いのー?」

「え?シルティアがやりたいことをするのが1番じゃない?」

「⋯⋯だそうですよ、シルティアさん」


一瞬で私のところに戻ってきた。クレアもうちょっと頑張ってよ、と思うけど、なんかもうお手上げみたいなポーズをしている。なんだそれ。


正直私は、2人と入れるだけで嬉しいし楽しいから、どこでもいいんだけどなぁ⋯⋯


「うーん、じゃあ小物屋とか?ほら、最近流行りの髪飾りを作っている」

「あ、あそこだね!じゃあ行こっ!」


アイリスは私の手を取って走り出した。するとすぐにもう片方の手にも温かい感触がした。


「クレア?なんで手を繋いでるの?」

「んーなんとなく?はぐれそうだしー」

「まあ、それも確かに⋯⋯じゃあいっか」


いや、それ許すの私では⋯⋯?とも思うが、別に手を繋ぐのは全然嫌じゃないのでそのまま黙っておく。


⋯⋯あれ、なんかこれ子供扱いされてない?なんか周りを見ると、親子連れの3人組が、子供を真ん中にして同じようなことをしてるんだけど⋯⋯いや、そんな訳⋯⋯ないよね?え、そういうことなの???


と、途中から私は変な気分になっていたけど、横の2人には特に気にした様子も無く、平和に小物屋へと辿り着いた。


「あ、結構混んでるね」

「まあ流行りの店だからねー」


店の中に入って商品を物色する。色とりどりの小物が至る所に陳列されていて、あちこち目を奪われる。髪飾り、櫛、手鏡、財布、果ては指輪まで。


中には宝石や魔石が埋め込まれたものもあって、そういう商品はいっそう輝いて見えた。値札も輝いていた。


いいなぁ、欲しいなぁ。でもお金が無いんだよなぁ。


私の生活費はお母様の遺産から出されている。と言っても男爵家なので、ぎりぎり学校で生活出来るくらいしかない。


でも、こういうのは見るだけでも楽しいのだ。それは強がりとかではなく、将来金持ちになった自分が何十個と髪飾りを付けている姿を妄想する⋯⋯いやこれはやりすぎだけど、気持ちのいい光景には変わりないし。


でも私が金持ちかぁ⋯⋯あるとしたら結婚?あ、まお⋯⋯一旦置いといて、まあ私と結婚したいと思う人なんて居ないよね⋯⋯将来はアイリスの女中さんとかやって、貯めたお金でこういうの買うのかな⋯⋯


女中になって、アイリスと今のように関わることが出来なくなるという悲しい未来が見えた。うん、やめよう。


「あ、このペン立て良くないー?」

「確かに、こういうのが1つあると部屋が華やかになりそう」

「だよねー」


クレアが指さしたのは、花の形を模したペン立て。2枚の葉の部分にペンが刺せるようになっていて、2人で上手く使えそう。


まあやっぱり買えないんだけどね。


ちなみにクレアも私の仲間だ。ただ私と違ってクレアの家は男爵家だけど結構裕福ではある。彼女の家の領地は王国の端の港町で、それなりに他大陸との交易で儲けているらしい。


でもなぜ貧乏なのかと言うと、彼女が男5人女4人の9人兄弟の末っ子だから。貰える量が兄弟と比べて少ないー、と不満そうにしているのをたまに見かける。


それに比べて───


「あ、じゃあ私が買おっか?これからも2人の部屋に遊びに行くし!」


アイリスは完全なる金持ちで、いや本当になんで私たちと仲良くしてくれるのだろう⋯⋯


お金を使う機会が無い学校内だとこんなこと感じないんだけど、やっぱ校外に来るとアイリスってすごいなぁ、と思ってしまう。


「いや大丈夫だよ。アイリスに悪いし」

「こういうのはちゃんと自分のお金で買うよー」

「えーそう?」


ただ、そんなアイリスに買って貰っていたら私はダメ人間以下の何かになってしまいそうなので遠慮する。


ちなみにペン立てのお値段は⋯⋯うん、私が2年間くらい倹約しまくったら買えるかな?


「⋯⋯あ、」


眩しすぎる値札から目を逸らすと、ある指輪に目を奪われた。


それは真っ黒な宝石がただ1つ中心で輝いていた。他の飾りもなく、けど何故か目が離れない。その漆黒に吸い込まれそうになる。まるでシンの瞳のような⋯⋯


これを付けてたら、シンはどんな反応をするんだろう⋯⋯結婚する時とかだと、男の人が自分の髪色と同じ色の宝石が付いた指輪を贈ってくれるんだけど、そもそもシン知ってるかな⋯⋯


⋯⋯⋯⋯え?


いやいやいやいや、私今何を考えてた!?なんでシンなの!?全く関係ないじゃんっ!!えつか結婚っ!?!?しないけど!?


そもそも指輪の宝石だってシンとは全然違うし。本物はもっと透き通る感じで綺麗で⋯⋯あーーっ!!??


「シルティア、この指輪気になる?」

「え!?い、いや!なんでもないよ!」

「でも、さっきからずっと見てたよ?」


本当に何やってるのかな私!?


こんな宝石をちょっと見ただけでシンのことを連想するとか⋯⋯私もうだめ?手遅れ?


「⋯⋯よし、決めた。私、これ買うね」

「どうして!?」

「これはシルティアに買ってあげるんじゃなくて、私が使いたいように使うから」


何故か覚悟を決めたようにアイリスが言った。本当にどうしてそうなるの!?


ちなみにお値段は⋯⋯あ、私には到底無理だ、これ。


なんでアイリスがこれを欲しがるの?全く状況に理解が追いつかない。でも、買うも買わないもアイリスの自由だし、今回は私に止める権利は無い⋯⋯


⋯⋯いややっぱり、アイリスがこの指輪を付けるのは嫌だ!こんな風に思ったのは初めてだったけど、アイリスには絶対に黒い宝石を身につけて欲しくない。


本当に意味わかんないよね、意味わかんないよっ!!なんでこんな風に思っちゃってるのかな私は!!??


「あ、あの、アイリス⋯⋯」

「なに?今回は私も譲らないよ」

「いや、その⋯⋯そっちの方が良いと思わない⋯⋯?」


私は隣にある黄金色の宝石が付いた髪飾りを指さした。


「えっ!?⋯⋯シルティアはこっちの方が嬉しい⋯⋯?」

「う、うん。だって、そっちの方が似合うと思うし⋯⋯」

「本当に⋯⋯?」

「もちろん!だってアイリスだから!」


正直アイリスだから何を付けても似合うし、私如きにはそこに優劣なんてつけられないけど、そこは置いといて。


でも髪色と凄く似ている色で、ちゃんと可愛いと思うんだよね。なんか少し大人っぽさが上がった感じになって。


私の必死な説得に、ついにアイリスは首を縦に振った。


「⋯⋯うん、分かった。じゃあ、これにするね」

「ほんと!?良かったぁ」


無事にアイリスが黒い宝石の指輪を買うことを回避して、私は胸を撫で下ろした。


本当に良かった⋯⋯アイリスは今のアイリスのままでいてね。アイリスまでシンに侵食され始めたら私はお終いだ⋯⋯


「おー遂にか」


でもそんな私の隣で、クレアが意味深なことを呟いた。一体何なんだろう?




小物屋を出た後、私たちは服屋を数店舗や、クレアの希望で武器屋を回った。


その間アイリスはどこか上の空だったけど、お昼時を少し過ぎた頃、そのアイリスの希望で昼食変わりにオシャレなカフェへと入った。


私やクレアなら絶対入らない場所だ⋯⋯


私達は屋上の席へと案内される。そこはお屋敷にあるような庭みたいになっていて、テーブルがひとつ、色とりどりの花に囲まれて設置してあった。


少し緊張しながら席に座る。改めて見渡してみると、さっきまで私達がいた人混みが見える。なんかすごい場所だなぁ、と人並みすぎる感想しか出てこない。


「じゃあ好きなもの頼んでね」

「あ、うん」


店員さんからメニューを受け取って中を見る。


⋯⋯⋯⋯えーっと⋯⋯?


「アイリスー?値段書いてないんだけどー?」

「これって凄く高いんじゃ⋯⋯」

「気にしなくていいよ全部私が払うから」

「え、それは⋯⋯」

「あ、するの?早くないー?」

「うん。でもこれで待たせちゃうのも嫌だな、って」

「⋯⋯まあ、そういうことなら今回はご馳走になりますかー」


それは悪いよ、と言おうとしたら、クレアが何故か同意してしまった。なんでだよ。


そこで私だけ反対しても良くないので、今回はアイリスに払って貰うことになりそうだけど⋯⋯やっぱりこんな高そうなお店で申し訳ない⋯⋯


私のメンタルの弱さが姿を現し、おそらく1番安そうなストレートティーだけを頼んだ。でもアイリスから、それだけでいいの⋯⋯?と上目遣いで言われた結果、ショートケーキと焼き菓子も付きました。


アイリス、それはずるいって。お金払うのもアイリスなんだけどさ⋯⋯


今日巡っていた店について話していると、注文したものが運ばれてきた。うわ、食器1個だけで凄く高そう⋯⋯


「じゃあ、頂きまーす」

「アイリス、本当にいいの⋯⋯?」

「うん。どうぞ!」


本当にいいのだろうか、と小心者の私はまた躊躇する。でも、


「このケーキ美味しー」


と言いながら次々と口に運ぶクレアがいるし、まあいっか。


私は焼き菓子に1口食べて、気付いた。


これ、美味しいやつだ!


いやまあアイリスが連れてきてくれたんだから当たり前なんだけどさ、見た目は普通のものが凄く美味しい。


え、なんでだろう。魔法?こんなに美味しいのは魔法に違いない!!


とにかく私が焼き菓子とケーキに夢中になっていると、これも当たり前だけど、すぐに食べ終わってしまった。


そこでようやく紅茶を飲み、一息つく。更に当たり前だけど、紅茶も美味しい。普段飲んでいるものとは違うなぁ、としみじみ思った。


「シルティア、美味しかった?」

「うん、とってもっ!」


テーブルの向こう側にいるアイリスからなんか凄く微笑ましそうに見られているけど、別に気にしない。美味しいものは美味しいのだ。


出来ればまた来たいなぁ。でもお金無いし⋯⋯あれ、結局お値段はどのくらいだったんだろう⋯⋯


と、再度不安になっていると⋯⋯


「ねえ、シルティア」

「ん、なに?」


アイリスは小さく息を吸って、それから吐いた。あれ、これまさかお値段の話⋯⋯?


「私ね、シルティアのことが好き」

「えっ?」

「シルティアって凄く優しいし、とっても可愛いし、一生懸命生きているところが好きです」

「あ、⋯⋯その、私もアイリスのこと好きだよ?」


全くもって想像の斜め上の話が飛んできた。


ちょっと!!この唐突な褒めはなにっ!?なんか顔が熱いんだけど!


アイリスの褒め攻撃に、私は心の中で叫ぶ。私なんか褒めても何も出ませんよ⋯⋯もちろんお金も⋯⋯


とりあえず思った通りに返すと、アイリスは目を丸くして、それから、ありがと、と小さく言った。


「本当にシルティアには感謝しているの。私って、ほら、正直浮いちゃってるから、普通に仲良くしてくれるシルティアには本当に救われた」

「いや、私の方がアイリスに救われてると思うけど⋯⋯」

「ふふ、じゃあ、どっちがより救われたか、今から競ってみる?」

「ちょっと私が恥ずかしくて死んじゃうのでやめてもらっていいですかっ!?」


普段考えていることを口に出すようなことがあったら、私は多分徐々に干からびてミイラになるよっ!冷や汗で身体中の水分が抜けきってねっ!!


よくもそんな恐ろしいことを、アイリスは微笑みながら言えるもんだ⋯⋯


次は何を言われるの⋯⋯?というか今日のアイリスはなにかおかしくない⋯⋯?なんでこんな流れになってるの⋯⋯?と戦々恐々としていると、アイリスは机の下から小さな箱を取り出して私の前に置いた。


あ、これって⋯⋯


「今日買ってた指輪?」

「うん。ごめんね、雰囲気とかそういうのは無いんだけど、早く受け取って欲しくて」


箱がアイリスの手によって開けられると、中にはアイリスの髪色に良く似た黄金色の宝石が輝きを放っている。


店の中よりも、その指輪は遥かに綺麗に見えた。すごいなぁ、高そうだなぁ。


⋯⋯って、これを私が受け取るの!?!?


「えっ、この、指輪を、私に?」

「うん。⋯⋯シルティア、これからもずっと一緒にいてください」


アイリスはわざわざ立ち、私の傍に来てから膝をつき、指輪を差し出してくれる。


とんでもないプレゼントに一瞬頭がフリーズした。


あの、コレスゴクタカインジャ⋯⋯でも私は指輪を受け取った。そこに迷いはほとんど無かった、と思う。


「うん、もちろん!これからもよろしくね、アイリスっ!」

「っ!うんっ!」


アイリスが抱きついてきて、私は優しく受け止めた。


いやさ、せっかく()()が贈ってくれたプレゼントを受け取らないわけにはいかないじゃん?アイリスの好意を無下にしたくないし⋯⋯それに少し⋯⋯いや大分⋯⋯いやもうめちゃくちゃ嬉しかったし。


アイリス越しに、改めて受け取ってしまった小箱を眺める。その中央に座する指輪は、その高価さから私に畏怖を与える。多分存在の大きさが私よりも大きい。


でもそれ以上に震えるほどの喜びをもたらしてくれてもいるのだ。私はこんなものを貰えるほどの、アイリスの()()になれてたんだ⋯⋯!


なんかもう今ならなんでもできる気がする!アイリスからこんな風に大切に思われてるんだから、私は立派な人間なんだ!周りのことで気に病む必要なんかないんだっ!!


「ねえアイリス」

「ん?なに~?」


私が肩を叩くと、アイリスは蕩けた顔つきで少し離れて私の方を見る。わかるよその気持ち。私も今同じように思ってるんだから!本当に私は素晴らしい()()がいて幸せだ!!!


「ありがとう、私のことをこんなにも思ってくれて」

「うん、でも感謝するのと私なんだから。ありがとう、私の気持ちに答えてくれて」

「そんなの当たり前でしょ?⋯⋯ねえ、アイリス、私ね、今決めたんだ」

「えっ、なにを?」

「私はもっとアイリスに相応しくなれるように頑張るっ!だからそんな私を見ててねっ!」

「っ!!うんっ!」


私は今のままでは堂々とアイリスの()()を名乗ることは出来ない。だから、これから努力するんだ。


少なくとも時間を止めなくても普通に会話出来るようにならなくちゃ。私はクソ雑魚ナメクジから進化するんだ⋯⋯!


今まで何度も挫折してきた目標までの道が、今は指輪が一直線の道を照らし出してくれていた。


「これからもよろしくね、アイリス」

「はい、よろしくお願いします、シルティア」


そうして私たちはまた抱き合った。かけがえのない()()と過ごす時間は、何よりも得難いものだった。






「あのー、最後の言葉をもう1回言ってくれないー?」

「え、結構恥ずかしいんだけど⋯⋯(親友として)これからもよろしくね、アイリス」

「(婚約者として)よろしくお願いします、シルティア」

「⋯⋯」

「⋯⋯え、これなんで言わせたの!?」

「まあいいんじゃないかな?私はもう1回聞けて幸せだったよ?」

「まあ、それならいっか」

「うんっ!」

「⋯⋯もうここまで来ると、この2人すごいとしか感想が出ないんだけどー⋯⋯」


⋯⋯はい?


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