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自分が無意識に考えてることって知ると嫌な気持ちになるよね

魔法とは、身体内部で生成される魔力を用いて陣を描き、超常現象を起こす行為、らしい。


起こる現象と規模は全て魔法陣内部に描かれている式で決定される、らしい。よって発動を早くするために、魔法陣を小さくすることは永遠の命題だとかなんだとか。


まあそこら辺の理屈は全くわかんないんだけど⋯⋯


で、ここからが問題で、私が魔王から教えて貰って描いた式は、既存の式では描ききれなかった弾数の規定を盛り込んじゃってるらしい。つまり、本来ならもう少し大きくなる陣を小さくしちゃったらしいのだ。


これをするとどうなるか?はい、まずは授業が中止になります!そして私は校長先生と面談させられます!そして立て続けに国の有名な魔術師とも面談させられます!まあ面談と言うよりは尋問だけどね!


どのような論理なのか、とかどのように思いついたのか、とか私では分かるはずが無いことを永遠に尋ねられるんだよ⋯⋯


私は泣きそうになりながら、全て頭の中にお告げがあったということで通した。別に間違っては無いよね。告げたのが魔王ってだけで。


というかシンのせいなんだよなぁ、こうなったの。シンが誤った⋯⋯いや誤っては無いけど、変な式教えるから。


文句の1つくらい言いたいし、なんなら時間止めたら出てくるんだろうなーとは思うけど、そんな勇気は無い。昨日よりも別の意味で時を止めるハードルが上がっている気もするし⋯⋯


ほんと、教えてくれるなら普通の式を教えてくれればいいのにっ!私に新発見の式とか分不相応すぎるんですけど!?


⋯⋯でも、もしかしたらシンもこれが新しい式だったってことを知らなかった?魔王だからありそう⋯⋯そしたらあんま責められないじゃん⋯⋯


ああぁ~~


まあそんなかんやな事を殆ど放心状態で考えていたらどうにか解放されて、私が寮に帰れたのは太陽がすっかり沈んでから。昨日寝れなかったことも相まって、帰ってきた私は心身ともにくたくただった。


「ただいま⋯⋯」

「おかえり~」

「あっ、おかえりない!今ご飯あっためてくるね!」


私と入れ替わる感じでぱたぱたとアイリスが部屋から出て行った。うん、その姿だけで癒される⋯⋯


「アイリスもいたんだね」

「うん。夕食を確保しといたから、アイリスがあっためて持ってきてくれるよー」

「ありがたや⋯⋯」


アイリスの部屋には私達の部屋とは違って魔道具とかが色々あるから、それを使ってくれるのだろう。今日の私は昼ご飯も無かったから、本当に2人には感謝だ。というか校長と高官の私の扱い⋯⋯


まあ身分が高い方々の私の扱いなんて毎回こんなもんなので、深く考えることをやめてベッドに飛び込む。そして理不尽すぎる現実から逃げ込むように顔を枕へ押し付けた。


「死んでるねー」

「そりゃ死んじゃうよ⋯⋯ずっと面談という名の尋問だよ?」

「でも新しい式作ったんでしょー?名誉的な感じじゃないの?」

「そんな感じは一切しなかったけどね⋯⋯」

「流石お偉いさん方。でもよく頑張った~」


クレアは私を労うように頭を撫でてくれる。偉かったねーよーしよーしと優しいその手つきに、私の瞼は今にも落ちそうに⋯⋯


「⋯⋯って!その子供扱いなにっ!?」

「えー?だってシルティア、好きでしょ?アイリスにせがんでたじゃん」

「好きじゃない!いや嫌いでも無いけど⋯⋯どちらかと言うと好きかも⋯⋯」

「⋯⋯ちょろ」

「ちょろくないですし!?」


ぱっと起き上がると、クレアは楽しそうに笑っていた。


「まあ今日のシルティアは私達に甘えとけばいいんだよー。疲れてるんでしょー?」

「う、うん。それはそうだけど⋯⋯」

「はーい。アイリスー聞いたー?」

「うん、ばっちり!じゃあ今日はシルティアを思いっきり甘やかすねっ!」


はっ、と入口を見ると、湯気が立つ温かそうな食事を持ったアイリスが立っていた。すごく美味しそう⋯⋯じゃなくて!いつからいた!?あと私の返事は甘やかされることに対する同意じゃないんですけど!?


「じゃあ、今日は私がシルティアにご飯をあげよーっと。いつもやって貰ってるし」

「私もー。あ、アイリス膝枕してあげたらー?」

「えっ!?膝枕⋯⋯?シルティアに⋯⋯?」

「そうそう。ちょうど良くないー?」

「⋯⋯う、うん!頑張ってみる!」

「あ、あのー⋯⋯私の同意とかは⋯⋯?」

「おいでシルティアっ」

「ほら、ご褒美だぞー」

「あ、私に拒否権は無いんですね分かりました⋯⋯」


結局私は思考を放棄して、全てを2人に委ねた。すごく心地よかったんだけど、人として良かったのかな⋯⋯?




「遅いぞシルティア」


気づいたら教室にいた。周りの時間は止まっている。


え?なんで?と思ったら、シンの手によって私の顎がくいっと持ち上げられた。整った顔立ちが目に入ってしまう。


「何を見てるんだ?俺を見ろ」


シンの漆黒の瞳につい魅入られてしまう。なんだか顔が熱くなって、頭がぼーっとなってつい目を逸らしてしまって⋯⋯⋯⋯って、どういう状況なの!?え、なんでシンがいるの?私時間止めてないのにっ!?


「⋯⋯可愛い」


シンの甘い言葉にまた思考がかき乱される。ちょっと、本当にどうなってるの!?意味わかんないんだけど!?!?


私は少し離れようとしてシンを押した。でも弱々しい私の腕では、シンの大きな身体はびくともしなくて、むしろ腰に手を回されて完全に逃げられなくなった。


「ほら、なに逃げようとしてるの?()()シルティア?」


少し嗜虐的に微笑むシンの顔がどんどん近づいてくる。もう今にも唇同士が触れ合いそう。え、あ、あ、あの!?ちょっと───


()()シルティア、ですけど?」


思わず目を瞑ると、身体が思い切り後ろに引かれて、何か柔らかいものに抱き留められる。恐る恐る目を上けて振り返ってみると、明らかに不機嫌そうなアイリスがいた。


「⋯⋯ふーん、邪魔するんだ」

「シルティアが嫌がってましたから。もう少し女の子の気持ちが分かるようになってから来てください?」


2人の間で、私でも分かるくらいに火花がばちばちと散っている。あの、アイリスさん⋯⋯?魔王ですよ、これ。というかどこから来たんですか⋯⋯?一応時間止まってるんですが⋯⋯


「はっ、分かってないな。シルティアが本当に嫌な時はもっと変な反応をするぞ?」


えちょっと、シン??


「さすが!もう嫌がられたことがあるのですね!ではそのような厚顔無恥の方はさっさと消えてください?」

「大切なのは今だろ?ほら、シルティアは今すごく困った顔をしているぞ?お前が来たからな」

「⋯⋯っ!」


2人とも普段からは考えられないほどトゲトゲした会話の矛先が、急に私へと向いた。


え、あの、これはただ状況に困惑してるだけでどちらかが嫌とかでは無いんですけど⋯⋯


「じゃあシルティアを返してもらうぞ」

「駄目!シルティアをあなたのような人には渡さない!」


そう言ってアイリスは私を胸元に強く抱き込んだ。


ちょっと腰が抜けていた私の顔は、ちょうどアイリスの胸に押し付けられた。すごく柔らかい感触に包まれる。


⋯⋯って、これ⋯⋯


「シルティアは俺の花嫁だ」

「私の将来のフィアンセです!」


息が、でき、ない⋯⋯




「⋯⋯ぷはぁ!⋯⋯」


必死にもがいた結果、私は自分の部屋で飛び起きた。隣には私を抱き枕にしていたであろうアイリスが腕を彷徨わせている。


そして私は直前の夢を思い出して顔が赤くなるのを感じた。


夢にアイリスが出てくるまではいいよ?まあよくは無いかもしれないけど、隣に寝てるんだし。


けどさ、けどさ⋯⋯シンは駄目じゃない?なんかすごいことされたような気がするんですけど。唇にキスされる直前まで行ったんですけど!


これ、全部私の夢の中だから、つまり私が考えちゃってた⋯⋯ってことだよね⋯⋯?


魔王に?ラブコメみたいな妄想を???


「⋯⋯⋯⋯うん、疲れてるな、私⋯⋯」


ここまで来ると自分でも分かる。私はもう限界なんだよ!


結局時間を止められなければ私はメンタルがナメクジ以下のクソ雑魚女なんですよね、はいそうです⋯⋯


もう、全部シンが悪いじゃん。話すだけでもすごく大変なのに、私の休める場所を奪うから⋯⋯


って再びシンの事を考えた頭を自分で軽く殴って、またベッドに倒れ込む。


そうすると、待ってましたとばかりにアイリスが私のことを抱き締めた。嗚呼、煩悩が浄化されていく⋯⋯


というか今更だけど、アイリスは夢の中で何をしているんだろう⋯⋯




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