第194話(沢風和也視点)
ブックマーク、評価ありがとうございます。
「どういうことだ」
ヒーワイテレビの比和井と連絡がつかない。第二弾の話はどうなった。撮影は昨日だったよな?
——連絡もないし僕のことを馬鹿にしているのか。
「チッ」
次の報酬は倍にしてやる。それくらい貰ってやらねぇと腹の虫が収まらねぇからな。
————
——
ある日突然、僕のSNSアカウントにヒーワイテレビの比和井という人物から番組出演オファーがあった。
ヒーワイテレビなんて聞いたことないが、僕個人に直接話したいというので、ババアマネージャーの目を盗んで、詳しく話を聞いてやれば、ハッスルするだけの簡単な仕事だった。
まあ、前世でいうところのAV男優のような仕事を僕にしてほしいとのことだった。
びっくりするほど報酬は良かったが、こういう仕事は事務所にバレると後がうるさい。
僕のファンだと言って声をかけてきた女にちょっとハッスルしてやっただけで施設『ハッスル』の使用を3日ほど止められたくらいだからな。
まあバレて施設『ハッスル』の使用を止められるのは痛いが、最近は新しい仕事を持ってこない事務所も悪い。
というのも、クソみたいな会社を買収してしまったのが痛すぎた。
あのクソ会社のせいで今まで溜め込んでいた資金をほとんど吐き出してしまったからな。
僕が買収した会社なのに社長になれないとか、腹が立ってすぐにそんなクソ会社は解散させたが、今思い出したらまた腹が立ってきた。フガァー!
他にも、忌々しいシャイニングなんちゃらや剛田武人、あと、太っちょ男子だったか? アイツらが出てきてからというもの、テレビ出演のオファーや雑誌の取材がほとんどなくなってしまった。
おかげで僕の報酬はほとんどない。
特にサイコロのCM。あれは僕にこそふさわしい仕事だった。それが剛田武人や太っちょなんかに依頼しやがって。
僕を使わなかったお詫びにサイコロを送れとDMを送ってやったから、そのうち新品のサイコロが届くだろう。
あとはネッチューブの登録者数だ。僕のチャンネルの登録者数が1万人くらいにまで落ちているのも痛い。
どうせ、東条グループが手を回して僕のチャンネルだけ登録できないように小細工しているのだろう。僕を東条麗香の婚約者に戻したいがためだけに。
まあ、東条麗香が泣いて謝ってきて、且つ高級腕時計をもう一つくらい手土産に持ってくれば考えてやらないこともないがな。くくく。
そんなこともあり、僕の収入が大幅に減少していたからちょうどよかったのだ。
ヒーワイテレビの比和井という女はなかなか気が効くヤツで、僕とはエージェント契約にして、新しく種竹優という芸名でデビューすることにした。
他にも、編集の際には顔全体を3DCGで描画されたキャラクター、第一弾はデフォルメ猫の顔を俺の顔に被せる予定だから正体はバレないだろうと胸を張っていたな。
悪くない話だが、これですぐにオッケーをしてしまえば僕のことをチョロい男だと侮られる可能性がある。
そこで欲しくてもなかなか手に入れることのできなかったサイコロを要求した。
それでもいいと契約する流れになったのはいいが、初撮影に、県外にまで連れていかれるとは思わなかった。
それでもサイコロと十分な報酬は悪くない。大目にみてやる事にしたんだがな。
さすがに、撮影中に高級腕時計が映るのは避けたかった(身バレの可能性がある)から外した。
この腕時計は高級なだけあって手入れしなくてもピカピカ、頑丈で傷もつかない。それでいて庶民では手が出せないほど高価だから、着けていて気分がいいんだよ。
今では、いつも腕につけておかないと落ち着かないくらいだ。
撮影から帰ると、ババアマネージャーからは黙って外泊したことを注意されたが無視をした。
2日ほど顔を出さなかった施設『ハッスル』のババアからも、物言いたげな目で見られていたが仕事だったと言えば文句も言えまい。
まあ次の撮影が入るまでは毎日通ってやるから喜ぶがいいさ。
————
——
「チッ、イヤなことを思い出したぜ」
思うように操作できないサイコロのコントローラーとVRゴーグルを2人掛け用の高級ソファーに投げつけて愚痴るが、
ガシャッ!
「うわぁ……ふぅ」
力加減を間違えて慌てる。近寄り壊れていないかを確認して安堵の息を吐いた。
「あぶねぇ」
僕はサイコロの本体をそっといつもの位置に飾る。
僕の操作はまだまだだが、前世のロボットアニメ、機動騎士ダムダムを思い出すサイコロは自分で塗料を買ってきて塗り直すほど気に入っていた。
ちなみに僕はこいつのことをサイコロ・一八と名付けている。
「RMSプラスマイナス・白式みたいに金色にしてみてもよかったな……って違うだろっ」
あれだよ、あれ。そうヒーワイテレビの比和井から連絡がこないせいで、前にも1度だけ連絡して来ないヤツがいたことを思い出したんだよ。
あれとは「剛田武人じゃ力不足だ、僕が代わりにイメージボーイになってやる」とサイキックスポーツ協会にDMを送ったあれだ。
あの時のDM、この僕が送ってやったのに返事が来なかったんだ。ほんとムカつくぜ。
「ん? 回線エラー……?」
そういえば、あの時期は、僕宛に届くDMがかなりの数になっていて、面倒くさくてババアにその管理を任せていたな。
もしかして、あの時も回線エラーで送信ができていなかったのでは?
「ふむ」
たぶんそうだ。そういうことか。原因が分かればイラついていた僕の心も落ち着くというもの。
「まあいい」
しょうがないからもう一度送ってやるとしよう。
くくく。剛田武人よ、残念だったな。これでサイキックスポーツのイメージボーイは僕になるだろうよ。
しかし、回線が復旧するまで、どれくらい時間がかかるのやら。いつもの施設で時間を潰すか。そうしよう。
あそこに行けば2、3時間くらいあっという間に溶けるからな。
「ちょっと出てくる」
背中越しにババアマネージャーにそう言えば、
「沢風様。ヒーワイテレビ様からお手紙が届いております。必要ないのであれば私の方で対応しておきますが」
ババアマネージャーが1通の封筒を差し出してくる。
「何!?」
慌ててババアマネージャーから封筒を取り上げ、ババアからも見られないように、少し離れてから中身を取り出す。
「なっ!?」
それには、会社が倒産したことと、倒産により僕とのエージェント契約が終了したことを知らせる文書が入っていた。
しかも、内容をよく確認すれば送り主は弁護士だった。
ふざけるな。ふざけるな。やっと出来た金蔓だったんだぞ。
「ふざけるんじゃねぇ!」
最後まで読んでいただきありがとうございます。




