第182話
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サービスエリアで何度か休憩を挟み、昼食はサービスエリアで食べるつもりでいたけど、新山先生がサンドイッチを準備してくれていたからサービスエリアの中には入らずに車の中でシートを倒してみんなで食べた。
シートを倒すと思ってた以上に車内が広く秘密基地みたいでテンションが上がってしまったよ。
香織さんも、車の中に泊まってみたい、とか言って楽しそうにしていたけど、たぶん冗談だろう。
俺がそんなことを考えている間にも、ミルさんがアポートを使いポンポンっと飲み物と新山先生のサンドイッチ、それに小さなテーブルを取り寄せてくれて、みんながテキパキ動けば、あっという間に昼食タイム。
この手際の良さ、俺が聞いていなかっただけで、みんなも始めからそのつもりだったのかも。
俺の好きなたまごサンドに、ハム野菜サンドに、ツナサンド、フルーツサンドと手の込んだものもたくさんある。
新山先生は、みんながおいしいと頬張る姿を照れくさそうに見ていたけど、本当においしいんだ、特にたまごサンドは大好物。
でも、これだけの量を1人で作った新山先生は何時に起きたのだろう。尋ねても、にっこり、朝は強いからとだけだった。
そんなことを考えつつも、たまごサンドを口いっぱいに頬張っていると、ふと俺が登校し始めてすぐに(昼食にパンを食べた次の日)、みんなの手作りお弁当をもらったことを思い出した。
サキやナナコ、サチコにツクシに、クラスのみんな、そして新山先生からも。
新山先生のお弁当箱は可愛らしいヌーピー(犬のアニメキャラ)だっけ。
思い出したら何かせずにはいられない。感謝の意味を込めてみんなにお茶のおかわりを……と思ったらお腹いっぱいだからいらないみたい。
ありがとうと断られる。みんな意外と小食だったね。
元々残す気はなかったけど、そんなことを思い出したら、なおさら残すことなんてできない。俺は平静を装いつつ必死に食べたよ。
新山先生はヌーピーが大好きだったなぁ、とか、新山先生の小さなカバンにはヌーピーのマスコットがぶら下がっててかわいいかもとか、武装女子のキーホルダーも付いてる……
なんてことを考えつつ食べていたら意外と食べれたけどお腹はパンパン。
そんな状態で動ける? なんて心配はご無用。ヒーリングを使えば食べ過ぎだってなんとできちゃうからね。
「ここがミナミンテレビなんだ」
ちょうどいいぐらいの時間にミナミンテレビに到着。ミナミンテレビの建物を見上げた香織さんが目をキラキラさせている。
「立派なビルですね」
新山先生も香織さんの隣でミナミンテレビを見上げている。
テレビ局に縁のない2人は興味津々って感じだね。
俺もミナミンテレビは数ヶ月振りだからちょっと懐かしいかも。
「中に入りましょう」
中山さんが手続きをしてくれて関係者入り口の方から中に入った。
案内してくれるスタッフさんは、やっぱりという今回も俺には挨拶どころか一度も目を合わせてくれない(みんなには丁寧)。
——そうそう、こんな感じだった。
思い出したらちょっと笑いそうになった。
「女性至上主義だからこんな感じなのかしら」
小声でそんなことを話したのは香織さんだ。香織さんはちょっと戸惑っていた。というのも、妊娠している香織さんには気遣いがすごく丁寧なんだ。
スタッフさんが素早く動き車椅子まで用意してくれたりしてね
空気を読んで(断るのが悪いと思った)香織さんはその車椅子に座ったようだけど、香織さんが座る車椅子を押すのもスタッフさん。
でもなぜか目を潤ませて感動しているように見えるんだけど、気のせいだろうか?
「こちらになります」
スタッフさんに案内されて楽屋の前まで来たんだけど、そのドアに貼られている張り紙を見てみんながホッとした表情をする。
『武装女子様・武装女子関係者様・楽屋』
「ありがとうございます」
今回は前回のようなことになっていなくてホッとした。
みんなで案内してくれたスタッフさんにお礼を伝えた後に中に入る。
「「「「わあ」」」」」
「広いですね」
「楽屋とはこんな感じなのですね」
「おお」
俺もびっくり。前回俺が案内された楽屋よりも数倍広くて高級感のある楽屋だったよ。
前回の楽屋に寛ぎスペースと小さな仮眠室、あとシャワールームが付いている感じ。
中山さんとミルさんは納得したように頷いているけど、俺は前回案内された楽屋との格差に戸惑ってしまったよ。
時間になればスタッフさんが呼びに来てくれるらしいけど、そんなにゆっくりしているヒマはないと思うからさっそく新しい衣装に着替えよう。
中山さんから新しい衣装を受け取ったサキたちは楽屋の奥で着替え、俺は手前の方で着がえる。
——ん?
「タケトくん両手を少し浮かせてね」
「タケト様、お任せください」
ミルさんと、座っていたはずの香織さんがすぐそばにいた。
——いつの間に!
着替えようとすると香織さんやミルさん、ネネさんが現れ世話を焼きたがり、断ると悲しそうな顔をするので、見つかった時は断ることを諦めるようになった……
「う、うん、ありがとう」
2人からされるがまま着替えを任せていると、
「ぁ……」
「……」
——あ、新山先生と中山さん……
何も考えずに任せていたけど、今日は中山と新山先生もすぐ近くに居たんだった。
でもすでに手遅れだ。今の俺はTシャツにパンツ姿なのだ。
見慣れていない2人の顔は真っ赤だ。2人ともハンカチを取り出して鼻の辺りに当てている。
ここはもう気づかなかったフリをしていた方がよさそう。
————
——
着替えが終わり、男装スタイルになったサキたちから髪型を整えてもらっているとドアをノックする音が響く。
こんな時は中山さんが素早く動いてくれるところだけど、生憎、ノボせてしまったらしい新山先生と中山さんは寛ぎスペースで横になっている。
ミルさんが代わりにドアを開けるとそこには見知った顔ぶれが。
「アニキ」
「アニさん」
「アンちゃん」
「タケ兄」
「「「「お久しぶりです」」」」
シャイニングボーイズのみなさんだ。というか、アイキさんも、カイキさんも、サイキさんも、タイキさんも、俺より年上なんだからアニキはやめてほしい。
「今日はよろしくお願いします」
「いや、うれしいな」
「俺っち、今日アンちゃんに会えるのすごく楽しみにしてたんすよ」
「タケ兄もお元気そうでなによりです」
4人がいっぺんに話しかけてくるから訳がわからない。でもそう思ったのも少しの間だけ。
「お前ら静かにしないか! 王子……こほん。タケトくんの前だからといってはしゃぎすぎだ……」
すぐにシャイニングボーイズのみなさんの後ろから南野マネージャーが姿を見せた。
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