第172話
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「タケトくん今日は遅かった」
「ごめんね。今日は帰り際に色々あって」
「帰り際に色々? じー……!? なんとなく分かった。もういい」
勝手に納得して首を振るアカネ。もしかして今ちょっと見ただけで何があったのか分かった? だとしたらアカネの観察力は凄すぎるよ。なんて事を考えていたら、
『タケト様、失礼します』
ミルさんが素早く動き俺の乱れていた服装を整えてからスッと離れた。
——な、なるほど。俺の服装が乱れていたのか……
「ホントごめんね」
今日の放課後も葵(西条)さんの会社にテレポートで飛ん来ているのだが、そのほんの数分前までは、クラスのみんなと帰りのハグをしていた。
ナナコと約束していたからだ。
ただ、その時の俺は、婚約者のサキ、ツクシ、サチコ、ナナコ、たちだけにするものだと考えていた。
だけど、あれよあれよと気づけば教室の出入り口付近に立たされていた俺は、名札をつけているクラスのみんなに、帰りのハグ(教室を出る際)をしていたんだ。
どういう事? とナナコの方に顔を向ければ、ありがとうと親指立てて頷いていたよ。
ナナコは初めからそういうつもりで言っていたのだとこの時初めて気づいたね。
嬉しそうに帰りのハグを求めてくるクラスのみんなを前にして、そんなつもりではなかったなんて言えるはずもなく、また明日と、笑顔で帰りのハグをしたよ。
まさか先に教室からの出て行ったはずの新山先生が後ろの方に並んでいるとは思わなかったけど。
最近は教室の雰囲気がちょっと暗くなっていたし、笑顔で帰っていくみんなを見て、やってよかった思ったよ。やっぱり女性は笑顔が1番だね。
なんかこっちまでうれしくなったし。
サンちゃんとタケヒトくん? 彼らは帰りのホームルームの途中で下校している。
これは女子生徒と下校時間をズラすためのもので、大勢の女子生徒に彼らが囲まれるのを防ぐためだ。
担当の先生と風紀委員が目を光らせているから問題は起きないと思うんだけど、今年の新入生には登校する予定の男子が数人いるらしく、学校側も慎重になっているみたい。
タケヒトくんの場合、風紀委員や担当の先生方以外にも婚約している堤先生が必ず校門まで付き添ってくれているようだけど、そんな堤先生にはさすがのサンちゃんも……
「ほらクソ女。そこ、あたしの場所だから、あたしの目の前でタケヒトちゃんに近づけると思わないのよん……ああん、もう。クソ女の後ろに隠れちゃってタケヒトちゃんの照れ屋さん」
「タケヒトちゃんと手、繋ぎたいの? クソ女はダメに決まってるでしょ。だってタケヒトちゃんと手を繋ぐのはこの、あ、た、し……ああん、もう。ポケットに手を入れちゃって、タケヒトちゃんの照れ屋さん」
「タケヒトちゃん、お別れのちゅーしましょう。濃厚なぶっちゅーよ。クソ女とはしたくないでしょからあたしが代わりにして、あ、げ、る……あぁん、もう。マスクなんてしちゃって。タケヒトちゃんの照れ屋さん」
……なんて絡んでいたりして、とても仲が良さそうなんだ。
だからクラス女子の中でも仲良くできる女性が見つかればいいのに、なんて思っているんだよね。
————
——
と、学校でそんな事があった訳だけど、アカネは別に怒っているわけではなさそうなので、この話題はすぐに終わった。
さっそく開発室に入ると目の前には、巨大なジオラマの世界が広がっている。何度見てもそのクオリティーの高さに驚くしワクワクして胸が高鳴る。
巨大なジオラマを横切り念力操作室に入ると、葵さんと開発チームの女性の皆さんとどこかで見たことのある男性が4人いた。
「彼らが『ぽっちゃり男子』の皆さんだね」
「うん。紹介する」
アカネがスタスタと歩き声をかけているが、彼らからの反応はない。
それもそのはずだ、彼らは今、操縦席に座りVRゴーグルをかけているのだ。
——今までになかったオモチャなだけに、やっぱり楽しいよな……
実は、俺がサイキックスポーツのイメージボーイになったからサイキックスポーツとしても申請してみることになっただけのことで、元々は誰でも操作ができて楽しく遊べるというコンセプトのもとに開発されていたサイキック、コントロール、ロボット。略してサイコロ。
全長30センチくらいの念力で動く小型ロボットだ。
それで俺には試作品だけど専用機が用意されていてタケト専用機『サイコロ・ブジン』という名前がつけられている。
ミルさんが量産型の『サイコロ・ps01』。見た目が違うだけで性能に差はないんだけどね。
ゴザル丸「この戦争を終わらせにきたでござる」
デス蔵「ほほう。では、見せてもらうですぞ。そのサイコロの性能とやらをですぞ」
ンゴ郎「ふふふ。勝手に2人で盛り上がっては困るンゴ。俺はサイコロ王になるンゴ〜」
だが氏「ふん。君たちの攻撃など……見えるっ、見えるんだが」
「むむ」
アカネは自分がプロディースした『ぽっちゃり男子』を俺に紹介したかったようだが、すでにVRゴーグルをはめて、自分たちの世界で楽しんでいる彼らに声をかけたところで応えてくれるはずもなく、アカネはしょんぼりと肩を落として戻ってきた。
「気にすることないよアカネ。これでバトルサイコロが、男性でも夢中になれる可能性のあるサイキックゲーム(スポーツ)だと分かったんだから、いいことじゃないか」
ちなみに彼らがやっているのばバトルサイコロという遊び方(競技)。
彼らの近くにある大きなモニターの中では迫力あるバトルが繰り広げられているが、実際のサイコロは巨大なジオラマのバトルスペースの中でポカポカ叩きあっているように見えたり、鉄砲のようなモノを構えているだけだから、見ていてもそんなに面白くはないが、前世のラジコンの様なモノだと思えば、ジオラマの方を見ていても不思議と楽しく思える。
モニターの四隅には彼らの念力量が表示されていてダメージを受けるとその念力量が減っていく。
ただし、バトルサイコロで気をつけないといけないのが、モニターでは鉄砲を構えたり(サイキックガンといい、レーザーみたいなビームが飛ぶ)、ポカポカ叩きあっている(サイキックソードといい、ビームソードみたいものが出現している)を使っても(攻撃しても)、念力量が減っていく仕組みになっているので無駄打ちをしていれば勝手に自爆してしまうこともある。俺も初めは無駄撃ちして自爆した。
「えっと、葵さんのチームもVRゴーグルをつけて早抜け迷路で競い合っているのか……」
早抜け迷路は2チームに分かれてどちらのチームが早く迷路を抜けるか競う遊び(競技)。
これはルールをまだ決めている段階で、普通に早く抜けた順番で勝敗を決めるパターンから、相手チームを妨害して、どちらかのリーダーが抜け出せれば勝ちなんてパターンも検討中だ。
「1番難しいコースを選んでいたから、もうちょっと時間がかかるかも」
「そっか、遅れた俺が悪いんだし、挨拶は後回しにして、俺たちもみんなが終わるまでサイコロを触って少しでも操作に慣れておこうか」
「分かった」
アカネが自分の専用機『サイコロ・シュオン』を定位置にセットして操縦席に座ったので、俺も同じく『サイコロ・ブジン』をセットして操縦席に着く。
「ミルさんもやりましょう」
ミルさんはなぜか初めから操作がかなりうまい。やはり念力操作がとんでもなくすごいからなのかな?
ミルさんの操作を真似るだけでも念力操作のいい勉強になるんだ。
「はい」
ミルさんもいつも使う量産型『サイコロ・ps01』をセットして俺の隣の操縦席に座ると、選んだ訓練ステージに三体のサイコロがすごいスピードで運ばれていく。
VRゴーグルは着けていてもいいのだが、慣れないうちはステージに着いてから着けないとすごいスピードで移動するサイコロの視界に酔ってしまい、訓練どころではなくなってしまうから気をつけなければならない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




