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第拾九之巻 明かされた真実

更新しました。最後まで読んでくれたら幸いです。再編集で一部文章を付け加えました。内容には変わりません。藤波真夏

翌朝。朝廷軍が攻めてきたと知らせが届く。また男たちは屋敷を出て行った。目の前に現れた朝廷軍---、と思った時意外な人物が前にきているのを見てしまった。

「浦波王さま?!」

 丹波は驚きを隠せない。それを聞いた陽は全てを理解している。しかも松風に対する仕打ちへの怒りよりもそれ以前に何かされたかのように憎悪がメラメラと燃えていた。自分でもそれが一体何なのか、分からない。

「行け」

 浦波王の一言で朝廷軍は勢いを増していった。これでは丹波たちは総崩れも避けられない。陽はそれでも懸命に闘った。その様子は浦波王にも見られている。

 その状況は屋敷に立て籠もる十六夜たちにも告げられた。

「何? 浦波さま自らご出陣?!」

「はい! このままでは総崩れも考えられます。逃げる方法を考えたほうがよろしいかと」

 すると屋敷の壁に矢が飛んできた。誰も怪我せずに済んだがもう敵はすぐそばまできていると考えるしかなかった。

「小百合・・・。どういうことだ?」

 奥から松風が真っ青な顔をしてこっちへやってくる。小百合はどう言えばいいのか、迷ってしまう。

「お父上が自らご出陣していると連絡が・・・」

 小百合は隠すことができなかった。松風のためでもあるが、小百合自身が許そうとしなかった。

「それはまことか?」

 松風は胸に手を当てた。

「僕は・・・死んでしまうのか?」

「そうはさせません! 松風さまは小百合が命に代えてもお守りいたします! そんな弱気なことをいうのはおやめください」

 小百合も必死だった。

「見て! 火が!」

 女が一人外を見て叫んだ。そこには火の海が広がっていた。アヤカシの森も燃え広がっている。あの中には丹波や鎌清、陽がいる。

「御前様・・・」

「鎌清・・・、そんな。嘘だ・・・」

 丹波を夫に持つ雅姫と鎌清を夫に持つ小百合が悲痛な叫びをあげる。死んでいないでほしいと願う姿。そして大切な人を失うというのはこういう気持ちなのだと小百合は悟る。

 十六夜はすぐに塀に登り外の様子を見た。そこに広がっていたのはあの夢と同じ真っ赤な炎。どんどん飲み込まれていく大地。

 十六夜の脳裏に蘇る悲しい記憶。でもその時の映像はすぐに途切れてしまう。きっとあの炎の向こう側に陽たちがいる。

「このままでは壊滅してしまう!」

 十六夜がそう思ったとき、体には水の力が高まっていることを感じた。清らかに流れる水。十六夜は決心して前を向いた。そして、

「カルラ!」

 十六夜が大声で呼ぶと大きな羽をばたつかせてカルラがやってきた。本物のアヤカシの姿に女たちは驚いて声も出ない。

「長たちは?」

「なんとか無事です。しかしこのままでは負けてしまう」

「カルラ。私をお前のその扇であの炎の向こう側にいる陽のところまで飛ばせるか?」

 カルラは驚きを隠せない。それを聞いた雅姫も十六夜に言う。

「あの炎の中? 無茶です、命を無駄にする気なのですか? 十六夜」

「無駄になんかしない。私はアヤカシだ。人間と同じにしてくれるな。それに私は水のアヤカシ。火には水がうってつけ、だろ?」

 十六夜の決意の瞳に雅姫は必ず戻ってきてください、と一言添えた。十六夜は頭を深く下げた。するとカルラの扇が縦に動き、十六夜の体がふわりと空中に浮く。

「このままあの炎の中で飛ばします。自らで体勢を維持してください!」

 カルラは最後に思いっきり振ると十六夜の体はものすごい風をまとって火が燃え上がる戦場へ飛んで行った。

 そこで十六夜が見たのはたくさんの兵士たちの屍。死臭が漂い十六夜の頭を使い物にならなくする。目を覆いたくなる光景だ。この中に陽がいなければいいが、と願った。

 十六夜は口元で術を唱えると大量の水をばらまいた。火は次第に弱まっていく。森に広がっていく火も少しは鎮火できた。

 すると少ない人数で戦いを挑もうとしている兵士の集団を見つける。

「陽?!」

 その中には陽と肩に風神丸、丹波と鎌清もいる。女たちの願いが通じて彼らは生きていることがわかった。周囲は炎に囲まれ逃げ場がない。

「ゴホッ」

「大丈夫か?」

 煙に喉をやられて咳き込む陽に肩に乗って心配する風神丸。風神丸も体はススだらけだ。

「心配ない。でもこれじゃ焼け死ぬ・・・」

 陽はついに死ぬときがきたのか、と思い始める。目の前には大きな存在の浦波王。彼に刃を向けることは朝廷を敵に回すということになる。

 陽にはまだその覚悟ができない。

 朝廷軍が丹波らのところへ接近し刀を振るいあげる。刀を抜くが虚しく相手のほうが早かった。

 やられる---!

 そう思った瞬間、目の前に青い一閃が通り過ぎる。瞬間兵士は気を失い隣に倒れていた。陽の顔には冷たい水が付着していた。

「水? まさか---」

 後ろを向くと十六夜が心配した顔で陽のところへやってきた。陽は無意識に空から降ってくる十六夜を受け止めようと手を上にあげる。十六夜を受け止めた陽は腕に閉じ込めたまま馬の上に乗せる。

「なんでこんな真似を」

「私はただ火を消しただけだ。そして無事を確認しにきた」

「無事?」

「戦場で炎が上がったとき、多くの者たちが大切な人の身を案じた。雅姫さまは丹波さまを小百合さまは鎌清さまを・・・。私はいてもたってもいられなかった。私は水を操るアヤカシ。何かの役に立ちたかった・・・」

 ススで汚れ傷のついた陽の顔は優しく撫でた。

「無事でよかった」

 十六夜は笑った。風神丸も十六夜の肩に移って頬ずりをする。言葉は発さなかったが風神丸なりの感謝なのだろう。

 そのとき風を切った。

 それを聞き抜いたのは十六夜と鎌清。十六夜は水を出し鎌清は刀を振り下ろした。すると矢がその場で綺麗に折れた。

 すると焼け野原の中に大群が。その大群をかき分けてやってきたのは、黒幕の浦波王だった。

「浦波王さま・・・」

「お前らに聞こう。なぜ、アヤカシの味方をする?」

 すると陽は言葉を返した。

「我ら人間が犯した罪に対する償いです。このようなことは絶対にあってはならない。俺はそう思うのです」

 それを聞いた浦波王は静かに笑った。そして刀を抜くと十六夜の首に差し向けた。

「?!」

「おい、アヤカシの女。もしや、いやもしかしなくてもお前だ。その瞳、文献通りだ」

「え?」

 何を言っているのか十六夜や陽たちにはわからない。浦波王は懐からあの水色の玉を取り出した。それを見た丹波はどこかで見たことがあると話す。そして、

「思い出した。あれは時空止めの玉。あの中に記憶を閉じ込めることができる伝説の宝だ。なぜここにある?」

 浦波王の出した時空止めの玉を見た十六夜の心臓が痛くドクンと跳ねた。そして頭を押さえて苦しみだした。

「どうしたんや?! 十六夜!」

 風神丸が叫んだ。十六夜は苦しみのあまり馬から落ちてしまう。すると時空止めの玉の力なのか十六夜の体は宙に浮く。不敵な顔をした浦波王は言う。

「やはりこの記憶の主はお前か、十六夜とやら」

「うっ、うううっ・・・。やめ、ろ・・・。離せ、鬼・・・め・・・」

 苦しむ十六夜にはこの言葉を紡ぐのが精一杯だ。陽は助けようと近づくが何かの力が働いて近づくことができない。

「十六夜!」

 陽は叫ぶが十六夜は答える余裕もない。さらに丹波が弓で矢を何本が放つも意味はなく、鎌清が刀を振り回しても意味はなかった。

「彼女になんの恨みがある?! 浦波王!」

「ある文献の中にあるものを見つけた。『かつての大君はある者の記憶をこの玉に封じた』と。その主が見つかった。この女だ! でもこの女はアヤカシではない」

 陽と風神丸、その場にいる全員に戦慄が走る。

 十六夜がアヤカシじゃない? 一体どういうことだ?

 言葉を言い出せずにいると浦波王が笑って口を開いた。

「わからぬか。では教えてやろう。この女の緑色の瞳、そしてヒスイの首飾り。これは神である証。緑は神そのものを指すのだ。つまり、こいつはアヤカシでもなければ人間でもない---」

 浦波王は十六夜の硬直を解いた。すると十六夜の体は地面に無造作に叩きつけられた。咳き込む十六夜をまるで卑しい存在のように見つめて言う。



 この女は闇美津波姫クラミツハヒメ。かつて我らの先祖が神滅した水神、瀬織津姫の直系の力を受け継ぐ水神の、いやこのヒノモト唯一の神の生き残りだ---。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。よーやく一息つけます。でもまだ完結には至っていないので、頑張ります! 感想、評価等よろしくお願いします。藤波真夏

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