13.デートだって…?
雨で何度か一緒にバスで登校したが、特に進展はなく…
気付くと梅雨も明け、ジリジリと暑い日差しが降り注ぐ日々に。
そして、あっという間に夏休み前日になっていた―
―麻琴Side
教室に入ると、あちこちで明日から始まる夏休みについての話が聞こえてくる。
兄・颯汰からの伝言を伝えるため、朝陽の席に向かうと、彼もまた友だちと夏休みについて話をしていた。
「朝陽くん、話してるところごめんね。放課後、委員会あるから3年3組の教室に集合してほしいって」
「了解。 他のクラスにも伝えたの?」
「結月には伝えたよ。1組と2組にはこれから行く予定」
「じゃあ、俺1組行くよ」
話していた友だちに「ちょっと行ってくる」と合図をして席を立つ朝陽。
「ありがとう。」
(朝陽くんと一緒でよかった~ 他のクラスに言いに行くの緊張したからありがたい。 話しやすいし、手伝ってくれるし、いい人だな~)
―
委員会の話は、体育祭で三学年の同じ組でチームになりダンスを披露することと、そのための練習が夏休みにあるので、場所とスケジュールを確認して、クラスに伝えてほしいとの事だった。
「とりあえず、仮で作ったスケジュールがあるから、それぞれメモしてください。変更あったらまた知らせるから。写真撮ったり、メモした人から帰っていいからね~ じゃあ、1組から…」
夏休みの練習スケジュール表を颯汰が教壇の上に置いて、順番に案内する。
スケジュール表の写真がちゃんと撮れているか確認し、朝陽にクラスの皆にどうやって連絡をするか相談すると、
「クラスへの連絡は俺がやるよ。今日、スケジュール表送信して、前日にまた連絡するってことでいいかな?」
朝陽がスマホを見せながら提案してくれた。
「ありがと。それじゃあ、連絡は交互にしない? 二回目の練習の前日は私が連絡回すよ」
全て任せるのは申し訳ないので、そう言うと朝陽はニコッと笑いながら「オッケー」とポーズを交えて言う。
(朝も思ったけど、やっぱ朝陽くん優しいなぁ 安心だわ)
朝陽と連絡の回し方について話がまとまると、スケジュール表を確認した柊斗と結月が戻ってきた。
「それいいね! 柊斗くん、私たちも二人の真似して交互に連絡回さない?」
私達の会話が聞こえたのか、結月が柊斗に提案すると、柊斗はカバンを肩に掛けながら
「…わかった。 じゃあ、今日は俺がやるから」と返事をする。
その返事に「よろしくお願いします。」と結月が返して、流れで四人で教室を出た。
―
「じゃあ、みんな部活頑張ってね」
下駄箱へ向かう三人に手を振り、私は約束があるので、階段へ向かう。
「はーい! 麻琴はデート楽しんできてね!」
「デートって…」(また揶揄って…)
ニコニコしながら「いってらっしゃーい」と手を振る結月の後ろで、朝陽は驚き、柊斗は固まっていた…
気がした。
「そうだね。 楽しんでくる! じゃあね」
揶揄う結月に合わせて返事をし、待ち合わせ場所へ向かう。
―柊斗Side
今回の委員会も四人で一緒に行くことに…
前を歩く麻琴と結月は、楽しそうに夏休みについて話している。
(夏休みか… 顔見るの減るな…)
そんなことを考えながら、前を歩く麻琴を見ていると…
「そんなに見てたらバレるぞ」
コソッと朝陽に耳打ちされた。
恥ずかしさから思わず朝陽を睨むと、朝陽はシシッといたずらに笑っていた。
―
教壇の上の練習スケジュール表を撮り、席に戻ろうと振り向く。
「―…」
委員会についての話とは分かっているが、麻琴と朝陽を見てモヤモヤ…
朝陽と話しながら微笑む麻琴の顔に胸がざわめく。
(もし、この委員会がきっかけで麻琴が朝陽に惹かれたら… 朝陽はいい奴だし、その可能性がないとは言えない。 でも朝陽は俺の気持ち分かってるから、もしもの事があっても断るだろう… そうなったら麻琴が悲しむ… いや、それよりも朝陽が惹かれる可能性も…)
ポーカーフェイスを保っているが、二人の様子を見て内心穏やかではない… むしろ、大荒れである…
これ以上二人が一緒なところを見ると、冷静ではいられなさそうなので、帰ろうと、カバンを手に取る。
すると、結月が自分たちも二人のように連絡を回そうと言ってくる。
麻琴がいる手前、結月に対して、なるべく冷たい言い方にならないようにと軽く息を吐き、気持ちを落ち着けて返事をした。
(大丈夫だったよな? 普段通りのトーンだったよな…)
そして流れるように四人で教室を出る。
(もう委員会の集まりの時は、これが定番化してほしい…)
―
「じゃあ、みんな部活頑張ってね」
同じように校舎を出ると思っていた麻琴が、下駄箱前で手を振りながら言ってきた。
何か用事でもあるのかなと思っていると、結月が「あっ、そっか」と思い出したように
「はーい! 麻琴はデート楽しんできてね!」
と笑顔で手を振る。
(!?!?!?!?!?……デート?)
ドクンとなった心臓がギュッと締め付けられた…(デート…?)
横から小さく「えっ…」驚く朝陽の声が聞こえる…
「デートって…」と呆れ笑いのような顔で言いながらも、少し嬉しそうにも見える麻琴の表情を見て、動けなくなった…
そして、麻琴からのトドメの一言……
「そうだね。 楽しんでくる!」
そう言いながら階段の方に振り向き歩いて行く麻琴の姿が、スローモーションのように見えた…
(―……相手は? 周りに男がいる気配はなかったはず… 朝陽も何も言ってなかった。
ということは、違うクラス?先輩? 誰と…… どこに?)
動けずに、頭の中でいろいろ考えていると、隣から結月に質問する朝陽の声が聞こえる―
「あの~…結月さん? デートって……」
ニコニコと麻琴に手を振っていた結月に朝陽が聞くと、靴を履き替えながら悪戯な笑顔で答える。
「ん? あ~、同じクラスの相原天音って子とカフェに行くんだって~」
「「―……?」」
(あいはら あまね? 女か? いや、男って可能性もまだ残ってる…)
「最近仲良くなったらしくて、なんでも同じキャラが好きってことが判明して、そのことについて語るんだーって嬉しそうにしてさ~」
フフッと嬉しそうに、楽しそうに笑いながら言う結月。
朝陽が「…あー なるほど…そういえば最近、仲良さそうにしてたな」と呟く。
結月は満足そうな悪戯な笑顔を浮かべながら、俺に向かって
「安心して、女の子だから! じゃあ、二人ともまたね~」と手を振り歩いて行った…
(……やっぱり苦手だ…)
いつからか、結月から揶揄われているように感じることが増えた。
(男じゃなくてよかったー…)
安心と、結月に揶揄われた恥ずかしさから、前髪をくしゃっと掻き上げながらため息をつくと、朝陽が肩にポンと手を置いてきた―




