12.雨の日は…
―麻琴Side
「麻琴~」
梅雨に入り、今日も朝から雨。
いつもは自転車で行っている兄・颯汰も、今日はバスで登校することにしたようで一緒に行こうと玄関から呼んでくる。
「お待たせ」
「じゃあ、湊のところ行くぞ~」
「は~?二人で行くんだったら、待たなくてよかったじゃん」
「そう言うなって じゃあ、いってきまーす」「…いってきます」
(気まず…)
藍葉家に行くと、湊と一緒に柊斗も出てきて、四人でバス停へ向かうことに…
颯汰と湊が話しながら前を歩き、その少し後ろを柊斗が、さらにその後ろを私が歩く。
(ゆづ来てないな…)
いつもは先にバス停に着いている結月がいない。
その時、ピロンと通知音が鳴り確認すると、結月から今日は学校を休むという連絡だった。
(マジか… 正直、今日は特に居てほしかったよ…)
気持ちを抑えて結月に返信をしているとバスが来た。
雨ということで、いつもより乗る人が多い。
「そういえば、結月ちゃんは?」と聞く颯汰に休みの連絡が来たことを伝える。
「そっかー 寂しくないか? 一緒に弁当食べる人いる? 教室迎えに行こうか?」
私の頭に手を置き、顔を覗き込むように言ってくる颯汰。
「一緒に食べる人いるから」
颯汰から顔を背けると、そこには柊斗が…
とは言っても、身長差30センチなので目線は柊斗の腕。
―
いつもより人口密度高めなバスを降りると、解放感を感じた。
「麻琴、わざと俺に体重かけてただろ…」
「(バレてたか…)そんなことはありません。雨でバランスが取れなかっただけです。」
バスに乗っている間、何となく颯汰に揶揄われているような気がしたので、わざと体重をかけたり、ぶつかったりしていた。
「柊斗、さっきごめんね。腕大丈夫だった?」
後ろから柊斗が追い越そうと隣を通ったタイミングで声をかけた。
バスの中で柊斗の腕に頭がぶつかり、謝りはしたが、顔を逸らされたのでちゃんと確認したかった。
「軽く当たっただけだから大丈夫」
「よかった~ 顔逸らされたから怒ってるかと…」
「違う! あれは… 朝起きたらちょっと寝違えてて、左向くと少し痛かったから…」
少し焦った様な声で言うので驚いたが、理由を聞いて納得した。
「そっか~(寝違えたって知られるの恥ずかしいのかな?) 今はもう大丈夫なの?(左向いてるけど)」
「…いつの間にか治った」
そう言いながら口を手で覆い、前を向く顔は傘であまり見えなかった。
―柊斗Side
雨が降っていて自転車で行けないので、今日はバスで登校することに。
「湊~」
颯汰の声が聞こえて兄・湊と一緒に家を出ると、颯汰に掴まれた麻琴もいた。
「おはよ… って、なんで颯汰は麻琴ちゃんを掴まえてるの?」
「一緒に行こうって言ってるのに、お前ら待ってる間にしれ~っと先に行こうとしたから」
「なるほど… 麻琴ちゃんおはよ」
「おはようございます」
傘であまり顔は見えないが、少しため息交じりの声から、颯汰の行動に呆れを感じている気がした。
(視線がウザい…)
左には麻琴が立っている。
チラッと麻琴を見るとその隣にいる颯汰と湊のニヤついた顔が視界に入ってきて、正直ウザい。
麻琴とは頭一個分以上の差があるので、横を向くと颯汰と湊の顔がよく見える。
「そっかー 寂しくないか? 一緒に弁当食べる人いる? 教室迎えに行こうか?」
結月が休みと言うことを聞いた颯汰が、麻琴の顔を覗き込むように話しながらチラチラ俺の顔を見てくる。
「一緒に食べる人いるから」
フイッと颯汰から顔を逸らすように麻琴が右を向く。
キーッ バスが停止すると、少しバランスを崩した麻琴の頭が俺の腕に軽く当たった。
「ごめん」
驚いた顔で見上げながら麻琴が小さく謝る。
「大丈夫」(この距離で見上げられるのは…)
その様子を見ていた颯汰と湊が、生温かい視線を送ってきていたので、麻琴から顔を逸らすように反対側を向く。
バスを降り、麻琴を追い越そうと横を通ると呼び止められた。
「柊斗、さっきごめんね。腕大丈夫だった?」
「(さっきも謝ってくれたのに、こうして気にするところがいいんだよな…)軽く当たっただけだから大丈夫」
「よかった~ 顔逸らされたから怒ってるかと…」
安心した顔を見せたながら、ボソッと言う麻琴を見て焦った。
「違う! あれは…(何とかごまかさないと…) 朝起きたらちょっと寝違えてて、左向くと少し痛かったから…」
頭を回転させて出た苦しい言い訳だったが、麻琴は納得したような顔をしたので、なんとかごまかせたかと胸をなで下ろす。
「そっか~ 今はもう大丈夫なの?」
(あっ、今左向いてるわ…)「…いつの間にか治った」
上がりそうな口角を抑えるように手で覆い、チラッと横を見るが、傘しか見えない。
(下から見えてないよな…)
…
二人の少し前を歩く兄たちは、いい雰囲気を背中で感じ
「たまには雨もいいな」「明日も降るかな」
と話していた…




