10話『戻ってきた日常』
「――恋ね!」
「――恋だな」
俺の話を一通り聞いた二人は口を揃えて俺の症状を口にする。
「いや、なんでそうなるんだよ!」
俺はノクトに詰め寄ると、マシンガントークが始まった。
「ジークの症状は本に書かれていた内容と酷似する点が多い。心音の早まりや常に相手のことを考えてしまう状態、否定を繰り返すその様、その対象が心の中心になって他のことが覚束なくなる。それは正に――」
「――わかった、わかった! ノクトが正しい。」
まぁ、ノクトにこうも言われるのだから多分そうなのだろう。
……ただ、本の知識をそのまま当てはめられるのは抵抗がある。
もう一人の理由も一応聞いておきたいが……恐らくダメだ。
「わー! きゃー!」言っててよくわからないことを繰り広げている。
……女子らしい一人妄想トークだ。
そんなエリシアからゆっくり目を離すと、ノクトは少し考え込んでいた。
「それにしても、金髪で藍色の瞳……。そしてクラリスという名前。王女様と特徴が同じだ」
「王女? いや、流石にそれは考えすぎじゃないか?」
この国に王女がいることは子どもの俺でも知っている。
ただ、王妃が流行り病で亡くなって以来、国王は遺された娘を表舞台にほとんど出していない。
だから、俺は王女の名前も容姿もわからない。それはエリシアだって同じだ。
城に軟禁されている王女。
そんな子がこんなところまで一人で来るとは思えない。
――ただ。
ずっと城の中での生活を強いられるなんて、きっと俺なら耐えられない。
この国には綺麗なものや楽しいことがたくさんある。
ちょっとは外の景色を見せてあげたい、そんなことは考えてしまう。
「……まぁジークの言う通り僕の考えすぎだな。とりあえず、今日はもう遅いし帰ろうか」
「そうだな、話に付き合ってくれてありがとう」
「気にするな、偶には勉強の息抜きも必要だからな」
ノクトは頭でっかちで変わったやつだけど、いいやつだ。
俺たちは似てないが間違いなく友だちだ。
「……さて、それよりもノクト。あいつのあれはいつまで続くんだ?」
「……さぁ、女心はわからんと俺の父さんですらお手上げだからな」
エリシアの妄想はいつの間にか、「いやん」だの「それは早い」だのとよくわからない域に達しているのであった。
まぁ二人と話していたら、なんだかいつもの調子が戻ってきたのは確かだ。
二人には感謝しなくちゃいけないな、俺はそんな事を考えながら家に戻った。




