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男爵令嬢は断罪されたい~不幸を換金していたら冷徹公爵に捕まりました~  作者: ほしよみ


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第12話 クロード2 言われ慣れている言葉、だが……

翌朝。

いつもの時間。


クロードは執務室で書類に目を通していた。

正確には、目を通しているふりをしていた。


時計を見る。

まだ来ない。

もう一度、時計を見る。


「……」


いつもなら、とっくに扉が開く時間だ。


(遅い)


体調でも崩したのか。

昨日、俺が何か言っただろうか。

いや、それとも……。


クロードは書類を置いた。

時計を見る。

また見る。


(……遅い)


自分でも、なぜこんなに気になるのか分からない。

ただ、いつもそこにいるはずの人間がいない。

それだけのことなのに。

胸の奥が、妙に落ち着かなかった。


そして、髪を触る。

いつものように髪を整えた。

……いや。

正確には、少しだけ念入りに。


「……何をしているんだ、俺は」


自分で自分に呆れた、その時。


カチャ。


扉が開いた。


「おはようございます」

エレノアだった。


エレノアは何も知らない顔で、自分の席へ向かう。

そして、いつものように皆のために軽食を用意するのだろう。


少し腹が立った。

思わず、エレノアの席へ向かう。


「ちょっと、こっちへ来い」


自分でも、苛立っているのが分かる声だった。

エレノアと二人きりでいたい。

そんな思いがあったのかは分からない。

ただ、給湯室まで連れてきた。


誰にも邪魔されたくなかった。


「なぜ、今日は早く来なかった?」

(俺がいるのが分かっていて、なぜ早く来ない?)


「何かあったのか? 気分が悪いのか?」

(そうか、出先で何かあったのかもしれない。

いや、体調が悪くて起きられなかったとか?

えっ?まさか……)


考えたことなどなかった。

だが、もしかしたら。


(まさか……俺との時間が嫌なのか?!)


「俺との時間が不快だったのか?

昨日のシャツが気に入らなかったか?

それとも、分け目を少しセンターに寄せたからか?」

(しまった……。

ルシアンのギャップ萌えを意識しすぎたのか?!

アイツ、死刑決定だ)


「室長……本日は定刻で間に合う仕事量でした

ので……」


エレノアはぽかんと口を開け、目を丸くして答えている。


(しまった! 考えすぎた!)

(落ち着け、俺。大丈夫だ)


「……そうなのか?」

「室長は、いつもかっこいいです。

昨日の室長は普段と違う感じで、素敵でした」


「……」


(何だと?!

かっこいいだと?!

しっかりしろ!

言われ慣れている言葉だ。

動揺するな。

何だ、これは。

嬉しいという感情なのか。

抱きしめたい。

ダメだ。

ダメダメダメダメ)


(落ち着け)


「そう、か」


ようやく絞り出した声は、いつもより一段低く、

微かに嬉しさに震えていた。


「別に、狙ったわけではない」

(髪型、気づいてもらったぞ)


「昨日、寝坊して、いつもと同じ手順が踏めなかった

だけだ」

(明日もしてやってもいい)


「決して、意図的に、その……印象を変えようと……」

(ルシアン、でかしたぞ! 報奨金を出す!)


「室長? 大丈夫ですか?」

(しまった!

エレノアが不思議そうに俺を見ているじゃないか!)


「大丈夫だ! 問題ない!」

(お前をもっと喜ばせてやるからな)


「さぁ、仕事の時間だ!」

(何だか嬉しくて、今日はどんな書類でも片付けられそうだ!)

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