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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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「高橋の自白」

事件から約一年後・冬 午前10時〜午後5時 

高橋雄介は、取調室の椅子に座っていた。

昨日の任意同行から一夜が明けていた。弁護士が来た。国選だった。三十代の男だった。高橋は弁護士と少し話した後、「話します」と言った。

早瀬は録音機器のスイッチを入れた。

「動画を作ったのはあなたですか」と早瀬は聞いた。

「はい」と高橋は答えた。

「作り方を教えてください」

高橋は説明した。さやかのSNSに残っていた音声、過去のライブ配信のアーカイブ、通話の録音。それらを素材にした。AIのツールは無料で公開されているものを使った。顔は写真から生成した。一週間かかった。

「なぜ作りましたか」と早瀬は聞いた。

高橋は下を向いた。

「別れたくなかったから」と言った。

「それが動機ですか」

「最初はそうじゃなかった」と高橋は言った。「別れを告げられた時、怒りがあった。自分が何も悪くないのに捨てられたという気持ちがあった。そのうちに、懲らしめてやりたいという気持ちになった」

「懲らしめる」

「困らせてやりたいと思いました」と高橋は言った。「動画が広まれば、さやかさんが困ると思った。職場で噂になれば、困ると思った。そうすれば自分のところに戻ってくるかもしれないとも思っていた」

早瀬は高橋を見た。

三十二歳の男が、そこにいた。計画的な悪意ではなかった。衝動と錯覚が積み重なった末の行動だった。しかしさやかの被害は現実だった。三百万回再生された動画は現実だった。さやかが「消えたい」と思った夜は現実だった。

「動画が広まった後、さやかさんがどうなったか知っていますか」と早瀬は聞いた。

「ニュースで見ました」と高橋は言った。「休職したと」

「それを見てどう思いましたか」

高橋は黙った。

長い沈黙があった。

「怖くなりました」と言った。「こんなことになるとは思っていなかった。三百万回なんて思っていなかった。少し広まって、さやかさんが私に連絡してくるぐらいになればと思っていた」

「しかし止めなかった」

「止め方が分からなかった」と高橋は言った。「一度広まったものを、どうやって止めるか分からなかった。だから何もしなかった」

何もしなかった。

その言葉が、早瀬の頭に残った。

止めようとして止めなかった拓海と、止め方が分からなくて何もしなかった高橋。動機も計画性も違う。しかし結果として、被害者が傷ついたという事実は同じだった。

「さやかさんに言いたいことはありますか」と早瀬は最後に聞いた。

高橋は顔を上げた。

「謝りたい」と言った。「でも、謝って許してもらえるとは思っていません」

「謝罪と許しは別の話です」と早瀬は言った。「さやかさんがそう言っていました」

高橋はその言葉を聞いた。

目が赤くなった。泣かなかった。しかし目が赤くなった。

取調室の蛍光灯が、白く静かに光っていた。


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