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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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「早瀬の次の事件」

事件から数ヶ月後 午前9時〜午後6時 

デスクに新しい書類が置かれていた。

朝、署に来ると桑田がすでに画面を開いていた。「昨夜、新しい案件が入りました」と言った。「早瀬さんに見てもらいたい」

早瀬は書類を取った。

A4用紙が三枚。タイトルに「AI生成コンテンツによる名誉毀損疑い案件」とあった。

読んだ。

概要はこうだった。都内の三十代女性が、自分に似た声と顔のAI生成動画をSNSに投稿され、性的な文脈で拡散された。本人が削除申請をしても、別のアカウントから再投稿され続けている。二週間で三百万回再生された。本人はすでに職場を休職し、外出できない状態になっている。

早瀬は書類を置いた。

また始まっている、と思った。

「ディープフェイクか」と早瀬は聞いた。

「そう思われます」と桑田は答えた。「顔と声を別々に学習させて合成している。今回はAI音声だけでなく、映像も使われています。技術的には今回の拓海案件より高度です」

「被害者は」

「氏名は非公開で相談が来ています。ただ、SNS上では本名が特定されかかっています。早ければ今週中に完全に特定される可能性がある」

早瀬は立ち上がった。

「会いに行く」と言った。

午後、被害者の女性と面会した。仮名で対応した。三十四歳。目の下に影があった。眠れていない人間の顔だった。

話を聞いた。

二週間前、友人から「あなたに似た動画が出回っている」と連絡があった。見た瞬間に自分だと分かった。声も顔も自分だった。しかし自分はそんな動画を撮っていない。

「誰かに心当たりはありますか」と早瀬は聞いた。

女性は少し間を置いた。

「元交際相手です」と言った。「三ヶ月前に別れました。その後から、嫌がらせが始まりました。最初はメッセージでした。次に職場への電話。そして動画です」

早瀬は頷いた。

「動画を作るような技術を、その人物は持っていますか」

「IT関係の仕事をしています」と女性は言った。「プログラミングができると言っていました」

早瀬はメモを取った。

帰り際、女性が「この案件、解決できますか」と聞いた。

早瀬は女性を見た。

「やります」と言った。「できると言えないが、やります」

女性は何も言わなかった。しかし目が少し変わった。

署に戻った。

桑田に「元交際相手の情報を洗ってくれ」と言った。桑田がキーボードを叩き始めた。

早瀬は自分のデスクに座った。

窓の外を高速道路が走っていた。車が流れていた。止まらなかった。

また始まっている。技術は進む。手口は変わる。しかし被害者の顔は変わらない。眠れない目、声を奪われた怒り、誰かに話を聞いてほしいという気持ち。

それは変わらなかった。

早瀬はキーボードに手を置いた。

次の書類に向かった。


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