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証言者は、あなたです  作者: やはぎ・エリンギ


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100/100

「証言者は、あなたです」

最後に、一つだけ。

この物語を読み終えたあなたに、伝えたいことがある。

柏木真司は死んだ。

それは変わらない。何があっても、変わらない。彼の七歳だった娘は九歳になった。彼の妻は法廷に立った。彼の名前は記録に残った。しかし彼は戻らなかった。

久我山拓海は服役している。水野アカリはNPOで働いている。早瀬凌は今日も動いている。桑田は防ぐ側で働いている。加奈子は前を向いて歩いている。彩は版画を刷り上げた。

それぞれの時間が、続いている。

しかしこの物語は、彼らだけの話ではなかった。

七万八千件のタグを送った人間たちの話でもあった。スレッドを読んで閉じた人間の話でもあった。「かわいそう」と思って何もしなかった人間の話でもあった。コメント欄に一行打った人間の話でもあった。配信を見ていた四千二百人の話でもあった。

あなたの話でもあった。

証言者とは何か。

裁判において、証言者とは事実を知っている人間のことだ。見た人間、聞いた人間、そこにいた人間のことだ。

あなたはこの物語を読んだ。読んで、知った。柏木が死ぬまでの七日間を知った。アカリの五年間を知った。拓海の憎悪を知った。加奈子の法廷を知った。彩の作文を知った。さやかの「消えたい」という夜を知った。

知った人間は、証言者になる。

証言者には責任がある。知ったことを、どう扱うかという責任がある。

次に炎上が始まった時、あなたはスマートフォンを開く。トレンドを見る。スレッドを読む。その瞬間に、あなたはもう知っている。画面の向こうに人間がいることを。言葉が刃になることを。七万八千分の一がゼロではないことを。

知った上で、あなたは何をするか。

この物語は答えを出さない。答えを出せるのは、あなただけだ。

早瀬凌は今日も書類に向かっている。水野アカリは今日も誰かの声を聞いている。柏木彩は今日も学校に行っている。そしてどこかで、また新しい動画が投稿されようとしている。

その時、あなたはそこにいる。

傍観者として。参加者として。あるいは止める人間として。

どの立場であっても、あなたはもうこの物語の外にいない。

証言者は、あなたです。

あなたが今日、何をするかを、この物語は静かに待っている。


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