悪役令嬢の秘密No.2
翌日からティア様を探し出して見つけては作戦を練っていじめた。私は侯爵、ティア様は子爵と身分では私が上なだけにやりやすくティア様が元平民だっただけに、いじめる理由に不自然さは生み出されなかった。
「何をやっている!」
「ロ………ナダム様」
いじめる度来るのはロイエ様で、ティア様はちゃんと分を弁えているのか人前や私の前でロイエ様の名を呼ぶことはない。
私がいじめればいじめるほど二人の距離は近くなり、狙い通りとなった。反対に私はロイエ様との距離はますます広がり、その状況が身内にバレるのも時間の問題。
けれどもそれ以上に困ったのは弱まるばかりの自分の身体。
いじめを始めてから知ったが、いじめるのも案外楽ではなくていじめる体力もそうだけどロイエ様に叱られる度に覚悟はしているはずなのに精神的の負担も大きく身体は益々重くなるばかり。
「げほっごほっ」
無理に学園に通っているのもあり、いじめは早くロイエ様に来て止めてもらうためにできるだけ人のよく通る場所で行うようにしている。そして怒りを見せるロイエ様を無視して逃げるように人気のない場所を探しては血を吐くのが毎日のことで、いつか誰かにバレやしないかと不安ながらも身体の限界はどうしようにもできない。
身体のあちこちが痛いばかりか頭痛もして毎日が限界との闘い。
「まだだいじょ………ごほっ」
味方もいない私。ティア様をいじめるのは私ただひとりでいじめる度に周囲の目は冷たくなる。おかげでロイエ様が婚約の解消がしやすい状況にはなっていっていると安心できる。
こんな#最低な女__私__#婚約を解消されても当然だと。誰もが納得するだろう。私に同情なんて要らない。
だから早く何もできなくなる前に婚約を解消してほしい。身内の邪魔が入る前に。
そう思いながらティアをいじめて残りの命7ヶ月。私にとって最悪な事件が起こる。事件は大袈裟かもしれない。
けれどついに血を吐いて地面に座り込む姿が目撃されてしまったのだ。二番目に見られたくないティア様に。
「ホープ様!」
「なん……っげほっごほっ」
なんでこんなところにと言葉にしようにも咳が邪魔をする。今こそ気をしっかり持たなければいけないのに。
「ち……口か、ら、血が!」
普段普通に生活する中で血を吐く人なんて医者でもなければそうそう見るはずもない。だからこそティア様は今のこの状況に動揺している。
あまりに顔が真っ青でどちらが病人かわかったものじゃない。
どちらにしろこれでは誤魔化しようもなく、私は止まぬ咳をしながら助けを呼ぼうとしたのか一度座り込んだティア様が立ち上がろうとしたのに気づいて、腕を弱々しく掴んでは首を横に振りながらどうするべきかを必死に考えるのだった。