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異形の冒険者  作者: まる
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新装備のお披露目

【奴隷編 新装備のお披露目】


つい一週間前に来た装備屋の扉をくぐる・・

セッチはウォックとズウェイトの肩を、力いっぱい抱きしめてUターンする。


「セッチ様・・?」

「どうしたのですか?」

「ごめん、お店を間違えたわ!」

「「えっ!?」」


そんな筈はない。店の看板も前回来た時と同じである。


「いい? 世の中には見ちゃいけないモノっていうのが存在するのよ! 世の中には知らなくても良い事が、山の様に有るのよ!」


見てはいけないモノ? 中には色々な装備と、店長が居ただけのはず・・


「ちょっと待てやぁ!? 見ちゃいけないモノって言うのは俺の事か!?」

「「こんにちは、おじ様」」


先日の一件から、自分を装備屋のおやじとでも呼べと言われていた。

そこでセッチはおっちゃん、ウォックとズウェイトはおじ様と呼んでいた。


「お、おう」


嬉し恥ずかしなのか、若干顔が赤く鼻の下が伸びニヤついている。


「見なさい! あれよ、あれ! キモっ!って感じ!」


先陣を切って、3人が店に入った時に見た、待ってましたとばかりの笑顔・・

ヤバい! 犯罪者の臭いがする、犯罪に巻き込まれると逃げ出したのである。


「誰がキモいだ、誰が!」

「でもおっちゃんが、笑顔を浮かべるとホント危ないから止めてくれる?」


2人のやり取りを、苦笑いで見守るウォックとズウェイト。

たった一日で此処まで距離が縮まったのである。


アザゼルただ一人蚊帳の外、店の外で事の次第を見ていただけ。




セッチは仕方なく、渋々店の中に入って行く。

自分の装備の初お目見えだけに、ウォックとズウェイトはウキウキである。


「本当に冗談じゃないけど・・、それはさて置き、装備を見せてもらいましょう」

「うぉい・・」

「「セッチ様!」」


話が進みませんよ、と年下二人は頬を膨らませ、セッチそっちのけで装備を確認する。


「まずウォックの嬢ちゃんからな」

「はい」

「まず、その場で・・、跳べ!」

「は・・い?」


あまりに意外な一言で、対処しきれなかった。


「いいから・・、跳べ!」

「はぁ・・」


天井を見上げる。この高さ・・


獣人族の身体能力を生かした跳躍なら天井に頭をぶつける。

仕方なく空中で反転して天井に、トンと着地して床に戻る。


「全力か?」

「はい」


ウンウンと頷いて、装備を渡す。


「こいつはブラックパンサーってモンスターの革を使って作ったもんだ」


前のと同じ胸当て、小手、ブーツだが、こちらは色合いが黒である。


早速装備させて、前と同じ事をさせる。


「じゃあ、もう一回やれ」

「はい」


前回同様空中で反転・・


どごーん


天井をぶち抜いてしまう。


「ご、ごめんなさ・・」

「おっしゃぁあ!」

「(ビクッ)」


逆さまの状態で謝ろうとするウォックそっちのけで、雄たけびを上げる。


「良いか良く聞け! ブラックパンサーの装備は瞬発力が僅かだがアップする特性がある。結果として今みたいな跳躍力や加速もアップされる」


どんなもんだいと高笑いをして、壊れた天井はどうでも良いと言った様子である。

若干・・、いやドン引きで天井から降りてくる




コホンと咳払い一つ、装備屋の親父は、次の獲物をギラッと見る。


「続いてズウェイトの嬢ちゃんだ」

「・・はい」


先の一件を見ているだけに、かなり腰が引けている。


「鳥系と言うのは如何しても小さい。装備に使える素材も十分に揃えられん」

「そうなんですか?」


巨鳥系のモンスターは居るが、ランクが高くダンジョンでも深層に現れる。


「ランクEでは巨鳥系は居ないが、比較的でかいモンスターは数少ないが存在するんだ。しかも仮面のそいつが、複数同じのを持っていたから尚の事好都合だった」

「へぇー、知りませんでした」

「嬢ちゃんの同僚が持ってたのがその一つ、グレートイーグルで色は赤だ」


動物は本来、身を守るため、身を隠すため保護色を持つ。

しかしモンスターの上位は当てはまらない。何故か能力や性質に応じた体色となる。


アザゼルはわざわざこのような事をする理由に思い当たる。

この世界の管理者が、人の欲を煽って種族間の争いから逸らそうとした策の一つだろう。


「鳥系は総じて風との相性が良い。ただ赤は凶暴性を表すんだがな」

「・・・えっ」


こちらも前と同じ鎧、小手、ブーツを装備した後、その言葉を聞いて冷や汗が流れる。


ぶぼわぁ。風の精霊のコントロールを失って暴れ出す。


「ご、ごめんなさーい」

「おほぉぉ!」


暴風が暴れ回る中、装備屋の主人の奇声が負けじと響き渡る。


「悪いんだけどさぁ、二人とも引いているから戻ってきてくれる!?」

「何おう!? 俺たちの作った装備の効果だぞ。こんな嬉しい事があるか!」


セッチが何とか現実に引き戻そうとするが、全くと言って良い程相手にされない。


「クックックックッ、ワァーハッハッハッ、これだ、これぇ!」


何とかズウェイトもコントロールを取り戻す。

女性三人は呆然とめちゃくちゃの店内を見回すが、装備屋の主人の高笑いが続く。


「武器の方は?」

「おっ!? そうだったそうだった」


アザゼルの一言は、現実に戻させる事に成功した。




先程もそうだったが、一度に全部持ってくるのではなく、小出しで用意してくる。


「最初に、ウォックの嬢ちゃんの分な」

「はい」


今持っているのとほぼ同じ、右手長め、左手厚めのダガーで・・3本ある?


「あのー、3本あるのですが?」

「うむ、良いとこに気付いた。持ち込まれた素材がチタン鋼で、軽くて固いんだが、同ランクの玉鋼より粘りが無く欠けやすい」

「予備ですか?」

「その通り。メインとなる右手側と同じ物になってる」


さやから抜いて刃を見ていると、店の主人の目がギラッと光る。


「ウォックの嬢ちゃん」

「はいっ!?」


刃に集中していたところに名前を呼ばれ・・


「切れ」


投げられた薪に、咄嗟に反応してしまう。

空中の薪を見定め、刃筋を立てて、渾身の一撃。店の主人ごと・・


「ひぃぃぃ!?」

「むっひょーぉ!」


ダガーだったのが幸いして、皮一枚、服を切り裂くだけで済む。


「流石ウォックの嬢ちゃん、身体能力の高さと技能が合わされば、こんなもんだい!」


当のウォックは、腰を抜かして床にぺたんと座りこんでしまう。

切られた当人は全く気にせず、狂気の笑い声を上げる。




再びコホンと咳払いをするが、にたーぁっという笑みを浮かべて振り返る。


「さあ、ズウェイトの嬢ちゃん。待たせたな」

「ひぃ・・」


自分はどんな事をしてしまうのか、戦々恐々の状態で逃げ腰だ。


自分の前に差し出された、若干黄みがっかった白の短槍を、恐る恐る手にする。


「えっ、軽い!?」

「そうだ。ボーンゴーレムからのドロップ品で、ジャイアントの骨から削り出した」


前の石時の槍よりも軽く、クルクルと回している。


「嬢ちゃんの場合、代替品が簡単には手に入らねぇから、丸々削り出しじゃなくて、穂先を交換できる様にしてある」


いつの間にか、胸元に弓矢の的の様な物を構えている。


ズウェイトは的を見た瞬間、的ごと店の主人を貫く映像が見えてしまう。

ちなみに、ウォックとセッチもこの時、同じ映像が見えたらしい。


「突いてみな、全力で」

「(ぷるぷるぷるぷる)」


首を横に振る方に全力を傾ける。

他の二人も一緒に首を横に振ってくれている。止めておけと。


「大丈夫だ、ジャイアントの骨で作ってるんだから」

「・・・そ、それならば」


確かに同種であれば、そう簡単に貫く事は無いだろう。


「ふぅ・・、行きます」


気を取り直して、構えて渾身の一突き・・に、ニヤリと笑うのが見えた。


「槍がな」

「っ!?」


誰も的と入っていない。

繰り出した槍は急に止まらない。


あっさり的を貫いて、穂先が胸元で止まっている。

ズウェイトはそのまま、ひざから崩れ落ちる。


「おっちゃん! いい加減にしなさいよ!」


流石にセッチがキレ、首を絞めるが、どこ吹く風。


「カッカッカッ! これからもドンドン実験に付き合って貰うぞ」


本音を言い合う関係は良いが、此処までの本音はどうかと思う。




喧々囂々とセッチと装備屋の主人が、言い争いをしている最中、アザゼルが問いかける。


「御主人、尋ねたい事がある」

「うん? 何だ?」

「装備に付与された物がある。どの様にして付与されるのか?」

「付与か・・、面白い所に目をつけるな」


装備談義を振れば、必ず喰いついて来る。


「今分かっているのは3つ、分類不可を含めて4種類だな」

「それは?」

「素材そのものに元から付いている物」


これはシーサーペントの装備による、水の精霊がこれに当たるだろう。


「錬金術師や付与魔術師による後付け」


ナインヒュドラの心臓を付加した胸当てが、これに当たる。


「スキルやギフトによる物」

「どの様な物が?」

「スキルとかギフトは、個人の機密だから詳しい事は分からねえが、製造工程で自然と付与されていくらしい」

「ふむ・・」


多分、両利きと言った付与になるのだろう。


「分類不可とは?」

「神から与えられたとされる、伝説のアイテムなどだ」


国宝、秘宝がそうらしいとの噂だが、真偽は定かではない。


「例えば、どの様なアイテムがあるのか?」

「剣で言えばドラゴンスレイヤーだな。竜殺しの剣だが、ドラゴンさえ切れる剣じゃねぇ、本物は・・ドラゴンしか切れない」

「なる程」


ドラゴンも倒せる武器では無く、ドラゴンしか倒せない武器。普通では考えられない。


鈍器として使えるんじゃねぇか?と、小さい事を言う者が居るかもしれないので念のため。

本物のドラゴンスレイヤーは、ドラゴン以外素通りする。


「もしかしたら、スキルやギフトによるものかもしれないが・・、正直分からん」

「それ故に、分類不可と」

「そう言う事ったな」


この問いの意味は、ダンジョン1階の壁にある宝箱の装備に関連していた。


「今一つ。付与のあるランクEと付与のないランクCの装備をどう思うか」

「ぬぅっ!? むっずかしい事を聞くなぁ」


ガシガシを頭を掻きむしりながら、渋い顔をしながら考える。


「ぶっちゃけ付与された能力によるかなぁ・・」

「と言うと?」

「攻撃力や防御力向上で、上位装備を上回らなきゃ変えてた方が良いだろう」

「ふむ」

「しかし、連撃、加速、抵抗なんかは捨てがたいが、攻撃が通らない、攻撃を防げないじゃ意味が無いしなぁ」


あーでもない、こーでもないと、自分の世界で堂々巡りをして悶絶する。


その隙にセッチが、こそこそとアザゼルに問いただす。


「何で装備の付与について聞いたの?」

「ダンジョンの1階の壁の中にある宝箱からの装備だが・・」

「うん」

「今まで殆どランクCまでしか出ていない」

「あっ、そう言えばそうね」


付与を除けば、素材のランクは平均でCである。

ランクアップすれば、それに合ったランクの装備が出るかもしれない。


しかし、もし出ないなら・・


「皆がランクアップした後の装備を考えて、って事ね」

「そう言う事だ」


これから先、ウォックとズウェイトはランクD、その後は3人でランクCを目指す。

行く行くはランクAも・・


素材はダンジョンから取って来れるだろうが、付与は簡単にはいかない。


彼らはまだ知らないが、ランクBになるには、途轍もない条件がある。

その一つが・・信頼、信用、名声と言う他種族にとっては大きな壁となる物だ。






アザゼルは悶々としている店の主人に、別の質問をぶつける。


「ではもう一つ」

「今度は何だ?」

「ランクDを目指すなら、各地を回る事になる。この娘たちはどうなると思う?」

「ぬぅ・・」


この質問は余程辛かったのか、目を固く瞑り、口をへの字に曲げて黙りこむ。


「二人には悪かったと思っている」


やがて意を決して頭を下げる。


「「そんな事は・・」」


言い募ろうとする、ウォックとズウェイトを手で制する。


「俺の店の武器を奴隷に使わせる? 防具を他の種族に着せる? 馬鹿にするな! 正直そんな気持だった」


これからの旅に際して、町の人々の気持ちを代弁するつもりなのだ。


「奴隷を良く知らない奴が、他の種族の事を知らない奴が、周りの言葉に惑わされて、そう言うもんだと思い込んでいた」


重たい雰囲気の中、四人は黙って聞いている。


「本当に家族や友、仲間を傷つけられた者もいる。本物の憎しみや怒りを持っている。自分たちだって傷つけているのになぁ」


何、馬鹿やってんだろうなぁ、と自嘲気味に微笑む。


「そう・・、だな」


アザゼルも、ずーっとずっと考えている。


何故、騙し合い、奪い合い、傷つけ合い、憎しみ合うのか・・

反面、助け合い、支え合い、愛し合い、許し合うのか・・


「多分どの町や村でも、この感情や雰囲気は変わらんだろう」


自分の経験から、彼らが必要としている言葉を伝える。


「だが今は違う、二人に会えて、二人を連れて来てくれたお前たちに感謝している」


人々の気持ちは変化するとも、教えてくれる。


しっかりと四人を見据えて、深く深く礼をする。

アザゼルとセッチも礼をする、ウォックとズウェイトは店の主人をぎゅっと抱き締める。






装備屋の主人の言葉ではないが、自分たちの旅が楽ではない事を感じる。


「この町で集められる情報を集めつつ、生活をより良くして行きましょう」

「セッチ様、今まであまり情報が集まらなかったと思いますが?」

「そりゃあ、集める様な事してこなかったし」

「情報を集めるための、何かが要るのですか?」


セッチに、ウォックとズウェイトが質問をしてくる。


「情報を集めるのには、場所と時間が大切になるからね」

「場所と・・」

「・・時間ですか?」


例として、ギルドに協会の事を尋ねるとどうなるかを説明する。


「そうですね、協会の事は協会に聞けっていわれますよね」

「当たり前です」

「つまり当たり前の事を、私たちはしてこなかった訳よ」


セッチの分かりやすい説明に、二人は納得する。


「では何処で情報を集めたら良いのでしょうか?」

「普通にしていては、話題にも上りませんでしたし」

「そうなのよねぇ・・」


セッチとしても、特に当てがある訳ではない。だから調べてこなかったとも言える。


「情報には集める時間と場所があるのだろう?」

「そんな事は分かってるわよ」


自分の言葉がそっくり、アザゼルに返されてイラっとする。


「ならば、先ずはその場所に行くべきだろう?」

「ふん、どっか知っているって言うの?」

「戦争と奴隷は国の管轄では?」

「国の管轄・・、役場ね。奴隷の事は国とは言えギルドか・・」


見落としの情けなさよりも、アザゼルが気が付いた事が許せない方が何故か大きかった。


「じゃあ、役場に向かいましょう」


何となくご立腹のセッチに、三人は首を傾げながら付いて行く。





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