第24話 一件落着 <第2部 完>
「OCHAN.さー。わかってないなー。
私が『顔出しして記者会見で謝罪しなさい』っていうのは『自分を売り出せ』ってことなんだけど。
あなたのSNSや料理教室のホームページを見たけど、知識は豊富だし、勉強熱心だし、料理はおいしそうだし。
コスモス出版の細井にしては、いい料理研究家に目をつけたもんだわ。
いーい? あんたに足りないのは、知名度! ネットでの発信力! セルフブランディング!
会見でしおらく謝罪して、炎上して、同情されて、名前を売りなさい!
で、OCHAN.、私のスタッフになりなさい!
私を手伝いながら、反省する姿を見せて、ネットでの発信力を磨くの!
それで、もう一度レシピ本を出すチャンスをつかむの!」
そう言われて、困惑するOCHAN.先生。
「でも私、アンズ先生と違って、見た目はこんなんですし。
人前に出るのは苦手で……」
「バッカねー!
高身長のムキムキ細マッチョの女が、重度の料理オタクなんて、キャラが立ってるじゃない!
だいたい! あなたの夢は何なの!!!」
「レシピ本を、出すことです!
私、料理研究家としての証が欲しいんです!」
「だったら、表舞台に立ちなさい!
すべてをさらけ出して、叩かれて、それを養分にして、のし上がるのよ!」
と、OCAHN.先生に言って、強く鼓舞したのだった。
そして、加藤に向かって、
「加藤さん、あなたがOCAHN.をプロデュースして、売れっこ料理研究家に育てるのよ!
それで、売れるレシピ本の企画を立てて、会社を説得して、堂々とOCAHN.の本をヒットさせなさい!
それができるなら、あなたのしたことは黙っていてあげる!」
そう言われた、OCAHN.先生と加藤が、
「「わかりました!
アンズ先生、ありがとうございます!」」
と涙がらに、大きくうなずいたのだった。
こうした流れがあり、いま記者会見が行われ、ぶぜんとした表情のふりをしたアンズ先生から、
「メモが流出したこと、誤解から盗作疑惑を受けたことは、大変不本意ですが。
流出したメモが私のレシピだったことが証明されて、出版社と当人から謝罪を受けて、和解することにしました」
と発表された。
これで、一件落着! めでたし、めでたし。
そして、その上で、
「OCAHN.先生がどこから聞きつけたのか知りませんが……。
実は、私の新しい本がこの秋に発売されることが決定しましたー!
その件について、この後、改めて記者会見を行います!」
とアンズ先生から発表された!
それで、塚本マネジャーから、
「盗作疑惑への会見はこれで終わります。
この後、15分の休憩をはさみまして、新刊の発売についての記者会見を行います」
とアナウンスがあり、唖然としている記者たちを置き去りにして、盗作疑惑のほうの会見は終了した。
そして、そして! すぐ次の記者会見が始まって、アンズ先生から、
「新刊のタイトルは……『アンズ先生のサバイバルうま飯』です!
出版社は、ララサンシャイン社です!」
と、新刊発売の発表が行われたのだった!
こうして、ついに!
花森にとって待ちに待った、新刊本の発売を、発表できたのだった。
ただ、会見の配信は別々にしたものの、アンズ先生の潔白の証明と、新しい本の発売発表を同じ日に行ったことで。
「盗作疑惑を自分の新刊のPRに利用した!」
「茶番だ、出来レースだ」
「全部仕込みだ、やらせだ」
とネット上で大変荒れることになり、一部の先生のアンチからは激しく叩かれることになった。
もちろん、盗作疑惑の被害者であるアンズ先生を擁護する声も大きく、ネット上で大いに話題になることになった。
それもあって……予約開始になった 新刊本『アンズ先生のサバイバルうま飯』 は、発売前からネット書店の総合ランキング一位を獲得!
そこから何日も、ランキング一位を独占することになったのだった!!!
「アンズ先生、寛大なご処置を、ありがとうございました」
と花森が、会見終わりのアンズ先生にお礼を言うと。
「まあ、ララサンシャイン社に貸しを作っておくのも、あとあと都合がいいしね」
「それはいったい……?」
「まあ、そのうちわかるわよ」
と言うと、不敵な笑みを浮かべる、アンズ先生だった。
こうして盗作疑惑が解決したが、花森の新刊本の編集・制作作業はまだまだ続いた。
今回もお世話になった鴻上刑事や黒川にお礼をしないといけないとは思いつつ、新刊のための料理の撮影、レシピのチェック、紙面デザイン、カバーデザインの確認などに追われる日々で、そんな時間もなく。
ただでさえ通常の本より短い時間での制作になったのに、さらに今回の件に足を引っ張られたものの……。
長かった猛暑の日々、その終わりが見えはじめたころ、
「これで無事、校了!」
と、本の印刷に必要なデータをすべて印刷会社に納品して、本の制作が「完了」したのだった!
これで、あとは本が完成するのを待つばかり! となった花森だった。
<第2部 完>




