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49. 花盛るアドニス



「ーー最後は急遽、この祭への参加者として名乗りをあげました。グロース家の麗しき三男。21番、アドニス・グロース! 御年15です」


 壇上にあがるのは、このグロリースの地で二度ほど顔を見かけた美少年。褐色の巻き毛の美しい子供、アドニスであった。


「飛び入り参加者の話は聞いてましたが、まさかアドニスさんとは」

「……司会から音響具を受け取ったな。もしや」


『我が名はアドニス・グロース。花女神の名において、この祭りで女神の依代として選ばれた暁には一つの誓いを此処に立てよう』


 ……これ何かの文献で読んだ記憶があるな? 確か花女神の祝祭で誓いを立て、その年の女神に選ばれると願いが叶うとかなんとか。


『私が女神となった暁には、ヴァリエに名高きフラミスの御曹司。天の御子ナルシス・ペーリエを我が伴侶として貰い受ける』


 思わず口に含んでいた果実酒を噴き出しかけ、盛大に咽せる。しかし動揺しているのは俺だけではないようで、会場がかつてないほどの賑わいとざわめきを見せていた。囃し立てもてはやす声が八割強、少数の者たちが、頭を抱えうつむいてる。あ、これ根回しも無くいきなりぶっちゃけたパターンだな?


「……シュルツ様、これは」

「…………この場合、収まるべき所には収まるといえよう。元々アドニスとナルシスの縁談の話は度々上がっており、私の耳にも入っている。大いに結構だろう……いきなりのことで、多少私の仕事は増えるやもしれぬが」


 どっちかというと頭を抱える側の意見だった。いやぁ……若さゆえの勢いって怖いなぁ。


 俺の知らぬ所で一体何があったか定かでないが。花女神の祝祭にてアドニスは、ナルシスへの求婚の意を周りに知らしめた後、勢いよく自身のまとった黒布を脱ぎ捨てる。


 濡れたように艶めく分厚い白絹の衣。その体の上には、黄金の鎖と血のように赤い天鵞絨の紐飾りが纏わりつき、要所に大きな宝石の花を咲かせている。紅い柘榴石と金を基調とした装いは、白く艶のある絹とアドニスの色濃い褐色の髪とのコントラストも鮮やかで、目を惹く美しさがあった。


 おお……これはいよいよ、勝負の行方がわからなくなってきた。

 セレニケの美しさは参加者の中でも群を抜いていたが、アドニスもどうして、中々負けてはいない。


 最後の参加者のお披露目を終え、祭りも終盤に差し掛かったころ。二十一人の候補者から女神を選ぶのは、各国から選ばれた審査員とこのコンテストを観戦する参加者の投票によるものだ。


 一目見て勝敗のわかりやすいよう、投票では番号の書かれた水晶の瓶に、花弁を一枚ずつ入れて一票とする。ちなみに集計はしないらしい。パッと見花弁の数が同数であれば、その際は審査員のみによる最終審査で勝敗を決するのだという。中々にアバウトなやり口である。


 当然俺は、アドニスに一票を入れた。ナルシスはシュルツでなく、年の近い相手と結ばれた方がきっと当人の為にも幸せだろう。


 なおシュルツは、何を思ったか従兄弟のリオナに票を入れようとしていたので横から小突いた。

 本人いわく「私の票はユウマのものだ。しかし今回お前は不参加ゆえ、せめて代打の彼に」とのことだが、そういう話じゃないんだよ。問答無用でシュルツの票をアドニスに入れさせ、やがて投票の結果が出る。


 勝負はセレニケとアドニスがほぼ互角。審議の結果、再度両者の装いを変えた審査にて、最終的な勝者を決定するという流れになった。


 結果が発表された時、セレニケはその美しい顔をかすかに歪めじっと黙り込んでいた。まあアドニスの票は正直、ナルシスへのプロポーズに沸いた会場からの応援票も多分に含まれている。俺とシュルツの票も、ある意味その一種だ。セレニケからすれば納得がいかないのだろう。


 ……いや、本当に悪いなセレニケ。でもお前も大人……少なくともアドニスよりは年長な訳だし。ここは一途な若者の恋を応援する意味でどうか譲ってはくれないだろうか。だって俺達さ、良い年した大人じゃん。きっと分かってくれるよな? セレニケなら。


 

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