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118. 終幕



「もうすっかり三児の父としての貫禄が出てきたなぁ、リオナ」

「ハハ、そうでしょうか? 自身としてはまだまだ若者気分が抜けぬままで……」


 ヴェイルセル王城の応接室にて。俺の目の前にはリオナ・ルーミエ……いや、国王アリエスの王配、リオナ・ゼルフィの姿があった。


 あれからなんと10年の歳月が過ぎた。時が経つのは本当に早い。俺は夕刻の用事より前、隣国ゼルフィからの客人であるリオナを迎え、久方ぶりの歓談に興じている。


 リオナは十年の時を経て変わった。かつての舞踏会にて、すらりと背の伸びた彼の姿を目の当たりにはしていたが、今年で26歳となったリオナは背だけでなく体にも厚みが出て逞しく、その体付きは彼の従兄弟である我が伴侶シュルツに瓜二つであった。いやあ、改めてすごいな。最初に目をつけたアリエス様の審美眼……。


「ユウマ様は本当にお変わりなくお若い……いえお美しい姿で」

「おいおい世辞はやめてくれリオナ。俺も、もうすっかり年寄りの仲間入りだ。最近は何をするにも腰が痛いのなんの」

「シュルツ様が『四人目を考えてる』とゼルフィに招かれたおり口にしていましたが」

「ごめん、その話後で詳しく聞かせてもらっても良い?」


 道理で最近、夜の営みへの誘いがしつこいと……いや、長くなりそうだからやはり後にして貰おう。転性の儀は年齢関係なく子を成せる魔法ではあるが、やはり歳を取ると体力的にしんどいものがある。


「まったく……そういえばナルシスの長男が、リオナの次男に告白したんだって? いやあ、めでたいことじゃないか。『天』の属性持ちの英才と、『火』の属性持ちの秀才が結ばれるとなれば、親愛なるゼルフィの国の未来も安泰というもの」

「……ユウマ様、物言いがずいぶんと老ランバル卿に似通ってきましたねぇ」


 今のはどっちかというの悪口よりの感想だな? リオナ。まあ別にいいんだけどさ。


 リオナは十年前、アリエスとの間に『転性の儀』を成り立たせ、正式に彼の伴侶としてゼルフィに迎えられることとなった。元々彼は儀を受ける側の人間、子種を持たない可能性があると言われていたが、どうやらそれは杞憂に過ぎなかったようだ。リオナは父親として三人の子をもうけ、そのうちの次男は両親どちらにもない『火』の属性を発現させた。


 またそれはかのフラミスの末子、ナルシス・ペーリエもまた同様で。彼は八年前ゼルフィの大貴族の三男アドニス・グロースと儀を成立させ、正式にグロースの家へと婿入りする形で婚姻をした。現在はアドニスとの間に二人の子をもうけ、シュルツへの側迷惑な恋煩いもすっかりとなりを潜めた。今はアリエスの元伴侶マスキュラ・ラムールに師事し、魔法と……そうしてなぜか筋肉の鍛錬に明け暮れているらしい。どうしてそうなったのかは定かでないか、まあ平和なら良いか。


「ランバルといえば、我が兄リオレスと伴侶ラケシス様……その子らは息災でしょうか?」

「ああ。今日リオナもいることだし王城に呼べたら良かったんだけどなぁ。今日はエクス陛下の第五王子とゲラン様がランバルの地にお越しになっているそうで、その相手をしているらしい。二週間前に顔を見たけど元気そうだったよ。リオレスとラケシス夫妻の三男は、第五王子と年も近い。良い遊び相手になっているそうだ」


 ランバル家の養子となったリオナの兄リオレスと、その伴侶ラケシス。彼らは三人の子を成し、今は現当主ドエルとその父ドミニクのもとで、領内の治安維持に努めているらしい。

 ランバルはこのヴァリエ王国の君主エクスと縁も深く、特に彼が伴侶ゲランと成した五人の男子の内、末子の第五王子は『天』の属性を持つ類まれな資質を持ってこの世に生まれ落ちた。かの王子の大叔父たるドミニクの溺愛ぶりといったら……さながら後世に語り継がれる程だろう。


「そういえば、ユウマ様のご子息らは今日……」

「ううん、もうそろそろ準備も終わった頃合いかなぁ」

「ご明察にございます、ユウマ様」


 うわぁ!! び、びっくりしたぁ……! 影も形もなく現れたその麗しき美青年。長い深緑の黒髪と瞳を持つこの国の儀官長、ジュリオス・ルーミエの姿がそこにあった。


「ジュリオス! 音も気配もなく入ってくるのはやめてくれ」

「ふふふ。扉前にてノックをいたしましたが、お気付きになられていなかったようですので……夕刻の準備が整った次第を、お伝えに上がりました」

「あ、そうか……それはご苦労だったな」

「久方ぶりですね、ジュリオス。」

「リオナ王配殿下。お久しゅうございます」

 

 ジュリオスが深い礼をして、リオナへと挨拶をする。元々彼らは歳の近いヴァリエ王国の貴族として親交もあったそうだ。

 ……思えば数奇な縁だよな。リオナはルーミエの家を出てゼルフィに婿入りし、そうしてジュリオスは生家グーリン家からフルーメ家を経て、最終的にはパウルが養子縁組したルーミエ家へと嫁入りすることとなった。どうしてこんなややこしいことになったのか。その原因の半分は、我が伴侶シュルツの十年前の采配にある。だが結果的には上手くいったようだし、これで良かったのだろう……。


「リオナ、お前もこの後時間はあるんだろ? 良かったら見に来てくれよ」

「よろしいのですか? ユウマ様の次男……あとはロミアスさんの長女の初舞台なのでしょう?」

「だからだよ。シュルツの子ということは、従兄弟であるリオナの血縁でもあるだろ? それに……国が離れても、リオナは右も左も分からなかった俺に親身にしてくれた大切な恩人だ。だからこそ、俺の大事な子供達にお前の顔を見せてやってほしい」


 俺の言葉に、リオナはその青色の目を大きく見開き驚いた様子だった。あれ、何か変なこと言ったかな? ちょっと距離感誤ったかも……。


「ユウマ様……あなたにそう言って頂けて、私はまさしく自らの心が救われた心地に御座います。異国の地にあろうとも、我がゼルフィの国王陛下に忠誠を誓う身であろうとも。このリオナは未だユウマ様を心の底よりお慕い申し上げております」

「か、かたい。そんな肩肘張らなくていいって。でもまあ、ありがとな……俺も生涯の友人として、貴殿と末永く良き仲でありたいと思っている。リオナ・ゼルフィ……いや、リオナ・ルーミエよ」


 こちらの言葉に、リオナはそのすっかり大人びた顔に、しかしかつての面影を残したどこか幼い笑みを浮かべる。そうだな。お互い歳をとって、月日を経ようと変わらぬものはここにある。


 夕刻からは俺の子供達と、ロミアスの娘をはじめ城勤めの貴族の子らを集めた演劇を行う。演目は『ヴァリエの勇者』だ。子供らが隠れて危険な魔法遊びに興じぬよう、ヴェイルセルの王城ではこうして定期的に子供達だけでの演劇を催し、それに向けた魔法の練習を大人の目の届くところで行うようにしていた。

 忙しない政務の間を縫ってのことだが、それでも親である自身らにとっても、それはある種の癒しと、何より子供らと触れ合う貴重な機会となっている。


 

 月日が経ち、恋……そうしてそれに留まらぬ様々な愛を経て。俺たちは巡り合い、そうして新たな未来と命を紡いでいく。変わるもの。そうして変わらぬものを抱え。今日も同じ異世界の空の下で、輝かしい生を謳歌しよう。


 いやぁ〜人生最高。異世界万歳。次の劇の演目は「異世界召喚された俺、イケメン第一王子の伴侶として幸せになります」みたいなのにしちゃおっかなぁ〜〜……ワハハ。




最後までお読み頂きありがとうございます!


また今までリアクションやポイントくださった方々も、本当にありがとうございました。


R18作品を全年齢ギリギリに改訂しながら連載してきた本作。書き直しの過程で主人公と王子のラブコメシーンも増やすことが出来て、個人的には満足しています。皆さまにも楽しめて頂けてれば何よりです。


もし良ければ↓の★を押して評価してくださると嬉しいです。改めてありがとうございました!


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