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96. ありがとう皆



 もう俺決めた。討伐では絶対無茶しない。怪我しない。特にロミアスが同行してる時は。うう……。


 アルザス樹海での討伐を終え、俺たちはグーリン領の屋敷にて戦果を報告した後、王城へ戻る運びとなった。

 疾馬に乗ること数時間。ヴェイルセル王城の謁見室には、今回の討伐メンバー3人とフラミス、エクス、そうしてシュルツとハラルドの7人が集っていた。


「エクス第二王子。こたびのレッサードラゴン討伐において、カネナリ・ユウマは自らの魔法のみで魔物を攻撃しこれを討伐した。相異はないか?」

「……ああ、相異ない」


 エクスの白く美しい相貌には、何の感情の色も乗っていない。強いて言えば、その顔は至極つまらなさそうなものに見えた。くー……澄ましちゃって。


「では私とカネナリ・ユウマに対し、『今後決してその身に危害を加えぬ』という祖の誓約を結んでもらう」

「いいだろう」

「その後はエクス……私も、お前との間に祖の誓約を結ぼう。ヴァリエの王子二人は、決して互いとその伴侶を傷付けぬという相互不可侵の誓約だ」


 これは、以前にシュルツと話し合って決めたものだ。

 エクスが一方的にシュルツを害せぬという誓約を結んでしまうのは、いささか外聞が悪い。未だ主犯の明らかになっていない数多の襲撃事件について、エクスが裏で糸を引いていたのだと周りにアピールしているようなものだからだ。


 一応まだエクスをヴァリエの王に据える選択肢がある以上、不穏な要因はなるべく排除した方が良いだろう。それに元々シュルツにはエクスを害する意志がないため、この誓約を結んだ所でデメリットも存在しない。


 そんなこちらの意図を知ってか知らずか、エクスの反応はどこまでも平坦なものだった。一周回って不気味なほどだ。


 討伐に立ち合った人々と、摂政ハラルドが見守る中。シュルツ王子とエクス王子が、羊皮紙に祖の誓約を交えた書面を記す。古レムール語。ヴァリエの建国の祖たる姫君が、その血を引いていたとされる亡国で用いられた言語だ。


 これで、王位継承に関する憂いはほぼ晴れたといえる。第二王子派の中核であるランバル家とは深い親交を結び、その機にハデーニ家などを初めとする第二王子派貴族とも親交を持った。エクスにも祖の誓約を結ばせたことで、少なくとも選王の儀で万が一エクスが王に選ばれたとしても、こちらが公に害される危険性はほぼ無くなったと言えるだろう。


 ……そう、あくまで公にだ。一応祖の誓約が周りに知らされる以上、俺やシュルツを排する目的でエクスが人を集めるのは格段に難しくなる。王位継承の儀が近づく最中、今更下手な事はしないだろうと踏んでいるが、果たしてどうだろうか。


「……シュルツ殿下」

「ああ、分かっている」


 ハラルドの声かけに応じて、誓約を終えたシュルツがこちらの方へと向き直る。


「異世界の邦人、カネナリ・ユウマ殿。こたびのレッサードラゴン討伐、まこと見事なものであった」

「……は。シュルツ第一王子殿下」

「その褒章として、貴殿に恩赦を与える。我が国の王族を謀った罪、今この時をもって容赦し、以降はこたびの件に関しての一切を不問とする」


 何とも仰々しい響きだが、要は俺がレッサードラゴン討伐に関して独断で、無茶な条件での契約をエクスと結んだこと。それを受けたシュルツが俺への罰として、以降口も利かず無視し続けた件を今ここで許すということだ。


 俺は表面上、厳かな声と表情でシュルツに感謝の意を述べる。しかしその内心はうっきうきで、今にも踊り出しそうな心地であった。


 ヤッタァー! ひゃっほーう! へへ、死ぬほど痛い思いして頑張った甲斐があったぜ竜討伐……まあ痛かったのはレッサードラゴンのせいというよりほぼロミアスの緊急治療魔法が原因だけど。いや、でも傷だらけのまま帰ってきたらワンチャン許して貰えなかった可能性あるし。


 ありがとうロミアス。ありがとう皆。というかエクス以外の全員の顔が見るからにホッとしてるんだよな。ごめんみんな、盛大な夫婦喧嘩に一週間もの間巻き込んで。以後気をつけます……。


 

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