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君のソナタ  作者: R a bit
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♯27,君は彼方5

最近徐にを誤用していたことを知りました。日本語って難しいですね。

『あの時の〜が後にどうたらこうたら』創作物でありふれたフレーズである。今回俺の身に何が起きたのか、俺が何をしたのかを語るにはそれが相応しいだろう。順を追おう、海呑高等学校二学期初日全日の更に全日、夏休みの最終日を控えた夜である。詔を看取った俺が向き合わなければならない問題の解決策を思いつき…というよりも思い出し、恋澄(こいずみ)に対して『今に見てろと』息巻いて就寝についていたのだ。そして翌日俺は恋澄をとある喫茶店に呼んだ。『宿題が終わっていない』という建前で呼び、ここ数日委員会の仕事を手伝った恩返しか恋澄はまんまと誘き出されてくれた。勿論宿題というのは恋澄から頼まれた「自分より定期テストの点数の高い人物の捜索」、及び外川から相談を受けていた「恋澄との確執の決着」の事だ。


夏休みと言えど今日が日曜日である事に変わりはなく、昼前から幅広い年齢層が入れ替わり立ち替わりこの店に入ってきていた。店員の冷ややかな目線を受けつつ俺は対面に座る人物を待つ。既に人を待ってると伝えていため何か言われるわけでは無かったが、その相手が来ないのではないかと俺の中で不安が大きくなっていく。お冷が常温に戻り結露によってテーブルに丸い水溜りが出来た頃、恐らく中学時代家庭科の授業で作ったであろうシンプルなトートバックを片手に待ち人は現れた。

「あら宮古君態々私を呼ぶ必要があるほど課題が片付いていないと言う割には、随分と卓上が淋しいわね。」

「どうしても恋澄が居ないと片付かない面倒なやつが残ってるんだよ。それより本当に来てくれるとは思わなかったな。」

「貴方にはこの一ヶ月世話になったもの。貴方が居なければ…いや貴方が来たせいであんな事になったのかしら?」

恋澄の言う世話になったことを説明するには時間を夏休み半ばに戻す必要があるのだが、今回は割愛して何が起きたのかだけ記そうと思う。端的に言うと本来文化祭の実行委員だった筈の逢川(あいかわ)が唐突に顔を出さなくなったのだ。俺が手伝いに入ったからサボったのか、それとも下からバックレるつもりだったのか、真偽は不明だが恋澄は俺が逢川の代わりに仕事を手伝い続けたことにある程度感謝をしてくれているらしい。

「まぁ課題ってのは比喩で本当の所は前に恋澄に頼まれてた『自分より定期テストの点数が高い人物』について話がしてくて…」

俺が言葉をつっかえたのは恋澄の手荷物の中身が見えたからだ。学校の課題各種に本来文系志望の恋澄が持っていない筈の物理の課題のコピー、そして参考書各種。

「そう…」

そしてそれを取り出そうとして少し悲しそうにしまい直す恋澄の表情を。俺が思っていたより恩を感じているらしいし、そも呼び出す際に理由を誤魔化したのも俺の本来の目的(・・・・・)を隠すためだったのだが、まさかあの恋澄が俺に呼び出され尚且つ口実を鵜呑みにするとは思えなかった。何か悪い事をした気がしないでもないが、俺は気付かなかったフリをして本題に入る。

「兎も角それっぽい人物と会うよう話はつけてる。詳細を話さなかったのは恋澄が嫌がると思ったからだ。」

「嫌がる?」

「俺は恋澄よりかは顔が広いから目的がバレないよう調べ直したんだ。」

「確かに私に臆して嘘をついている可能性もあるわね。」

その嘘をついているのは俺自身なのだが恋澄はまたも表面上は口実を信じてくれた。

「そん中で唯一セカンドオピニオン…というか第三者の証言が得られなかった人物が複数人いる。勿論本人の同意を得たうえで個票を確認させてもらったが、恋澄に嘘をついてまでバレたくないなら偽装くらいならする筈だ。そしてその複数人の内特に怪しいのが」

「外川信光(のぶみつ)ね。」

恋澄が嫌がるという思わせぶりな発言をワザとしたのは恋澄が他の候補者に意識が向かないようにするためだったが、本当に俺は彼女の信頼を勝ち取ったのかもしれない。逆に怪しいほど順調に進む話に警戒をしつつ軽食を頼むことで一次的に会話が停止した。恋澄はサンドイッチを頼んだらしい、何となく似合っている。因みに何故店を出ないのかと言われると、外川に伝えた時間は昼前だったがさっき俺が昼食を摂るように勧めてしまったため外川から連絡が来るまで時間を潰す必要があったのだ。通知を見るため定期的にスマホに視線を落とす俺と黙ってサンドイッチを口に運ぶ恋澄。客観的にこの状況を見たときこの二人の関係はどう映るだろうか。

「女性を食事に誘ってその対応、一生彼女できないわよ。」

思考を読まれたのか単純に気にするタイプだったのか、恋澄が『少なくとも恋人には見えない』と教えたくれた。まあ普通に友達同士だとしてもこれは良くない対応ではある事に違いはない。俺はマナーモードを切ってスマホをポケットにしまう。

「言葉を返すわけじゃないが恋澄は恋人作らないのか?他クラスの(・・・・・)男子生徒の中じゃ人気有るらしいが。」

「何故他クラスを強調したのか分からないけれど─」

恋澄は会話に集中するためか品がいいのか、おしぼりで手を拭いてそのまま膝の上へ置いた。いつも無表情だが真っすぐこちらを見つめる瞳はいつもより冷たいが、それでいて力強く情熱すら感じ取れた。

「一人だけ居た。恋い慕うというより(こいねが)う人が…今思えば嫉妬だったのかもしれないわね。今もそれが終わってないの、だからそうね…初恋待ちとでも言おうかしら。で何でそんな事聞くの?」

「最近恋人が出来たからふと同級生の恋模様が気になっただけだ。気にしなくていい。」

「あら…そう。敢えて相手は聞かないことにしとくわ。おめでとう。」

表情から察するにさっきの『一生彼女できない』という発言を気にしているようだったが、恋人こそいるものの彼女(・・)はいない為別に間違ってもいない。今そんな発言をしようものならややこしいことになる故俺は恋澄の無関心という配慮に甘えることにした。ちょうどその時外川からメールが届いた。

「話したいことは話したし、そろそろ出ないか?」

「そうねそのグラスを見る限りかなり待たせてしまったみたいだし、貴方に賛同するわ。」


店を出て駅までの帰り道、俺はコンビニに飲み物を買いに行くのを口実に恋澄を一人にし場所を外川に伝えて時を待つことにした。3~5分程経った頃だろうか、限りなくコスパの良いコーヒーを厳選し恋澄が居た、今外川が合流したであろう場所に戻った。目論見通り二人が向き合って何か話している。そこまで大きい声という訳でもないが、こういう時特定の人物以外の声をシャットアウトするこの耳は都合がよく、二人に認識されるよりも早く会話を聞くことができた。

「そう。それが嘘でも真でも、私は貴方が嫌いよ。」

「どこ行くんだよ色芭(いろは)!」

「気安く名前で呼ばないで──」

もはや語るに値しない、修羅場に遭遇してしまった。今までも恋澄が外川を一方的に嫌っていたところを目撃したことが有るが、『喧嘩するほど仲がいい』とやらだと思っていた。以前その認識を改めたことが有るが、今回大きく印象を塗り替えされた。外川が言うほどこの二人のわだかまりは簡単な物じゃない。俺以上に気まずいであろう恋澄はどこか和やかにも見て取れた。

「今日私を呼んだのはこれが狙いだったって事ね。」

「調べたのも外川が俺以外の交友関係を持ってないのも本当だ。嘘はついてない。が、軽率な行動だったかもな。」

「勘違いしないで頂戴。私は怒ってないわ、寧ろ貴方に感謝してるの。いつかこの恩も返すから今日はこれでお暇させてもらうわね。」

恋澄は長い足をきびきび動かし帰路に就く。高揚しているようにさえ見えた。ともかく今の俺にできること、そしてするべきことは外川を問い詰めることだろう。

「何があったのか話してくれるよな?」

「勿論そうするけど俺も何が何だかわかんねえんだよ。アイツは俺のことを勝手にライバル視してるみたいで、さっきは直近の定期テストの結果を聞かれて正直に答えたら勝手に不機嫌になったんだ。」


もしこの日俺が恋澄と外川を会わせなければどうなっていただろうか。少なくとももっと早く簡単に、それでいて互いの思いを尊重した結末になっただろう。それでも俺は二人の友人としてこの判断が間違っているとは思いたくない。

ちこここ

早速次回予告を覆しましたが、別に構想を変えたとかじゃなくて『日常シーンをカットしていく』と言った矢先だったので今回のエピソードを書くか迷った結果、必要と判断したので結局順番を入れ替えた始末です。なのでコロコロメインキャラが変わってしまうのが申し訳ない(今更)ですが次が詔のエピローグになります。

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