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琴葉姉妹と珍妙な仲間たちと巡る異世界珍道中  作者: 絶華 望(たちばな のぞむ)
青森県八戸市蕪島
11/11

蕪島神社防衛戦3

読み方

「」普通の会話

()心の声、システムメッセージ

『』キーワード

<>呪文


「回復の魔術と防御の魔術は役に立つと思う」

「ならやるしかないな、行くで葵!」

「わかったよ。お姉ちゃん」

 茜と葵は神社の中から飛び出して、即座に魔術を使った。

火鎧守連カガイシュレン

(味方全員に状態『火鎧ひよろい』が付与されました)

油鎧守連ユガイシュレン

(味方全員に状態『火鎧』が『青炎鎧セイエンガイ』に進化しました)

「なんや、葵、今の組み合わせ知っとったんか?」

「知らなかったけど、魔術は組み合わせ次第で何か起こるって分かってたから試してみたんだよ」

「さすが、葵やな」

 ミリアは茜と葵の援護を受け、回復魔法を使おうと呪文を唱えようとしたが、胸の傷のせいで詠唱を行うことが出来ずに血を吐き出していた。

「お姉ちゃん。ミリアさん声が出せないみたい。回復魔術を!」

「分かったで」

水槍貫連二スイソウカンレンニ

 茜が魔術を使うよりも早くリヴァイアサンは魔術を使った。2本の水の槍が全員に向けて放たれる。

(味方全員に状態『青炎鎧』が『火鎧』に退化しました)

「やられるかと思ったけど、イケルっぽいな」

火矢癒連カシユレン

(状態『火鎧』の効果で回復効果が倍増しました)

 茜の魔術でアランたち3人の傷は完全に塞がった。

油鎧守連ユガイシュレン

(味方全員に状態『火鎧』が『青炎鎧セイエンガイ』に進化しました)

「アランさん!防御と回復は私たちに任せてください」

「助かります!ユー、ミリア、私が弱点を探ります。それまでは、防御に徹してください!」

「了解」「プロテイン」

「ミリア・クリシェラルの名において願い奉る。世界の法則を司る神よ。今、僅かの間だけ、あなたを無視します。あまねく生物に完全なる凍結を……。『アブソリュートゼロ』」

(リヴァイアサンに『凍結』の状態異常が付与されました)

(リヴァイアサンのスキル『超再生』により状態異常『凍結』は消失しました)

「これもダメ」

「ですが、足止めは出来るみたいですね」

「プロテイン」

 ユーは、魔剣レーヴァテインを空高く投げた。すると炎の魔剣は空中で光り輝き、形を変えた。それは美しい氷の魔剣アルマスだった。剣の周囲の水分が氷結し霧がかかっていたが剣の美しさは遠くからでも分かった。

 ユーは剣を空中で受け取り、両手で持って振り下ろした。氷の斬撃がリヴァイアサンに直撃する。

(リヴァイアサンに『凍結』の状態異常が付与されました)

(リヴァイアサンのスキル『超再生』により状態異常『凍結』は消失しました)

 一瞬凍るもののすぐに復活した。だが、リヴァイアサンから攻撃の機会を奪うことに成功していた。

闇眼解アンガンカイ

 アランはその隙に魔術を使ってリヴァイアサンを分析し始める。天界にある魔物の図鑑には多くの魔物の情報が記載されているが、それは天使たちが過去に戦ったことがあるものだけが記載されていた。リヴァイアサンと過去に遭遇し生き残った天使は居なかったので、リヴァイアサンの詳しい情報をアランは知らなかった。だから、魔術で相手の弱点を探る必要があった。


名前:リヴァイアサン

属性:水

職業:破壊者

種族:水竜

HP:99999

MP:99999

STR:99

VIT:99

DEX:10

AGI:10

INT:10

PEI:0

LUK:10

CHR:10

弱点:雷


「ミリア、ユー、雷の連携で倒しますよ!」

「了解」「プロテイン」

「よし!葵、アランさんたちの攻撃の前に、あの邪魔な水の球を吹っ飛ばすで」

「ええ?どうやって?」

「先に油まいとけばいけるんちゃうん?」

「そうだね!やってみる!」

油矢貫連ユシカンレン

 無数の油の矢が、リヴァイアサンを囲む水の球に命中する。

(リヴァイアサンに状態異常『油』が付与されました)

火矢貫連カシカンレン

(リヴァイアサンの状態異常『油』が消失しました)

(リヴァイアサンが『爆発』しました)

(リヴァイアサンのスキル『水宮スイグウ』の効果で魔術が無効化されました)

(リヴァイアサンのスキル『水宮』の効果が消失しました。再使用まで5秒)

 葵と茜の魔術で大爆発が起き、リヴァイアサンの水宮が消失した。

「今です!」

 アランは素早くリヴァイアサンに飛んで接近し、刀に魔術を加える。

雷剣纏ライケンテン

六精ろくせい戦術・つるぎの型・雷撃らいげき

 アランは爆炎を一瞬で突っ切り、雷をまとった刀を大上段から神速で振りぬいた。その姿はまさに落雷の様だった。

(リヴァイアサンの状態異常『帯電』が付与されました)

(リヴァイアサンの状態異常『ショック』が付与されました。3秒間行動不能です)

 ユーは氷の魔剣アルマスを天高く放り投げると自身も飛んで後を追った。そして、リヴァイアサンの頭上にアルマスが届いた時、アルマスは光り輝いて姿を変えた。それは、北欧神話の雷神トールの武器、ミョルニルという戦鎚せんついだった。

 ユーは空中でミョルニルを両手で持ち、頭上高く振り上げた。そして、全身が白く変色し、筋肉がうなりを上げて脈打ち全身全霊の一撃を振り下ろした。

「プーロ・テイン!」

 天空から落雷がミョルニルに落ち、ユーは雷撃を乗せてリヴァイアサンの脳天にミョルニルを叩きこんだ。『ゴン』という鈍い音と共にリヴァイアサンは雷のごとく地面に落ちた。

(リヴァイアサンは『地絡』により追加ダメージを負いました)

(リヴァイアサンの状態異常『帯電』が消失しました)

 リヴァイアサンは地面に接触したことにより、電撃の追加ダメージを負った。そこへ、ミリアが黒杖アポトーシスを構えて、魔法を放った。

「ミリア・クリシェラルの名において願い奉る。世界の法則を司る神よ。今、僅かの間だけ、あなたを無視します。天空に巣食う雷精たちよ、今ここに地に降り立て……。『サンダーストーム』」

 天空に渦巻く雷雲が出現し、そこから何千もの雷がリヴァイアサンに降り注いだ。雷の放つ爆音が周囲にとどろいた。茜と葵は雷の音が止んでも耳鳴りが残っていた。

「ものすごい雷やったな……」

「そうだね。お姉ちゃん……」

 茜と葵は、魔法の凄まじさに放心していた。リヴァイアサンは、そのまま消滅し魔石が賽銭箱にチャリンと落ちた。その瞬間、ビシという何かが割れる音と共に、透明な何かが砕けて散った。さながら鏡の破片のようなキラキラとした触れることのできない何かは結界の残滓だった。

「終わったようですね」

 アランはリヴァイアサンを倒した後で、神社の前まで飛んできていた。ユーとミリアも一緒だった。

「終わったんか?」

「ええ、後ろを見てください」

 茜と葵が後ろを見ると、神社の中にあった真っ黒な魔晶石は無くなっていた。そして、夜なのに神社の周囲は光に包まれ、天から光の柱が降り注いだ。

「なんやこれは?」

「聖域が復活したんですよ。光の柱は神の御加護です。これで、この周辺には魔物は出現しなくなります」

「これからずっとここは明るいままなん?」

「いいえ、これは今日だけです。明日には見えなくなりますよ」

「そうなんか」

「それと、茜さん葵さん助太刀感謝します」

 そう言って、アランは二人に深々と礼をした。

「言ったやろ、天界にラーメン屋開くまで手伝うって、ただそれだけの事やで」

「命がけの戦いにためらいなく飛び込める人間はなかなかいないですよ」

「まあ、後先考えないのがうちの長所や」

「お姉ちゃん。人はそれを無鉄砲っていうんだよ」

「ええやんけ、それでうまく行ったんやから」

「上手く行かない事が多いから人は慎重になるんだと思うよ」

「葵、失敗しないように生きてる人間は成功もしないんやで」

「何を根拠に言ってるのお姉ちゃん」

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。歴史上の人物で一回も失敗しないで成功した偉人をうちは知らんで?」

「そう言われれば、確かに成功した人たちって何らかしら失敗エピソードがあるね……。でも、失敗で死ぬ場合は……」

「そん時は、死ねばええねん」

「お姉ちゃん……」

「茜さんは大物になりますね。ですが、勝算が無い時は逃げてください。私も死ぬまで戦うつもりはありませんよ」

「え?そうなん?明らかに致命傷受けてた気がするんやけど」

「まあ、見た目の傷は大きいですが、HP的には千ダメージ程度でしたからね」

「え?あの状態で千程度なん?」

「ええ、あの状態で千ですよ」

「ダメージの表現おかしない?」

「いいえ、間違っていませんよ。人間の体って頑丈に出来ているんです。胸に穴が開いた程度では簡単に死にませんよ。まあ、失血死は免れませんが、止血できれば問題なく戦えるレベルですから」

「あの、そうなると本当の瀕死の状態って……」

 葵は恐る恐る聞いてみた。

「そうですね。生首だけが残った状態が、HPが9割無くなった状態になります」

「それって、ほとんど死んでるんじゃ……」

「ええ、ですから瀕死なんですよ」

 葵は、普通の人間ならHPの半分を失うと体の半分が無くなるのと同義だと理解した。


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