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003.
; 視点: 一人称<コウ>
; 場所:人工世界ファンタジア。お試し空間。
幸、改め、コウは、新しい人生を歩み出す気になった。
「それで、そのファンタジアとやらには、どう行けばいいんですか?」
「おっ? この世界で暮らす気になった?」
「ありがたい体も頂きましたし、そうしよう、と」
「そう!」
13号は満足げだ。
「それで、お支払いの件について、聞きたいのですが?」
「支払いだね……。それが、さ。コウさんが、まともに支払える額じゃないんだよね……」
「……そうですか」
目的 一歩手前での挫折。ありがちなことだ。
「でも、コウさんの、元の世界の肉体――、あれを売ってくれれば、足りる」
売れるのかな?
「じゃ、それで、お願いします」
「え……? いいの? そんな即決で?」
「いいですよ。今の私には、この健康体があります」
「元の肉体を売ったら、元の世界に戻りづらくなるよ? 物理的な肉体がなくなるわけだから」
「当分、戻る気はないので、別にいいですねぇ……」
「そう……、じゃあ、うん、いいよ。それで、承るよ」
*
「じゃあ、今からでも行けますか? そのファンタジアとやらに」
「あ、まってまって! 忘れてた! アイテムボックスのこと」
「アイテムボックス?」
つまりそれは道具箱のことか?
「えいやっ!」
と、威勢よく、端末を打つ13号。
すると、目の前に一冊の本が落ちてきた。
「それは魔法書。それを見れば魔法が習得できるよ」
私は、その魔法書とやらを手に取り、ひも解く。――じんわりと、脳裏に染み渡った。
+ 『アイテムボックス』: 異空間に物を収納できる能力。
さっそく私は、アイテムボックスを使ってみる。
空間に穴が開くイメージで念ずると、その通りに穴が開いた。
開いた穴に、ウエスタンハットを放り入れる。
で、いったん穴を閉じた。
適当に移動してみて、そこでまた、アイテムボックスを使う。
同じように開く穴。そこへ手を突っ込むと、ちゃんとウエスタンハットが取り出せた。
物入れとして使えることを確認し、空間の穴を閉じた。
「便利ですねー!」
「うん、難なく使いこなせているようで、何より」
*
「それで……、どう? 気分は?」
「元気ですよ?」
「今もまだ、死にたくなる?」
「そういえば…… かなり、陰鬱な気持ちがなくなりました」
「良かった……!」
「この新しい体と心のおかげです」
「心も新しく書き換えたからね……。出来る限り、最善を尽くして、改良したよ」
*
「それじゃあ、これでサヨナラだね」
「おや? 13号さんとは、ここでお別れですか」
「うん。ボクが手引きするのは、ここまで。あとは自分で、ね」
「いや、でも、私、この世界のこと、まるで分からないのですけど」
「はじめから色々教えちゃあ、試行錯誤する楽しみを奪っちゃうからね」
「ん~~、それもそうですね。食料も水も、現地調達ですか?」
「そういうこと」
「やりがいがありますねー」
*
13号は、真っ黒いベッドを出現させる。
「じゃあ、ここに横になって」
私はベッドに入り込む。
「いい、触り心地のベッドですね」
「おやすみ、コウさん。次に目が覚めた時には、ファンタジアの中だよ。――良い夢を」
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■要約
・支払いの問題を終える。元の世界の体を売却した。
・アイテムボックスを試した。
・自殺願望が軽減された。
・ファンタジアの中へ入ってゆく




