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◆ボツ文たち  作者: ワイヤー・パンサー
『易しい世界_旧版』
16/57

b003.

003.

; 視点: 一人称<コウ>

; 場所:人工世界ファンタジア。お試し空間。


 幸、改め、コウは、新しい人生を歩み出す気になった。


「それで、そのファンタジアとやらには、どう行けばいいんですか?」


「おっ? この世界で暮らす気になった?」


「ありがたい体も頂きましたし、そうしよう、と」


「そう!」

 13号は満足げだ。



「それで、お支払いの件について、聞きたいのですが?」


「支払いだね……。それが、さ。コウさんが、まともに支払える額じゃないんだよね……」


「……そうですか」


 目的 一歩手前での挫折。ありがちなことだ。


「でも、コウさんの、元の世界の肉体――、あれを売ってくれれば、足りる」


 売れるのかな?


「じゃ、それで、お願いします」


「え……? いいの? そんな即決で?」


「いいですよ。今の私には、この健康体があります」


「元の肉体を売ったら、元の世界に戻りづらくなるよ? 物理的な肉体がなくなるわけだから」


「当分、戻る気はないので、別にいいですねぇ……」


「そう……、じゃあ、うん、いいよ。それで、うけたまわるよ」


      *


「じゃあ、今からでも行けますか? そのファンタジアとやらに」


「あ、まってまって! 忘れてた! アイテムボックスのこと」


「アイテムボックス?」


 つまりそれは道具箱のことか?


「えいやっ!」

と、威勢よく、端末を打つ13号。


 すると、目の前に一冊の本が落ちてきた。


「それは魔法書。それを見れば魔法が習得できるよ」


 私は、その魔法書とやらを手に取り、ひも解く。――じんわりと、脳裏に染み渡った。


 + 『アイテムボックス』: 異空間に物を収納できる能力。


 さっそく私は、アイテムボックスを使ってみる。

 空間に穴が開くイメージで念ずると、その通りに穴が開いた。

 開いた穴に、ウエスタンハットを放り入れる。


 で、いったん穴を閉じた。

 適当に移動してみて、そこでまた、アイテムボックスを使う。

 同じように開く穴。そこへ手を突っ込むと、ちゃんとウエスタンハットが取り出せた。

 物入れとして使えることを確認し、空間の穴を閉じた。


「便利ですねー!」


「うん、難なく使いこなせているようで、何より」


      *


「それで……、どう? 気分は?」


「元気ですよ?」


「今もまだ、死にたくなる?」


「そういえば…… かなり、陰鬱な気持ちがなくなりました」


「良かった……!」


「この新しい体と心のおかげです」


「心も新しく書き換えたからね……。出来る限り、最善を尽くして、改良したよ」


      *



「それじゃあ、これでサヨナラだね」


「おや? 13号さんとは、ここでお別れですか」


「うん。ボクが手引きするのは、ここまで。あとは自分で、ね」


「いや、でも、私、この世界のこと、まるで分からないのですけど」


「はじめから色々教えちゃあ、試行錯誤する楽しみを奪っちゃうからね」


「ん~~、それもそうですね。食料も水も、現地調達ですか?」


「そういうこと」


「やりがいがありますねー」


      *


 13号は、真っ黒いベッドを出現させる。


「じゃあ、ここに横になって」


 私はベッドに入り込む。

「いい、触り心地のベッドですね」


「おやすみ、コウさん。次に目が覚めた時には、ファンタジアの中だよ。――良い夢を」


―― ―― ――


     ―― ――


          ――



■要約

・支払いの問題を終える。元の世界の体を売却した。

・アイテムボックスを試した。

・自殺願望が軽減された。

・ファンタジアの中へ入ってゆく


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