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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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78 行動メモ

 朝のまぶしい光の中、私は鞄から取り出した鏡とにらめっこ。

「大丈夫、泣いた跡は残ってない」

 いつもより、多少厚化粧になったけれど、泣き貼らした目も何とかなった。

 皆に心配かけるわけにはいかない。じゃないな、もし、何故泣いたのか理由を聞かれても困る。

 それに、もう大丈夫。


 一晩泣いたらすっきりした。

 人間さ、絶望してると何もいい考えが思い浮かばずに、どんどん思考はマイナス方向にいっちゃう。

 負の循環ってやつだよね。

 昨日は危なかった。けど、月の光に少しだけ心が浮上した。

 そして、考えたんだ。

 ユータさんの生死はまだ分からない。死んでしまっていたら、話は聞けないけれど、生きていれば聞くこともできるよね?

 探せばいいんだ。

 名前も、昔住んでた住所も分かってるんだもん。

 例えば、ネットで探せないかな?フェイスブックやツイッター。やったことないけどチャレンジしてみる価値あるんじゃない?

 それから、ちょっと出費は痛いけれど探偵に頼むとか。

 警察には頼みようがないよね?

 ん、ちょっとまって、例えば大量の金の取り扱いすると警察が動くんだよね?って、ユータさんや私に犯罪の疑惑って、後々問題だよ。

 とにかく、何も手がないわけじゃない?。

 そもそも、手紙がこうして戻ってきたからこそ、次の一手が打てるわけで。もし、手紙が行方不明になって、ユータさんに届いていないことを知らないままだったら、もっと悲惨だったよね?

 うん、よし。

 私は、まだ運がいい。

 戻ってきてくれてありがとう。宛所不明でわざわざ返送してくれた郵便やさんありがとう。

 それに、そもそもユータさんがいなければ、自分で帰る方法を探さないといけないわけなんだし。

 神隠しの噂の場所というヒントをもらえただけでもありがたいと思わなくちゃ!


 元気が戻ったら、とたんにお腹の虫が鳴った。

 昨日は夕飯抜きだったからなー。朝食も昼食も食べたか食べないか分からないような感じにばたばたしてたし。


 グランラを立つまでは割と忙しかった。街の人たちに挨拶して回ったり、マーサさんたちへのお土産を選んだりした。それから、紙の伝道師として、紙の使い方を指南して回った。

 チュリ様のお子様にももちろん折り紙をたくさん教えた。

 もぅ、とってもかわいくて、連れて帰りたくなったよ!

 チュリ様や侍女に好評だったのは、紙の器だった。ほら、生ゴミとか捨てるときに新聞紙とかで作るあれ。和紙のような紙で作れば、ちょっとした小物入れになるんだよね。

 それから、街の人たちには張子の作り方も教えた。何年後かにはねぶた祭みたいなのが開かれてるかもしれないなぁと想像すると、楽しかった。見られるかどうかは分からないけれどね。

 凧は、作り方を良く知らなかったのと、また軍事利用がどうのとなるとめんどくさいので教えなかった。

 それから、障子!やはり、一般庶民にはガラスは高価なため入手できない。冬になると日差しを入れるために窓を開けざるをえないが、外気が寒い。障子は光を通し、外気をさえぎってくれるからとても喜ばれた。

 そんなこんなであっという間に、グランラを立つ日を迎えた。

 最後にガンツ王やチュリ様に引き止められ、冷や汗をかいたがあとは特に何の問題もなく帰路につく。


 道中はといえば、キュベリア側は一刻も早く朗報を直接伝えたいと、往路よりも速度を上げた。

 一座の団体も帰った後で、人数的にも動きやすいこともあり、問題がなければ2日ほど早く着くようだ。

 日中は馬車の中でアジージョたちに紙の使い方を色々伝授したり、雑談したりして過ごす。

 一人になれる時間があれば、日本に帰るための方策を考える。


 甘えがあったんだよね。

 ユータさんの手紙の返事が来てから行動すればいいやって、結局何もしてなかった。

 そう、日本に帰るためのことは、何もしてなかったんだよ、私。

 すべきことをリストアップ。

 昔読んだ自己啓発関係の本にも会ったよね?まず、自分がすべきことをリストアップすること。そして優先順位をつけること。そんなようなこと書いてあった気がする。

 日本に帰るための場所を探す。そして、旅をする必要が出てくるのでその準備。

 一人旅は怖いから、使節団に同行できてラッキーと思っていたけれど、やはり行動の自由が制限されては問題だ。

 今後は、聞き込みとか人があまり行かない場所とか、とにかく必死に場所特定をする必要が出てくるはずだ。

 流石に1人は怖いから、人を雇うべきだろうか。ボディーガードの類?幸い、こちら側のお金はある。

 でも、いくらお金があっても、庶民は馬の使用は無理っぽいから、徒歩になる。これが一番きついよねぇ。

 せめて自転車とかそういう乗り物ほしい。キックボードでもいいや。……キックボードなら鞄から取り出せる大きさだよねぇ?

 ううん、だめだめ!オーパーツは持ち込まない!

 ……

 作れないかな?こっちの世界の材料で?

 タイヤと乗るところと、手持ちの棒と……作れないかなぁ?

 木工職人?鍛冶屋?街の技術屋さんに相談してみる?危険かな?また、故郷の子供のおもちゃってごまかしで何とかならないかな?

 ……やめとこう。

 紙と違って、理由は完全に利己目的だし。それに、紙にしたって、軍事目的の狼煙とか思わぬ使用法にたどり着くんだもん。

 となると、やっぱり徒歩か。

 あ、馬もちの一座に便乗させてもらえないかなぁ。割と今回仲良くなれたよね?

 とはいえ、お荷物になるわけにもいかないかなぁ?芸を披露する一座の臨時芸人ってことでどうだろうか?

 ん?私に何か芸できたっけ?歌や踊りや曲芸は無理。あ、いっそ紙芸人として本当に紙の伝道師にでもなるか?それとも手品師とか?手品なら少しならできるし。ええ、もちろん『あなたも人気者になれる!簡単手品講座』のおかげですよ。

 よし、一度お願いしてみよう。とはいえ、一座との連絡の取りようもないってのが難関なんだけどね。サマルーに聞いてみよう。馬車持ちは国が行動をある程度制限してるみたいだし。

 行動予定メモに書き留める。

 『一座のこと確認する』

 一座のことを当てにしすぎても駄目だから、徒歩での旅の準備も考えなくちゃいけない。

 『徒歩で旅したことのある人物を探し、話を聞く』

 うん。素人考えじゃぁ問題あるもんね。あ、できれば、ボディーガードも兼ねた旅の達人にめぐり合えて一緒に旅できるといいなぁ。行商人とか?

 顔の広い人って誰だろう?まずは、トゥロンに聞いてみようかな?リエスより女神姿で聞いた方がいいかな?


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