36 くいしんぼうラト
「ラト、ラト、」
何度呼ぼうと、ピクリともしない。ちょっと、いたずら心が働く。
「うどん、できたよー」
「え?うどん?うどんできた?」
起きたー!どんだけ食いしん坊なんだ。
体を起こして、寝ぼけて焦点の合わない目であたりを見回す。
目が合った瞬間、
「少年~!」
ぎゅーっと、抱きつかれた。
「少年、少年、少年!」
ぐりぐりと頭を頭にこすり付けられる。んぎゃ、痛い痛い。
「待ちわびたぞー」
私を?うどんを?
「ただいま、何か食べる?」
40日間放置の末埃っぽかったが、気にせず調理開始。実は、もう何を作るのかは考えてあった。
ピッチェで買ったお土産、オリーブオイル!
熱したオリーブオイルに乾麺を手の平サイズに折って放り込む。キツネ色になったら取り出し塩を振ってうどんチップスのできあがり!これは、うどんが茹で上がるまでのおまけで作った。
さて、ここからが本番。
「もぐもぐ、なんだ、これは!初めて食べる味だ!うまいな!もぐもぐ」
まて、ラト、本番はこれからだ!ちょっと、私の分残しておいてよー!!
熱したオリーブオイルに、にんにく鷹の爪、そう、ペペロンチーノ!麺はうどんだけど!茹で上がったうどんと絡めマース。
どや!
「これ、もうないのか?」
げ、うどんチップス完食。ラト、私の分……ないね。まぁ、また作ればいいけど。
「はい、うどん」
ペペロンチーノ風ふどん。
「もぐもぐ、うまいな、少年、この液体なんだ?もぐもぐ」
食べるか喋るかどちらかにしなさい!
「オリーブオイル。ピッチェで買ったんだよ」
一口食べる。
うはー。パスタじゃないのが残念だけれど、おいしい。やっぱり超一級品のオリーブオイルを使っただけの事はある~。
「旅とは、ピッチェまで行っていたのか?まさか、オリーブオイルを買うためにか?」
「買うために行ったわけじゃないけど、行ったついでに買ったんだ」
「そうか、おいしいものを手に入れるために、わざわざピッチェまで」
おいこら、人の話を聞けー!話がまったくかみ合ってないわ!
「しかし、2ヶ月も小屋を留守にするとは関心しないな」
いや、40日です。40日。どちらかと言うと1ヶ月に近いです。
「今度から、必要なものは、私に言うが良い」
「ピッチェに行ったから、見つけることができたんです。だから、これからもチャンスがあれば旅に行きますよ?」
ラトは明らかに不満顔。
「旅には、一緒に行けないからな……」
そうか。付いていくぞー!とはならないんだ。
「だが、今度からはもっと早くに言うのだぞ?旅には色々準備が必要だ!私に協力できることもある!」
「協力?」
「そうだ!旅費の面とか、宿の面とか、護衛の面とか、荷物の面とか、」
今度も、置手紙で行こうと思います。
食べるだけ食べて、ラトは帰って行った。
洗い物と、簡単な掃除。ハイジベッドのシーツ付け替え。それからメールチェックとオークションチェック。
売れない。売れないなぁ。
ちょいと検索をかけてみると、「コスプレ メイド」なんて腐るほど出てきた。安いし種類も豊富。こうなってくると、売れないよね。入札が入っているのは、作品名やキャラクター名の入っているものばかり。「コスプレ 胸当て」は、私の出品したもの意外に出てこなかった。つまり、胸当てで検索する人はいないんだよね?
まいったなぁ。前、3つも胸当てが売れたのは奇跡的なのかな?
一番初めに売れた人のメッセージにコスプレに使うって書いてあったんだよね。何のって書いてあった?グアマキのコスプレ?
グアマキ コスプレで検索をかけると、まぁ、なんてことでしょう。この世界っぽい衣装が色々出てきました。
今出品してる胸当てやメイド服に似たものもある。てなわけで、出品取り下げ、タイトル変えて再出品「コスプレ グアマキ」って言葉を加えた。
翌日、マーサさんのお店の手伝いは、すでにルーカで定着していたため手伝いを辞退させていただいた。若い二人の仲を邪魔するほど無粋ではない。お金はある程度どころか、かなりある。
レイナール様から貰ったものの他に、セバウマ領から使節団としての給料という名目でいくらか貰った。
サマルーが、国からも報奨金が出るかもしれないと言っていたし。プチリッチですよ。無職なのにね!凹
小屋の手入れをする時間もほしかったので、週に何度かおやつタイムにお邪魔するということで落ち着いた。
しかし、ミリアの街全体で、まだ縄跳びブームやフラフープブームがあったのには驚いた。ロングブレスの音もそこかしこから響いている。
その夜、オークションでは早速入札があった。うわー、すごい!「グアマキ」効果だ。今更ですが、グアマキって何?と思って調べたら、「グアルマキート戦記」という小説なんだって。もう40巻以上出ている人気作品らしい。挿絵はあるものの、アニメや漫画のように明確なキャラクターの設定がなくて、衣装は「らしさ」が出てればいいみたいだ。三国志っぽいとか、戦国っぽいみたいな。グアマキっぽいのであればいいみたい。私にとってはラッキーだよね。
早速、画像検索かけて、研究。人気のあるキャラクター、衣装のイメージなど。
え?小説は読まないのかって?40巻以上あるんですよ?
どうやら、「グアルマキート戦記」は「戦記」というだけあって、戦争メインっぽい。出てくるキャラクターの服装も、兵隊や騎士や王様っぽくって、キリアの街で手に入りそうもない。
王都まで行って仕入れないとだめか……。
王都まで馬車で半日。歩いていくとどれくらいかかるのかな?
2日くらい、のんびりと小屋の手入れやメープルシロップ作りをしながら過ごした。
事件は、マーサさんのお店に行って起こった。
「リエスに手紙を預かってるよ」
いやぁな予感しかしないのは何故だろう?




