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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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35/303

35 苦悩するシャルト

「僕は、本当になんてだめな男なんだろう……」

 もしかして自暴自棄的なアレでしょうか。

 原因は、どう考えても私だよね?話し合いの場で、使節団の団長無視してでしゃばって、その上それが相手に気に入られるとか。

「そうですか?今回のことで、私はシャルトさんは何てすばらしいのだと思いましたよ?」

 シャルトは頭を抱えて首を横に振った。

「いいんだ、慰めは。僕は本当にだめな男だ。君の足元にも及ばない……」

 だめなところを認めることができるっていうのは、充分立派なことなんだよ。目をそむける人のほうが圧倒的に多いんだから。

 苦しいよね。だめなこと認めるの。その苦しみと戦ってるんだから、きっとシャルトはもっと成長するよ。今、私の言葉がその手助けになりますように。

「本当ですよ。私があの話し合いの場で、最後まで言いたいことを伝えられたのは、シャルトのおかげです。女だからとか、部会者だからとか、庶民だからとか、色々な理由をつけて発言できないこともたくさんあるんですよ?シャルトは、そういう差別は少しもしませんでした。それでけでもすごいと思います」

 シャルトは、まだ首を横に振る。

「それに、団長なんですから、すべてを自分の手柄としてもいいんですよ?」

「そんなこと、できるわけが……ない……」

「そうですね。でも、何もしていないのに手柄を横取りする人は多いんです。そうしないシャルトがすばらしいんですよ。力不足を感じているなら、今度はもっと頑張れば良いんです。それに、団長って団の長なんですよ?一人じゃないんです。チームなんです。チームで成功を収められたら、それでいいんだと思います」

 シャルトは、気持ちが少し、ほんの少しだけ浮上したのか、やっと顔を見せてくれた。シャルトの目をみて微笑む。

「もし、今回の結果が私のおかげだと思っているのなら、」

 シャルト、少し落ち込んだらまたいつものシャルトに戻ってね。

「やっぱりシャルトの手柄なんですよ。私を選んで連れてきたシャルトが成功をもたらしたんです」

 シャルトの腕が伸びて、私をぎゅっと抱きしめた。声を殺して泣いている?

 涙が出たら、大丈夫。また立ち上がれるよ、ね?

 子供をあやすように、背中をトントンと何度か叩いた。


 ピッチェの国境を越え、キュベリア国内に入ったころには、シャルトの様子はまずまず回復していた。

 夜の日課は、メールチェックに加えて、ネットオークションチェックも加わった。

 革の胸当ての到着報告メッセージが届いている。『ありがとうございました。また機会がありましたらよろしくお願いします』と『本日商品を受け取りました。ありがとうございました』という簡素なもの。新たに出品していた品は、入札なし。

 んー、難しい。何が売れて、何が売れないとか。今回はコスプレという単語も入れたけれどまったく売れない。家賃等の維持のために、コンスタントに月8~12万はほしい。あれ?それだけオークションで稼げるなら、誰も苦労しなくない?もしかして、オークションで日本円を稼ぐのってハードル高いのかな?

 手元の革袋を見てため息を一つ。

「それだけでは、予の気がすまぬ。これを持っていくがよい」

 と、レイナール様に渡された、花の押し印がついたかわいらしい布袋には、何枚もの金貨が入っていた。なぜか、こっちのお金には苦労しないんだけどなぁ。

 セバスール伯爵の城に着くと、盛大な歓迎会が準備されていた。先駆けにより、今回の使節団が大きな成果を上げたことが伝わっていたためだ。

 サマルーはこの後、王都への報告も急ぐということで、滞在1日にして王都へ出発。もちろん、私も一緒に行く。サマルー要望で、シャルトも報告に同行することになった。

 王都への旅は、シャルトとサマルーと私、侍女のアジージョ、国の官吏3名、御者兼護衛4名、護衛がトゥロンを含め10名だった。帰りの旅も順調で、予定通りの日数でたどり着くことができた。

「私はミリアへ帰ります」

 王都への滞在を勧められたが、正直もう薔薇のリエス姿は疲れた。これ以上やってられない!

「もう、帰ってしまわれるのですか?」

 シャルトが落ち込み

「実に残念だ。しかし、またすぐ会えるだろう」

 サマルーが予言めいたことを言う。いや、もう薔薇のリエスは引退します。

「では、送っていこう、お手をどうぞ、リエス嬢」

 トゥロンがいつの間にか馬を連れて横に立っている。

「僕が送っていければいいのだが……いいか、分かっているな、トゥロン、くれぐれも」

 シャルトが何度も何度もトゥロンに念押しをするものだから、

「大丈夫ですよ。トゥロンは信用できる人です」

 と言ったら、なぜか空気が一瞬凍った。

 あれ?

 トゥロンに送られ、マーサさんの店についたのはちょうどおやつタイムでした。

 トゥロンさんは、シャルトにすぐ帰るように何度も何度も言われていたので、とんぼ返り。お茶くらい飲んでいけばいいのに。

 マーサさんたちにもみくちゃに歓迎されました。ダーサとルーカはかなりツーカーになっていたので、順調なようです。お土産を渡して、部屋を借りて、薔薇のリエスからリエスに戻った。

 長旅で疲れていたので、詳しい話はまた今度ということで山小屋に戻った。

 久しぶりの山登りは、キツカッタデス。

 馬小屋のハイジベッド、長いこと留守にしてたから虫とかちょっと心配だけど、もう無理。

 ばたんきゅーっ。

 んー、ラトの匂いが染み付いてやがる。また、使いおったな!洗濯、しなきゃ、むにゃむにゃ。おやすみ……

 

 ものすごい窮屈で目が覚めた。

 何、これ?動けない。

 ちょ、どうなってる?

 両手、両足が動かない。何とか動く顔で状況を確認する。

 げ!顔を上げるとラトの形の良い顎が見えた。正面にはラトの胸。

 私の両手を体に縛り付けてるのはラトの意外とたくましい腕。足に絡められているのは、ラトの足。

 何で、どうして、私ラトに羽交い絞めにされてるわけ?

 そりゃ、窮屈で目も覚めるわ!それなのに、ラトはぐっすり寝てるし。

 私は抱き枕じゃないっつぅの!

「ラト!ちょっと、ラトってば!」

 身じろぎしようが、大声で名前を呼ぼうが、起きやしない。

 うーっ。しかし、なんだってこんな状況になってんだ?

 まさかと思うけど、私が逃げないように捕まえてる?まさかね。

 いや、うどんのストックが無くなって、新しく食べさせてくれるまで離さないとか……ありえないと言いきれない。

 しばらくラトが起きるのを待ってみたが、まったく起きる気配がない。


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[気になる点] え? その……男の子相手でも駄目じゃね?
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