蛇足*吾妻さんに返金しなくちゃ!
お久しぶりです。おまけ。
日本に戻って、一番にしたことは実家に帰ること。
家族の顔を見て大泣きした私……。
「ど、どうしたの、お姉ちゃん!」
「大丈夫かい、梨絵……」
「辛いことがあるなら、実家に戻ってこい」
「梨絵、まずはゆっくりお風呂につかっていらっしゃい」
あのね、異世界に行って、もう戻ってこられないかと思ったの。
みんなにもう会えないかもしれないって思ったの。
だけど、こうしてまた会えた。嬉しいの。
嬉しい。
だけど、愛した人とはもう、会えないの。
私は……。
選択を公開はしていない。
いつか私の知識が大切な世界を壊してしまうかもしれないから。
だから……。
だけど……。
お風呂。
あったかい。
あの世界。夢だったのだと。そう思おうとして2週間。
ユータさんにも吾妻さんにも、連絡は取らなかった。
ユータさんも吾妻さんからも連絡はなかった。
だから、このまま本当に夢だったのかもしれないと思うまで、このまま過ごそうと思っていた。
実家で3日。
気持ちが落ち着いた。
異世界じゃなくたって、愛する人と二度と会えなくなることなんてよくある話。
せっかくの縁だもの。ユータさんや吾妻さんと連絡を取ってみよう。
ユータさんにメィロン君はどうしてるのか聞こう。
吾妻さんには……。
「お金の振込先教えてください」
もらいすぎたお金をまずは返さないと。
うん。仕事探しも始めよう。働けば家賃その他ちゃんと日本円入手できるようになるから大丈夫。
吾妻さんにメールしたら、銀行から入金通知が来た。
は?
吾妻さんから、また、大金が振り込まれました。
「ちょっ!違う、お金を返したいって話してるのに、なんで、お金が振り込まれるわけ!」
メールでのやりとりに業を煮やして、思わず電話する。
「元気か?」
吾妻さんの声。
一瞬、言いたかったことがすっ飛んだ。
懐かしい。
あっちの世界でウォルフ対策で連絡を取り合っていた以来だ。
電話の声は同じ。不思議だよね。違う世界と電話が通じるなんて。
「もらいすぎたお金を返したいんです!」
「前にも言ったが、返してもらっても使い道がないからな。もらってくれ」
うっ。まぁ、確かに、異世界で日本円の使い道はない……けど。
「もらう理由がありませんっ!」
「理由ならあるぞ。うん、立派な理由が」
立派な理由?
なんだか吾妻さんの言い回しに悪い予感しかない。
「報奨金だ」
「報奨金?」
「戦争で活躍した武人を叙勲したり領地を与えたりする話くらい分かるだろう?」
それは分かる。
名誉男爵みたいな地位を用意して貴族にしたりするんだよね?あと、相手国から奪った土地を領地として与えたり……って、え?
「ウォルフとの戦争を回避できたのは君のおかげだからな。その活躍に対する報奨金だ」
……。
「いりません」
「そりゃ無理な話だな。受け取ってもらえなきゃ、ウルやほかの人間も受け取ってもらえない」
うっ。
それは困る。
でも、こんな大金をもらうわけにはいかない。誰かに、お金の出所を聞かれたら困るし……。
身の丈に合わない大金を手にしているのも不安だ。
そうだよ!
アラフォーなめんなぁ!
今までいろんな人の人生見たり聞いたりしてるんだよ!突然舞い込んだ大金なんて、身の破滅を招く不吉な物ってイメージがついてるんだよ!
「……はぁ……」
思わずため息をつく。吾妻さんにお金を返す方法……えーっと。うーんと。
「あ、そうだ!船をチャーターして海に迎えに来てくれましたよね?ずいぶんお金がかかっているはずです!報奨金はあれで十分です!こうして無事に帰れたことが何よりの褒美ですよっ!」
うん。これなら納得してもらえるはず!
「あー、君は、そういう人だったよな。なかなかどうして。簡単にはいかないな」
くすりと吾妻さんが電話の向こうで笑った。
「船のチャーター代を差し引いても、振り込んだ金額じゃまだ足りないくらいだぞ?ウォルフの船団に攻め込まれたらかなりの被害が出ただろう。それを回避してくれたんだ」
簡単にはいかないのは吾妻さんも一緒ですよね?
「うーん、お金がいらないとすると……貴族の地位や領地なんてのは日本じゃぁ意味がないしなぁ……」
ですね。っていうか、いらないです。
「ああ、一つあった。よく、褒美につかわれるものがもう一つあった」
ん?
「勇者よ、魔王を倒してくれて感謝する、ってやつの定番だな」
「え?なんですかそれ?」
「姫と結婚するってやつだ。あいにくと姫も王子もいないから、独身の王族は俺だけってことになる。ってわけで、結婚するか」
「は?なんですか!それ!っていうか、残念ですけど、私は日本に帰ってきたんで、嫁に行くことはできませんよ!」
「ふふふ」
まさか、日本に帰ってきてまで嫁ネタが続くとは思っていなかった。
吾妻さんはとても楽しそうに笑う。
「残念だって思ってくれるんだ」
いや、言葉のあやだよ!
「大丈夫。体は離れていても、結婚はできる」
「まさか、心がつながっていればとか言いませんよね?っていうか、つながった覚えはないです!」
「嫌いか?」
どきっ。
「き、嫌いとかそういうんじゃなくて。あの、吾妻さんのことは、好きですよ。あ、男女のそれじゃなくて、人としてっていうか、なんか、あの、家族みたいな、いや違う、同志……大切な仲間っていうか……あの……」
また気が向いたらおまけします。
時間が取れれば、「無職独身アラフォー女子の異世界出戻り奮闘記」書きたい。
あ、違う。「無職既婚アラフォー女子の異世界出戻り奮闘記」だな……。




