24 ネットオークションに初出品
サブタイトルが異世界っぽくないですね。苦笑。
今回、残虐描写というほどではありませんが、想像力が豊かだと気分の悪くなる描写が少しだけ入ります。空白*~空白*で少し分けておきました。苦手な方は飛ばしてください。ストーリー的に必要がないわけではないのですが(小さな伏線です。飛ばしても大丈夫なように他の表現でも入れておく予定です。)
平気な方には、空白があり読みにくくなって申し訳ありません。
王都とセバウマ領とを結ぶ道を、王都から順に指でなぞる。
シャルトから聞いた地名が書かれた葉に「帰不森」の文字を見つける。その横に米印と黒丸があった。
「帰不森……帰らずの森……か。これは、語呂合わせじゃないんだ」
語呂合わせの街の名だと思っていたものも、良く見てみれば「神隠郷、人消山、人喰谷」など、意味深な言葉がいくつも見つかる。いずれも、横には米印と黒丸が書いてある。
ユータさんは各地に赴き「帰らずの森」のような噂を聞いてまわったんじゃないだろうか?そして、そんな言い伝えや噂がある地で帰り道を探した。広い世界で、地球への小さな通り道を闇雲に探すよりもはるかに効率的だ。
光明が差すという言葉を人生で初めて実感した。
トントンッと、馬車の窓を軽く叩かれ、慌ててユータさんの地図をカバンにしまう。
曇ったガラス越しに、ぼんやり馬の姿が見える。
窓を開けると、一枚の板が差し込まれた。
「役立つと良いのですが」
馬車に併走する馬上から、シャルトが差し出したのは、文字を表にして書いた板だった。
「ありがとうございます!助かります!」
いつもの生真面目さが現れたような文字とは違い、ところどころ振るえている。私のために馬上で急いで用意してくれたものに違いない。
とても、良い人だなぁ。帰り道を探すだけでなく、ちゃんと使節団の件も頑張らなくちゃ。
「帰るため」を言い訳に、自分のことばかり優先してしまうのは間違っていると思うから。
日が傾く頃に、1日目の宿泊地である街に着いた。
ミリアより数倍大きな街で、宿屋も何件かある。旅をする人の宿場町ということだろうか。
夕食は日が沈んでからということだったので、少し街を見てまわることにした。
「案内しましょう」と、シャルトが言う。どうしようかと思ったが、迷子になって宿に帰れなくても迷惑がかかると思い、案内してもらうことにした。
ミリアよりも大きいといっても、基本的な街の営みは変わらない。魚屋や肉屋や飲食店、家具に雑貨に、パン、洋服。
何かネットオークションで売れそうな物はないかなぁ?と、キョロキョロと店を見てまわる。
「あれは、何ですか?」
その中に、ミリアでは見慣れないお店を見つけた。こぶしサイズの塊が先に付いた金属の棒がたくさん並んでいる。
「ああ、焼印屋ですね」
シャルトが教えてくれた。
「焼印屋?」
近づいて見れば、金属の棒は焼印をするための焼きごてだった。日本ではどら焼きに押された和菓子屋の名前や、高級かまぼこの板くらいしか焼印など見ない。こちらでは専門店があるくらいメジャーなのだろうか?
「持ち物に焼印をしてもらうんですよ。例えば、こちらの模様は街の名前を表しています。これが、王都ですね」
二つの剣がクロスした模様や、王冠の模様、ユリの花のついた盾など、それぞれの模様に地名などの意味があるらしい。
「何に、焼印をするんですか?」
「そうだね、押せるものなら何でもするよ。宿に戻ったら探してみるといいよ、お皿やコップや、机、椅子」
居酒屋が、店の名前の入った箸袋やグラスを使うようなものだろうか?
*
「昔は、生まれてきた子供に押していたそうだよ」
「え?」
なんて、そんなひどいことを!
真っ赤に焼いた焼印を子供に押し付けるなんて、想像しただけでも。
思わず吐き気がして、口を押さえる。
「インパ皇国やケレナム帝国等は、奴隷制度があり人身売買も盛んだったんだ。キュベリアでも、人攫いの被害が多かったんだ。子供がさらわれないように、子供がさらわれても取り戻せるように、子供に印を付けていたんだよ。今は、インパ皇国も滅びてそんな習慣は無くなったけどね」
思わず涙がこぼれた。
かわいい我が子に、焼印を押し付けたい親が居るだろうか。
それでも、さらわれて奴隷にされるくらいならと……
*
「今は、どこの街の誰のものと分かるように持ち物に印をつけるんだよ。そうしておけば、盗んで転売してもすぐにばれるから、盗難防止になるそうだ」
ああ、持ち物には名前を書きましょうということか。
「地名をあらわす焼印と、人をあらわす焼印があるんだよ。人をあらわす方は自由に選んでもいいんだ。例えばリエスさんなら」
シャルトはたくさん並ぶ焼きごてから、薔薇の模様のものを一つ選んだ。
「これが似合いそうですね」
やめてー!本格的に薔薇のリエスになっちゃうじゃん。
「シャルトさんは、どのようなものを使っているのですか?」
シャルトが手にしたのは、セバウマ領を表すものと、城だった。そうか、領主の息子だもんねぇ。
店には、焼印を押した品が見本として飾られていた。
看板のように、板に押されたもの、木のジョッキに押されたもの、財布に使う革袋に押されたものなどがあった。どれも、素朴な色合いの木や革の色に、焼印がアクセントとなってとてもおしゃれに見える。
これ、ネットオークションで売れるんじゃない?
「あれは、何に使うものですか?」
ふと、使い道の分からない紐のついた三角の革製品が目に留まる。
「矢を射る時に用いる胸当てです」
矢を射ると聞いて、縮こまる。
「戦争で?」
「矢を射ると言っても、狩りに使うものです。兵士は鎧を身に着けますから」
「そうですか」
ほっと胸をなでおろすと、シャルトがいつもの真っ直ぐな目で見た。
「大丈夫です。戦争にならないように全力を尽くします。万が一戦争が起きても、僕が命をかけてあなたを守りますから」
「万が一でも、戦争は起きて欲しくありません。私も戦争が起きないように全力を尽くします」
シャルトの強い瞳に負けないように、見つめ返した。
私に、一国を代表する使節団の手伝いなど勤まるのだろうか?
女帝レイナールに関心を持ってもらうことなどできるのだろうか?不安だらけだ。
でも、絶対に戦争はいや!改めて、全力を尽くそうと決意した。
「リ、リエスさん」
上ずった、シャルトの声に我に返る。
「あ、ごめんなさい!」
知らぬ間に、両手でシャルトの手をがっしりホールドしていた。しかも、ぎりぎりと力を入れてしまった。痛かったかな?悪いことしたなぁ。
「暗くなって来ましたね、帰りましょうか」
宿に戻り、夕飯を取った。
ありがたいことに、一人部屋を使わせてもらっている。隣にマーゴさんと伯爵、向かいに侍女のレジージョさん。反対隣にシャルト。レジージョさんの両隣に護衛の人たちが別れて泊まる。
夕飯が終るとすぐに部屋に戻り、いつものリエスの姿に戻る。
ウィッグもカラコンもフルメイクも1日中は辛い!今回はドレスじゃないだけマシだ。
ドレスは着たくない!なんていうか、振袖を着ている感じで疲れる。
ん?振袖なんて、何年前に着たのかって?成人式は何年前かって?独身だから、まだ振袖を着てもいいんだよ!あ、凹んだ。
着替え終わると、用意しておいたベール付きの帽子をかぶり、ドアを開ける。
そっと顔を出し、右左右。
よし、廊下には誰も居ない。すっと部屋から出て、突き当りの階段の踊り場へ。誰にも見られていないことを確認すると、帽子をカバンにしまった。
これで、まさか、私が薔薇のリエスだとは誰も思うまい!
まだ、店開いてるかな?
その日、革の胸当て3つと、それぞれに焼印を2つ押してもらった。
皮の胸当て一つ3000円。焼印1つ300円。なので、一つ3600円合計10800円の買い物。
ミリアよりも大きな街だったため、金貨も問題なく使えた。
部屋に戻ると、内側から鍵をかけて、カバンの中に顔を突っ込んだ。
今買った、焼印付きの胸当てをオークションで売るためだ。
胸当ては、競合商品少ないし、革製品だからある程度の値段で売っても変じゃない。それにかわいい!丸みを帯びた三角形に紐がついていて、考えれば色々使えそうだ。カントリー調のインテリアとか、ドアに吊り下げる表札とか。
まずは、1つ出品してみる。売れなかったら、また他のもので考えればいいんだ。
『本革の胸当て インテリアとしても』とタイトルを入れておいた。
この程度ならわざわざ注意は必要ないとか、あった方が良いなどのご意見をいただければ幸いです。




