234 再び再会
サニーネさん!
「普段、移動中に衣装などの仕立てをするようで、手は早いということです。街の人との特別なつながりもないため、秘密裏にことを進めて」
オージェくんが、彼女達の説明をしてくれるけど、耳に入るわけがない。
だって、目の前に銀の羽座がいるんだよ?サニーネさんが歌っているんだよ?
懐かしくて、また会えたことが嬉しくて……。
そうだ、前に会ったのは、トルニープに行く前。随分昔のような気がする。ランちゃんたちをお願いしたお礼も言わなくちゃ。
「リエスさん?」
話しかけても返事をしない私に、オージェくんが心配そうに声をかけた。
「あ、ごめん。オージェくん、何だった?」
「公演が終わったら、声をかけようと思っているのですが、よろしいですか?」
いいに決まってるよ。
サニーネさんの歌が終わると、歓声が上がる。おひねりが飛ぶ中、サニーネさんはアンコール曲を披露。
そして、公演終了を告げると、名残惜しそうな人たちが徐々に広場から去っていった。片付けをしている銀の羽座に、オージェくんと近づいていく。
「サニーネさん!」
オージェくんが声をかけるのが待ちきれなくて、片手を挙げて小走りに駆け寄った。
「リエス!リエスじゃないか!」
サニーネさんは駆け寄った私を両手を広げて迎え入れてくれた。
「あの、この前は急な頼みごとをしてすいませんでした。ありがとうございます」
ランちゃんとメイヤさんをキュベリア王都まで連れて行ってもらったことのお礼をいう。
「いいんだよ。彼女達のおかげで、歌の魅力をまた一つ知ることが出来たよ。ハーモニーっていうのかい?あれはすばらしいよ。本当に。また声を合わせて歌いたいと思って、歌手を募集中さ!彼女たちのように歌の上手い人がなかなか見つからなくてね」
まぁそうだろう。メイヤさんは城に招かれるような才能ある元歌姫だ。きっと国で一、二を争うほどの歌い手だろう。その娘のランちゃんは、メイヤさんも認める才能がある。なかなか彼女達ほどの歌い手は密からないだろうなぁ。
サニーネさんだって、国に認められる馬車付き一座の歌手だ。国一番の歌い手さんだもん。そのサニーネさんとハモれる人なんてそうそういないだろうなぁ。
もちろん、銀の羽座は劇もすばらしいんだよ。サニーネさんだけで馬車付きになったわけではない。
「ああ、銀の羽座にトルニープの祭に出てもらえればいいのに!」
ふと漏らした言葉に、後ろから声がかかった。
「トルニープの祭?」
ん、この声は?
振り返って見れば、そこに見知った顔があった。
「チョビン……さん!なんでこんなとこに!」
サマルーからの手紙に、芸について詳しいチョビンはいないってあったけど、まさか、こんなところで会えるとは!
はっ!
まさか、チョビン、サニーネさんのおっかけしてるの?
「君は?何故、私の名前を?」
あうっ。
そうだった、使節団の前では薔薇のリエスだった。サニーネさんたちは、女神姿も見てるから今の私の姿を見ても分かってもらえるけど。
「時々、私たちの手伝いをしてもらっているんだよ。見たことないかい?」
サニーネさんが事情を察して助け舟を出してくれた。
それにしても、知らない間にサニーネさんとチョビンは結構砕けた口調で話をしているようだ。
「そうか、サニーネさんの手伝いをしているのか」
どうやらチョビンは納得してくれたらしい。
「それで、トルニープの祭というのは?」
「ああ、それは、」
説明しようとしたところに
「リエスさん!」
オージェくんの慌てたような声が響いた。
私の服の裾を掴んでいる。
「あれ?確か、その子は……知り合いなのかい?」
「えーっと、サニーネさんの片付けの邪魔になるし、後で話をする時間取れないかな?」
私の言葉に、チョビンもサニーネさんも頷いた。
「片付けの後、食事をするんだ。リエスも一緒にどうだい?話はその時にでもゆっくりと」
「はい。じゃぁ、その間に用事を済ませてきますね」
用事なんてないけど、サニーネさんの元を離れる口実。
路地に入ると、オージェ君が声を潜める。
「リエスさんの知り合いだったとは驚きました」
「キュベリアにいたときにちょっとね」
「確認しておきたいのですが、私たちがトルニープに居ることは話をしても大丈夫なんですか?」
サニーネさんと再会したことに浮かれて、頭のねじがぽんっとどっかに飛んでったらしい私を、オージェくんが現実に引き戻してくれた。
そうだ。
通常、国境を越えるのは自由ではない。私やオージェくんは、ルイスが発行してもらった永久特別許可証を使っているから自由に行き来してるけど……。トルニープに居るというのを教えるということは、どのような理由で国境を自由に行き来しているのか疑問に持たれるということだ。ルイスという人間の下で働いているという話にする?いや、ルイスとリエスのつながりは言わないほうがいいかなぁ……。
もう少し考えて話をしないといけないんだ。
「えーっと、話の流れで考えます」
決してサニーネさんは信用できないわけではない。けど、無駄に情報を渡して巻き込んでしまっては申し訳ない。いや、まぁ、もう仕立てを頼む時点で多少は巻き込んでいるわけなんだけどさ。
昼食は、私とオージェくんとサニーネさんとチョビンの4人でテーブルを囲んだ。
銀の羽座の皆さんは大衆食堂。私たち4人は個室のあるちょっといいレストランだ。
「話を聞かせていただきたいので、私がご馳走いたしますよ」とチョビンが言い出したのだ。
サニーネさんにいいとこ見せたかったのかな?と思ったが、人に聞かれたくない話が出るかもしれないのでありがたくレストランでご馳走してもらうことにした。
「それで、トルニープの祭とは何のことですか?」
食事の注文をするなり、チョビンが聞いてきた。
「王都で開かれる祭です」
簡潔に堪えると、チョビンが首を傾げた。
「数年前から、行われていないはずですが?」
「今年は、3日後に行われます」
この情報は、トルニープ王都に住んでいる人間なら知っていることだから別に問題ないよね。
「まさか?そんな情報は聞いていない」
聞いてないって、誰から聞いてないってことだろう?別にチョビンが隣国の祭のことを知らなくたって問題ないよね?
あ、でも、もしかして……。
*また再会したという意味合いを込めてのタイトルなので、頭痛が痛いというような文法上の間違いとかじゃなくって、わざとです




