230 会場設営計画
サマルーが知らないのであれば、多分大丈夫だよね?
だけど、ガンツ王を驚かせるために色々な芸について調べてたのはチョビンだったんだ。もしかして、すごく一生懸命調べたのかな?
使節団に同行する一座、色々と知っているチョビンにとってはもしかして不満だったのかも。もっとすごい芸をする人がいるんだと思っていたのかも。だから、銀の羽座を目の敵にしてたのかなぁ?いやいや。もし、そうだとしても女性蔑視的な発言とか許せませんよ。
朝食の後、エボンさんは祭り関係の街の様子や、近隣の街から祭りを見るために人の流入がどの程度見込まれるかなどを調べてもらうことにした。
増税で人々の不満が高まる中行う祭りだ。暴動などが起きて、計画が断念させられるのは困る。
……暴動に紛れて、革命決行なんてことになったら目もあてられない。
うん、だからこそ、ランちゃんの言葉は今さらながら身に染みるわ。「楽しい祭りに」……。もし、不満を持っている人がいても、祭りが楽しめれば、少しは怒りが収まるかもしれない。
オージェくんは、物資の仕入れと、仕立て屋探しで再びキュベリアへ。
私は、カーベルさんの屋敷に。今日は街娘スタイルで、カーベルさんの家の裏口からおじゃまします。
「おはよう」
「リーさん、いらっしゃい」
ランちゃんがいる部屋に、兵士の1人が案内してくれる。私は色々な変装で出入りしているので、カーベルさんから通行許可証みたいなものを貰っている。それを見せると、お願いごとがすんなり通るのだ。
「今、カーベルは城に行っていて、兄さんは会議をしてるの」
「そっか。忙しそうだね」
どうしよう。色々と話を聞きたかったんだけど。
「これを、預かっているの。祭りの計画書」
ランちゃんは、木の板を何枚か机の上に並べた。
祭りの舞台の配置図だ。カーベルさんが用意してくれたんだ。ありがたい。
王城を囲う壁添いに、半円状の舞台が設置されるようだ。そして、その前の広間の左側半分は5段に座席が設けられる。貴族用のシートらしい。右側は、段も席もない庶民用の見物席。さらに、その周辺に屋台が並ぶ。
「カーベルから聞いた話だと、ギレン子爵とカーベル以外に5つの貴族が無料配布屋台出店の名乗りを上げているそうです」
「それは良かった」
あわせて7つも無料配布屋台が出れば、皆楽しめるよね?って、ギレン同様貴族とか金持ちにだけ配るとかじゃないだろうな……。後でどんな感じなのか確認しておこう。
人気投票みたいな仕組みも提案しておこう。紙は貴重だからアンケート用紙を作るわけにもいかないから、無難なところで焼印を押した木札を気に入った屋台に投票する感じかな。焼き印屋があるから、焼き印はすぐに手に入りそうだし。後は木と投票箱か。
「えーっと、この貴族用の席って、どれくらいの高さなの?舞台を見下ろす感じ?」
「舞台は3mくらいの高さになります。舞台の左側、このあたりに陛下の席が設けられますから、貴族は陛下を見下ろすような高さにはなりません」
ランちゃんが指差したのは、半円状の舞台の左端の客席よりの場所。
芸を披露する人たちは、客席に向かってじゃなくて、この陛下に正面を向けるような形で芸をするらしい。
ってことは、客席から見えるのは、左側もってことになるよね……。
んー、イリュージョンって、正面から見たら平気でも、斜め角度とかから見るとトリック丸分かりのものもあるよねぇ。どうしようか……。
ついたて?暗幕?何か用意が必要だなぁ。
「こちら側はどうなる予定なんですか?」
舞台の後ろ側を指差す。
「王城の外壁と少し隙間を空けて板が取り付けられます。芸人達が出入りするための階段も後ろに設置されます。それから、芸人たいの控え室として、舞台の下に簡単な待機場所が設けられます」
なるほど。3mある舞台の下が控え室になるわけだ。で、出番になったら部隊の裏の階段から上がる。階段は、陛下から離れた右側。舞台袖となるのも右側のみ。右側から芸人は出入りする。
「このあたりに、観客から見えないような目隠しを設置できないかな?」
舞台の右端を指差す。
「こちら側から舞台が見えなければ、街の人が立ち止まって溜まることがなくなるよね?そうすれば、屋台を目的として動いている人たちの邪魔にならないと思うの」
あえて見えないようにすることで、人の動きを誘導する。
「ああ、なるほど。今回は無料屋台ってことで、人が殺到しますよね。食べながら見ようとする人がいたら邪魔になりますね。見えなくすれば、確かに見える位置まで移動するでしょうから、混乱を減らすことができますね」
と、もっともらしいことを言った私に、ランちゃんは感心してくれるけど。本音は……。
よっしゃ、イリュージョンのタネを見られずに済む!
「カーベルさんに伝えますね」
「よろしく」
その後も、ランちゃんにいくつか質問を続ける。あらかじめカーベルさんはランちゃんに私が質問するであろうことを想定してか、教えていてくれたようだ。ありがたいことにカーベルさんが居なくても問題なく情報が手に入る。
陛下の位置、陛下の警護騎士の配置。貴族の席順。席は見やすい順に公爵、侯爵、伯爵と、地位の高い者が優先されるようだ。
まぁ、当然と言えば当然だろう。ギレン子爵は、子爵だけど宰相なので一番良い席確保だそうだ。
陛下や貴族周辺には騎士が警護として多数配置される。さらに、舞台周辺には兵士が多数配置される。
よし。コレだけの情報が揃えば、イリュージョンの計画を立てられる。
「ランちゃん、いくつか小石か、小石の変わりになるものが欲しいんだけど?」
「これでいい?」
ランちゃんが出してくれたのは、多分戦略を練るときに使うであろうチェスの駒のようなものだった。
配置図に置いて見る。
「ランちゃん、この場所の裏は人がいるかな?」
その都度気になることを確認する。
「警護に当たる人は、カーベルさんの手の内の、信頼できる人も含まれる?」
城で兵士として働いていた人を、カーベルさんの屋敷で見た。
革命軍の人には、それを隠して城に仕えている人もいるのだろう。祭りでその人たちは、イリュージョン要員として見せたくない裏側警護をしてもらいたい。
「うん、こんなもんかな」
駒を配置して頷いた。
「じゃぁ、まずはランちゃんにお願いすることを説明するね」
イリュージョンの第一段階は、ランちゃんに重要な役目を担ってもらう。いわゆる「つかみ役」だ。
あと、オーシェちゃんとオージェ君にも頼まなくちゃね。二人もウルさんみたいに、変装というか立ち振る舞いを変えてみせることくらいはできるよね??
そうだ、通販でアレ買わないと!間に合うかな?
「ランちゃん、ちょっと部屋を1つ……というか、人目のない場所を貸してもらえない?」
「え?ああ、でしたら、人払いをさせますから、このままこの部屋を使って」
ランちゃんや護衛の人が部屋から出て行った後、鞄の中に頭を突っ込みPC起動。
翌日には届くというお店をチョイスして、購入ボタンをポチッと。……オーシェちゃんやオージェ君にはオーパーツを見られちゃうけど仕方がない……いや、見ないようにお願いすれば見ないまま使ってもらえるか。
ウルさんたちは、隠密とかそういう仕事をしているんだもん。たぶん。だから、主の言うことに逆らうことはしないよね?




