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【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


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115/303

115 持っていてもいいかな?

『本当に大丈夫なのか?』

 速攻で返信メールが帰ってくる。

 ああ、本当に心配してくれてたんだなぁ。

『大丈夫です。今の悩みといえば、明日の朝食と昼食に何を作るかっていうことでしょうか?料理番みたいな状態になっているので。吾妻さんは何が食べたいですか?』

 どういえば安心してもらえるかと考えた結果、かなりアホみたいな内容のメールになってしまった。それでも、吾妻さんは律儀に返信をくれる。

『おにぎりが食べたい』

 タイトル見て、笑ってしまった。ふふっ。吾妻さんもやっぱり日本人だよねぇ。

 内容は少し深刻だった。

『トルニープに関してはあまり良い噂を耳にしないが、本当に大丈夫か?できるだけ早くトルニープを出たほうがいい。いつ何が起きてもおかしくないと聞いている。助けが必要ならすぐに言ってくれ。すでに、手の者を向かわせてある』

 そうか。前にトルニープには近づくなって言っていたけれど……。

 何が起きてもおかしくないって、どういうことかな?

 内乱でも起きる?

 確かに国内は他の国に比べてあまりよい状態じゃなかったのは見たけれど……。とてもきな臭い感じはしなかったけどなぁ。

 それとも王城の敷地内に居るから、気がつかないだけかな?

 ある朝起きたら、革命軍に取り囲まれていたりして。そうしたら、私はどうなるんだろう?

 一見豪華な白薔薇宮に滞在する女ということで、一緒に王と共に成敗させられちゃうかな?うわー。やだやだ。キモエロ陛下の女とか勘違いされて処分されたらたまったもんじゃない。

『グランラで、米を見つけました。日本のお米に近い粘りのある米でしたよ。おにぎりにして食べました。海苔が無いのが残念でした。長居する気はありません。するべきことが済めばトルニープを出ます。もし自力で出ることが叶わないときには助けてもらうかもしれません。お礼はおにぎりでいいですか?』

『塩むすびで充分ご馳走だ!最高の塩を用意して、助けを求められるのを待っている!』

 何だろう?日本人としてのアイデンティティ?

 米に対するこの気持ちをこの世界で語り合えるのって、多分私達だけなんだろうなぁって思うと、何だか変な感じ。

 ああ、私はやっぱり日本人なんだなぁって再確認せざるを得ない。

 そして、帰ることを諦めているような吾妻さんだけれど、それでも日本人なんだなぁって。

 別にこの世界に染まって、日本人だったということを過去にしているわけじゃないんだなぁって。

 じゃぁ、何で日本へ帰ろうとしないんだろうか?

 もしかして、帰り道を探して、見つからないことに絶望してる?期待するたびに裏切られを繰り返すと、諦めたくもなるよね?もし、竜咆の森で帰ることが叶うとしたら、それを吾妻さんに教えてあげたら、吾妻さんも帰ろうと思うだろうか?

『ありがとう。おやすみなさい。』

 心配してくれてありがとう。助けてくれようとしてありがとう。

 色々と伝えたいことはあったけれど、やっぱりメールでは伝えにくい事もあるので途中まで打ったメールを消去して、一言だけで済ませた。

『おやすみ』

 吾妻さんからも一言だけのメールが返って来た。

 

 携帯を置くと、今度はラトのことが気になった。

 吾妻さんの元にキモエロの使者が着いたということは、ラトの元にもそろそろ着いているかもしれない。

 ラトは、割られた守護されし者の印を見てどう思うだろうか?

 吾妻さんのように、私というか少年のことを心配しているのではないだろうか?

 

 最後に会った時には、ラトは仕事が忙しく疲れた様子だった。

 睡眠もろくに取れていないように思えた。


 私のことを心配して、眠れないんじゃないだろうか?無理しすぎて倒れなければいいんだけど。

 一体、使者はどのように印を渡して、私についてはどのように伝えているんだろう?

 吾妻さんに尋ねればよかった。

 私は無事だと言ってくれているのだろうか?

 私を歓待していると、嘘でも言ってくれているのだろうか?

 印の真贋を確認するために使者を送っていると言っているだろうか?


 心配しすぎないで。ラト。

 私は大丈夫だよ。

 どうか、どうかラトが私のために無理をしていませんように。

 何とか連絡を取る手段はないだろうか?

 トゥロンに尋ねてみようか。

 いや、今は無駄な動きをしてキモエロ陛下に警戒されてはまずい。

 ごめんね。ラト、心配させちゃって……。

 ことが片付いたら、無事だけ伝えるから。もう、帰れないけれど……。


 そうだ、吾妻さんとのメールのやり取りなら、エロキモたちにもばれないよね?

 吾妻さんに、ラトへなんとか私の無事を連絡してもらえないだろうか?

 マーサさんの所に連絡してもらって……も、山小屋へや連絡できないか。誰にも内緒だったしな。山小屋に直接行って入り口にでも手紙を置いてもらう?山小屋の場所を上手に伝えられるだろうか?

 

 そういえば、ラトにお別れの手紙もまだ書いてないんだよね。初めはマーサさんに預けて旅立とうと思っていたんだけど。

 結局何を書いて良いのか分からないままになっていた。

 ……。

 無事の知らせと、お別れの挨拶、一緒に書こうか。

 良い知らせと悪い知らせ。二つ一緒ならば、ショックも和らぐだろうか。

 

 鞄の中から紙を取り出す。

 グランラで作られた紙と、ラトからもらった紙……。

 少年である私が紙を持っていたら変だろうか?ラトからもらった紙を使うべきだろう。

 だけど……。

 ラトからもらった紙は、使わずに持っていてもいいかな?それくらいいいよね?

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