113 この国の現実
3日目の朝食はどんだけ食べるんだ?っていうくらい要求するので、流石に立派な豚だけのことはあると思いながら作っていたら、どうやら側室達も食べたいと言い出したらしい。
安全な食材を王城調理場に行けば入手できることになったのはいいけれど、ちょっと作る量が半端なく多くなったため、庭のカマドは4つに増えた。どれも大型。ランちゃんとメイヤさんと私とそれからトゥロンがそれぞれ番をしながら調理する。
うーん。客人というよりは、城の料理番になりかけてない?
まぁいいや。
こうして、一週間もすると、白薔薇宮の庭がサロンのような状態に。
呪いの宮殿の庭ですよ?やっぱり本当は皆呪いとかあんまり怖がってないんじゃない?宮殿の中に入らなければ大丈夫ってこと?
宮殿の掃除をしている人たちも、差し入れの甲斐もあり顔色がよくなってきている。
中には、差し入れを食べずに家族に持って帰っている人もいるようだし、もうちょっと差し入れの量を増やそうかなぁなんて思ってたりもする。
「調理場にはないハーブを使いたいんですが、探しに街へ出ても構いませんか?」
と、要求してみた。
トゥロンと警護兵付きながら、あっさりとオッケーが出た。
キモエロ陛下も自分の欲望「美味しいもの食べたい」ってことでは判断が甘くなるらしい。
「一緒にランちゃんも行かない?」
と誘ったけれど、ランちゃんは首を横にふった。
「私と母さんは、塀の外に出てはいけないから……」
ああ、そうか。人質だものね。
トゥロンの顔も曇る。
王城を囲う塀を出て、街を見下ろすとすごい違和感を感じた。
「王都?だよね?」
トゥロンの顔を見る。
「ええ、トルニープの王都です」
貴族の住む地域を抜け、市民が住む街の領域に足を踏み入れる。
所狭しと店が並び、そこそこの活気はある。
そう、そこそこしか活気がないのだ。
他の国の王都は、国の中で一番にぎやかな土地だった。圧倒されるような活気があり、人々の顔は輝いていた。
だけど、どういうことだろう?
まるで「嘗ては栄えていた街」というった風情だ。
まるっきり廃れているわけでもない。まるっきり活気がないわけでもない。
だけど、どこか疲弊して見える。どこかうらびれて見える。
あれかな?シャッター通り商店街っぽいと言えば分かりやすい?
近くに大型ショッピングセンターならぬ、大きな街でもできて人の流れが代わったのかな?
貴族の住む地域から離れると、街はもっとひどい有様だった。そこかしこに、うつろな目をした人々が座り込んでいる。
「トゥロン……王都だよね?ここ……グランラみたいな、炊き出しするところとかないの?」
トゥロンは首を横にふった。
「昨年は凶作だったの?」
兵が首を横に振る。
「どうして、こんな状態なの?」
歯がカチカチと音を立てる。ああ、私震えてる。
初めて、貧困とか飢えとかを目の前にして……。怖くなった。
戦争しているわけじゃない、不作が続いているわけでもない、なのに王都がこんな状態だなんて。
「あの、近くの村を見たいんだけど?」
トゥロンは、少しお待ちをと行って馬を調達してくれた。トゥロンと私と兵はそれぞれ馬に乗り、近くの村へと駆けた。
疲弊した村。疲弊した人々。
人々が耕す畑は決して実りが少ないようには思えないのに。
人々はとても飢えて見える。
何故?
どうして?
答えは簡単だった。「重税」が原因だ。
あの、キモエロ豚!
王様としての仕事しろよ!
ふつふつと怒りが湧いてくる。
税をとるのが仕事じゃない。贅沢するのが仕事じゃない。グランラの王様を見習え!
悔しくて、涙が出た。
悔しい。悔しい。この世界の仕組みが悔しい。きっと王様は絶対で、意見しようものなら首が飛ぶ世界だ。
無力な自分も悔しい。
現実を知ったからって、何もできない。どこかに革命軍が居て、政権をひっくり返してくれないかなって。そんな夢を見るしかない。
「トゥロンが王様だったら……」
きっとこんな国にはしないのに。
ああ、そうか。もしかして、そんなことを言った人がいたのかもしれない。トゥロンが王様ならばと。
だから、トゥロンを担ぎ上げて政権交代させようという派閥に怯え、トゥロンを間者として他国へ追いやっているんだろう。家族を人質に……。
夢、夢をたくそう。
人質がなくなったトゥロンの活躍に。
私ができることは、ランちゃんとメイヤさんを救い出すことだけ。
うん。できる。大丈夫。やってみせる!
白薔薇宮に戻り、トゥロンの部屋を訪ねて言った。
「トゥロン、娼館ってどこにあるの?」
は?って顔をするトゥロン。
「女神、もう一度、お願いできますか?」
「トゥロン、街に娼館ってあるよね?娼婦を4,5人白薔薇宮に連れてきてくれない?」




