↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】無職独身アラフォー女子の異世界奮闘記  作者: 杜間とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
106/303

106 トゥロンのお母さん

 ランちゃんたちの家は、王城敷地内の北の端にあった。

 山小屋よりは大きいものの、小屋と呼ぶべきか家と呼ぶべきか迷うような建物だった。つまり、仮にも王弟家族が住むような家には見えない。それでも敷地は広いようで、家の南側には色々な野菜が植えられている。

 トゥロンの話に聞いて想像していた家庭菜園よりもずっと広い。

 ちょっとした畑だ。

 家の西側には鳥小屋があり鶏が何羽も飼われている。

 こりゃ、立派に自給自足できそうです。

「母さん、母さん!」

 畑で草むしりをしていた背中が振り返る。

「ラン、大きな声を出してどうしたの?」

 上品そうなおっとりした笑顔が向けられた。

 若い頃はさぞ綺麗だっただろうという面立ちをしている。

「まぁ、トゥロン……おかえりなさい……」

 目に涙が浮かぶ。

「ただいま」

 お互いに歩み寄り、しっかりと抱擁。

「久しぶりね、何処も怪我してない?体は大丈夫?よく顔を見せておくれ」

 親からすれば、子供は何歳になっても子供とはよく言ったものだ。

 抱擁を解くと、お母さんはトゥロンの顔を両手で挟んで顔を見た。

「大丈夫だよ、母さん。それよりも、色々と話さなくてはいけないことがあるんだ。陛下から母さんにも命が下った」

「え?」

「彼女のお世話をするようにと……」

「はじめまして、リーです。お世話になりますっていうよりも、いつもトゥロンにはお世話になってます。よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げて、顔を上げる。

 くはっ。ダメ。思わず笑ってしまった。

「トゥロン、その顔!」

 くすくすっ。

「あー、兄さん、ほっぺた真っ黒!」

 私の声にランちゃんもトゥロンの顔を確認して笑い出した。

「あら、あらまぁ。ごめんなさい。畑仕事の途中だったわ……」

 お母さんは泥だらけの両手を見て、その手で触れたトゥロンの顔を見た。見事に泥だらけになった顔を。

「まるで、子供の頃に戻ったみたいね。小さい頃は毎日のようにそうして泥だらけになって遊んでたもの」

 お母さんが懐かしそうに目を細めながら明るく笑った。

「母さん、思い出話は良いから、ご飯にしよう!ご飯食べながらでも話できるでしょ!さ、リーさん狭い家ですけどどうぞ!兄さんも顔洗ったらすぐ来てね!」

 ランちゃんに手を取られて、家の中にお邪魔する。

 背後で、トゥロンとお母さんが先ほどとは違う表情で首をうなだれているのも知らないで。


「こんなものしかなくて、ごめんなさいね」

 そう言ってトゥロンのお母さん、メイヤさんがご飯を用意してくれた。

 パンと野菜サラダとスープだ。こちらの世界での一般的な食事。

「ありがとうございます!」

 毒に怯える食事を思えば、ご馳走だよ!

 新鮮な野菜はもうそれだけでご馳走。少しの塩をかけただけでもこれだけ美味しいのだ。

 ピッチェのオリーブオイルでドレッシング作ってかけたら、最高だろうなぁ~。


 食事をしながら、お世話係の話をした。

 ランちゃんとトゥロンが私と一緒に白薔薇宮に滞在すること。メイヤさんは畑の手入れなどもあるだろうから、このまま家にいること。食事だけお願いすること。状況が変わったらその都度相談すること。


 白薔薇宮に戻ると、ドアの前に2名、宮殿の周りを取り囲むように数名の兵が配備されていた。

「リー様の警護に付くことになりました。今後宮殿を離れるときはご同行させていただきます!」

 ドア前の1人が背筋を伸ばして口を開く。

 はいはい。警護という名の監視ですね。

「よろしくお願いします」

 まぁ一応名目は警護ということらしいので、挨拶しておく。


 部屋に戻り、状況を改めて考えてみる。

 白薔薇宮に私は滞在することになった。右隣の部屋にはトゥロン。左隣の部屋にはランちゃん。

 宮殿には、他に通いで掃除などをする人たち。

 宮殿の外には見張りの兵が数名。

 宮殿の外に出る時には、トゥロンと警護兵が1人付く。

 城の中ではプライベート空間が保てるようだし、王城敷地内であれば、行動の制限はない。まずまず悪くないんじゃない?

 問題は、食事だ。


 メイヤさんを食事係にと言ったものの、不安は残る。

 城から派遣される料理人よりは信頼できる。だけどね、完全に信用するわけには行かない。

 人柄を疑っているわけじゃないんだ。

 でも、トゥロンでさえ何らかの事情で私を誘拐まがいの手段で連れてきたでしょう?いくら、メイヤさんが良い人だからと言っても、何か事情があれば苦しみながら毒を盛るってこともありえないわけじゃないと思うんだ。

 そうだなぁ、例えば、エロキモがランちゃんを手篭めにしようとするとか。

 あれ?ランちゃんもエロキモと血が繋がってるんだっけ?だとしたら流石にランちゃんに手を出すことはないか。

 ないよね?

 ……そこまで鬼畜じゃないよね?

 ……。

 血が繋がってなかったら、簡単に手を出しそうだ。「娘を助けたかったら、これを食事に混ぜろ」とか言われたら、母親としてはどうする?苦渋の決断しなくちゃいけないんじゃない?

 まぁ、つまり、メイヤさんを悪者にしたくない。苦しませたくない。

 そんな意味も含めて、エロキモに毒を盛らせる機会を無くす必要があるんだよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。