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グリム童話 夏の庭、冬の庭  作者: Romina


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13/13

あとがき。


最後までご拝読、ありがとうございます。



日本人の方はいきなりのキャベツにハテナが浮かんでると思うので、先にこちらで少し解説をば。


この設定は、原典に出てくるものです。

原典では、“野獣はキャベツの下敷きになって死んでいる”とあります。



実は、西洋の童話では

かなりの頻度でキャベツが登場します。


言い伝えで“赤ん坊はキャベツ畑からくる”と言われていたり、

キャベツをどんどん剥いていくと、中から何かが生まれ出てきそう、という想像力からそうなったみたいですね。


ちょいちょい赤ちゃんが生まれるところにキャベツが出てくるので、このお話では

おそらく再誕の意味なんでしょうね。




では、ここからは真髄のお話を。


この物語は、グリム童話の残酷な温度は残しつつ、

人間の深い業をテーマに、設計したお話です。



全ての骨格が露出する最終話で

ドキリとした方もおられるのではないでしょうか。


これは誰もに起こりうる、身近な業のお話です。



悪人に見えていても、本当は罪のない人。


善人に見える人ほど、その内側には深い沼を抱えていて


無垢に見える人が、実は暴力的。



そして隠されていた、優しい罪人。



私はそれぞれの終わりに

非常に熱を込めてシーンを描きました。



殺されるヘレナ。

野獣になるクララ。

待ち続けるルーカス。


そして自ら、最後の救いを絶ってしまうエルザ。



ちなみに、気になってると思うので

先にお話しておくと

ヘレナとフリッツは関係してません。


ヘレナは愛されるエルザが羨ましく、

フリッツの反応が初なのが面白くて

そんなに妹のことが好き?私にもなびく?って妹の男を試してるだけの

ちょっと性格の捻くれた姉だったのでしょう。



エルザは優しく大人しく見えて、

一番業の深い女です。

私は彼女が一番人間らしいと思っています。


特にラストでは崖のシーンでも彼女を死なせず、自ら救われる道を断つという

まさに業の深い彼女に相応しい最後。


それも、生き残ってしまった恋人から

「真実がバレるかもしれない」という

一番人間らしい理由で。


ここが私は好きです。



では…クララはどうでしょう。


彼女は最初から善人だったでしょうか?

思い返してみてください。



彼女は、とても衝動的です。

エルザが可哀想だと身代わりになり、

危険な実を自ら取りに行き、子狼が助からないと言われても泣き、ダメだと言われても所有しようとする。

家族に会いたいと泣き、執念のようにキャベツを掘る。


そして作中、彼女は人の忠告を一度も聞きませんでした。

これは美化すると天真爛漫に見えますが、

彼女は最初から、情熱的で欲深い女性だったのかもしれません。



その欲深い女性が、

ルーカスをヘレナに奪われそうになり、

その恐怖を操作するエルザ。


最後はヘレナが、

「父の死はクララのせいだ」と彼女の芯をつくことで

邪魔者排除のスイッチを押してしまう。



ルーカスを掘り起こしたのも、ヘレナを殺したのも、根源は同じ「手放したくない」という、クララの剥き出しの所有欲。

彼女が野獣になったのは突然の変異じゃなくて、内側にあった「情熱的な怪物」が形を成しただけなんでしょう。



現代の物語では、因果応報がはっきり描かれたり、

何かしらの「救い」が添えられたりすることが多いですが、

原典の時代背景にあるのは「不条理」と「警告」です。



神話や童話が容赦ないのって、

優しく教える文化ではなくて

「忘れられないほど、強烈に叩き込む」という時代だったからなんですよね。


童話って、子ども向けの顔して

こういうえげつない倫理観をぶっ込んでくるから面白いです。



個人的には、ルーカスの救いが恋愛じゃなくて

「待つこと」になってるのが渋くて好きです。

王子が一人、城で待ち続けるって

めちゃくちゃグリムっぽい罰の形だなと思っています。






そして…この物語の肝。


摩訶不思議な「意思をもつ屋敷」


この屋敷は、願いを叶えますが

同時に、裁きをも与える意思を持っています。



このお話の根底には、ある「願い」があります。

母は森の奥にある屋敷で、こう願いました。



「私は、永遠に美しくありたい」



この意思をもつ屋敷は、ささやかな願いは優しく叶えます。


しかし、深く根を張った業や欲望の強い願いは、歪んだ形で叶えるのです。


彼女は今も、夏の庭で

赤いスカーフを纏い、静かに咲き続けています。




このお話は、

誰も完全な被害者ではなく、

誰も悪人ではありません。



その時代の「不条理」と「警告」が

忘れられないほど、あなたの脳裏に

残り続けてくださいますように。




ここまでお時間を割いて読んでくださったあなたに

心からの感謝と愛を込めて。












Romina.

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